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[MOM3556]神村学園FW福田師王(2年)_「あと3点は獲れた」はず。世代屈指のストライカーはハットトリックにも満足する気配なし

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ハットトリックを達成した神村学園高のFW福田師王(写真協力=『高校サッカー年鑑』)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[8.16 インターハイ2回戦 神村学園高 5-1 福井商高 三国運動公園陸上競技場]

「あと3点ぐらいは獲れたと思います。まだ自分の中では足りないですし、もっと決められるところもあったので、そこはもっと求めていきたいと思います」。対戦相手へのリスペクトはきっちり携えつつ、ハットトリックを達成しながら、さらなるゴールを希求するあたりに、普通のストライカーにとどまらない貪欲さを滲ませる。奪えるゴールは、すべて奪う。世代を代表する神村学園高(鹿児島)のストライカー。FW福田師王(2年=神村学園中出身)の頭の中に、“満足”という文字は見当たらない。

 初戦の正智深谷高(埼玉)戦は、チームこそ3-0で勝利を収めたものの、福田自身はノーゴール。その結果に納得が行くはずがない。「昨日はゴールを決められなかったことで、『今日は絶対決める』という意気込みで試合に臨みました」。より得点への強い意欲を抱いて、この日の福井商高(福井)戦のピッチへ歩みを進める。

「今日みたいな守るチームには、自分がスペースを空けて、シャドーの人たちに気持ち良くプレーさせるという想いが、自分の中でもあります」。やや守りに比重を置く相手に対し、得点に関わる仕事としてまずはチャンスメイクやスペースメイクに腐心しつつ、自分の形に持ち込める瞬間を狙い続ける。

 2点をリードして迎えた前半27分。ようやく決定機が回ってくる。右サイドからキャプテンのDF抜水昂太(3年)が折り返すと、エリア内でこぼれたボールにすぐさま反応。きっちりゴールを陥れ、今大会初得点。照れ笑いのような笑顔を浮かべる。

 2点目は35+1分。左サイドを単騎で剥がしたMF篠原駿太(3年)からグラウンダーのクロスが入ると、「ニアのスペースは空けて、オフの動きでファーに行って、ニアに合わせるという狙いは、試合前からコミュニケーションを取っていました」と語った通り、右足インサイドの“面”で合わせる完璧なシュートで、ゴールネットを揺らす。

 さらに3点目はハーフタイムを挟んで、後半9分。ここも篠原が左サイドをドリブルで崩して高速で中央へ。ここに飛び込んだ福田は、またも右足インサイドで綺麗にフィニッシュ。ボールはゴールネットへ突き刺さる。まるでデジャブのような2ゴールに、「“ホットライン”で点が獲れたと思います」とはチームを率いる有村圭一郎監督。圧巻のハットトリックを達成してみせた。

 最近強く考えているのは、『人の力を借りずに、自分の力で点を決める』こと。「ドリブルしてからのシュートだったり、もっと守備の部分で中間ポジションを取って、1対1でボールを奪って、すぐに攻撃にということを意識していました」という言葉を口にする。たとえばこの日の篠原のように、中央で待っているだけでハットトリックも可能なパスを供給してくれるような周囲のクオリティがある中で、それでも独力でゴールを奪うことが、どのステージでも活躍するために必要不可欠な要素であることは言うまでもない。

 指揮官は2年生ストライカーについて、「福田に関してはもう点取り屋なので、今日もいっぱい外して反省しているみたいですけど、アイツが決めなきゃ勝てないというのは本人も自覚しているので、たぶん今後も点を獲ってくれると思います。感覚的な部分は教えられるところではないので、ゴール前に入るタイミングとかシュートのセンスとか、順調に伸びていってくれたらいいなと思って見ています」と期待を寄せている。

「去年と違ってマークも厳しくなって、それを打開していかないともっと上には行けないと思っています」。自分で上げたハードルは、高ければ高いほど、越えた時の喜びもまた大きい。ハットトリックのその先へ。福田が自分に満足する日は、きっとこれからも訪れない可能性の方が高そうだ。

(取材・文 土屋雅史)
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