[MOM3557]大津MF薬師田澪(3年)_パトリック・ビエラを目指す“新米ボランチ”が大一番で1ゴール1アシスト!
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[8.16 インターハイ2回戦 流通経済大柏高 0-3 大津高 三国運動公園人工芝グラウンド]
自らが奪ったゴールの瞬間を振り返ると、大きな笑顔の花が咲いた。「夢を見ましたね、決めた瞬間は。『アレ?決めた?』みたいな。もう嬉しさでいっぱいだったので、みんな駆け付けてくれて良かったです。夢、見ましたね」。1ゴール1アシストという数字以上に、そのプレーはいちいち効果的。大津高を中盤で支える“新米ボランチ”。MF薬師田澪(3年=宇城市立小川中出身)が大一番で躍動した。
インターハイ2回戦最大のビッグマッチ。プレミア対決ということもあって、大きな注目を集めていた流通経済大柏高(千葉)と大津の一戦。「流通経済大学柏が強くて速いというのはわかっていましたし、プレミアリーグで4位というのも知っていたので、やっぱりセンターバックのカバーだったり、ファーストのヘディングだったりは絶対に負けられないと思って、そこは意識していました」という薬師田は冷静さを携えつつ、いつも以上に闘志をたぎらせながらピッチへ入る。
開始1分にオウンゴールで先制すると、一気にゲームのペースを掌握。「(森田)大智がドリブルで相手を剥がしてくれるので、そこは大きいかなという感じです。小林(俊瑛)も前で収められますし、(川口)敦史もシュートを打てますし、(一村)聖連も個人技があるので、そこは使っていきたいですし、日高(華杜)も足が速くて、(岩本)昌大郎も良いボールを蹴りますから」。それぞれの選手の特徴を次から次へと淀みなく説明するあたりに、薬師田のチームメイトへの信頼が滲む。
「自分のストロングポイントはヘディングとキック、あとはミドルシュートなので、そこは意識してやっています」と自ら口にしながら、32分にはノールック気味のスルーパスを華麗に通し、一村のゴールをアシスト。“ストロングポイント以外”でもチームに攻撃面で貢献してみせる。
そして、後半24分。左サイドで獲得したFK。中央で待っていた薬師田は、「アレもコーナーキックで『来た!』と思ったんですけど、相手のキーパーの手が先に来たので『ああ……』となってしまって」という前半の惜しいシーンを思い返しつつ、目の前の1本に集中力を高める。
MF岩本昌大郎(3年)のキックに。183センチの体躯が宙を舞う。高い打点からヘディングで叩いたボールはゴールネットへグサリ。「ドンピシャで昌大郎が良いボールを蹴ってくれたので決められました」。主役を待ち受けるチームメイトの輪の中へ飛び込むと、その中心で雄叫びを上げる。3-0。予想以上の完勝で難敵を撃破。ベスト16進出を力強く手繰り寄せた。
すっかりボランチとしての存在感を放っているものの、実はこのポジションを任されるようになったのは新チームになってから。「まだ半年しかやっていないです。中学生の頃はセンターバックかフォワードで、小学生の頃もフォワードだったので、最初は『ボランチ?』って(笑)。でも、やっぱり守備重視の中で自分が求められたのかなって。センターバックをやっていた分、そういう感覚もありますし、あとはキックが自分の特徴なので、それは意識してボランチで出ています」。
参考にしている選手も変わってきたという。「もともと好きな選手はセルヒオ・ラモスだったんですけど、ボランチになってからはパトリック・ビエラというアーセナルにいた選手の動画を見ています。やっぱり守備も攻撃もできて、足も速いですし、身長も大きくてヘディングも競り負けないと。あの選手はヤバいですね」。フランス代表でワールドカップとEUROの優勝経験を持つ名ボランチを意識しながら、さらなる飛躍を誓っている。
これからの試合に向けての意気込みも、まずは目の前のことに向き合う姿勢を崩さない、「3回戦の相手も後ろは自分も含めてシュートゼロで抑えて、得点を増やして、次の準々決勝に進められるように頑張っていきたいと思います」。
自分のモノにしつつあるボランチのポジションで日に日に存在感を強めている薬師田だけに、ここから先の大事な試合で再び主役級のキャストに躍り出る可能性も十分。この大会を大きな飛躍の時にしてしまいそうな雰囲気が、今のこの男には漂っている。
(取材・文 土屋雅史)
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●【特設】高校総体2021
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自らが奪ったゴールの瞬間を振り返ると、大きな笑顔の花が咲いた。「夢を見ましたね、決めた瞬間は。『アレ?決めた?』みたいな。もう嬉しさでいっぱいだったので、みんな駆け付けてくれて良かったです。夢、見ましたね」。1ゴール1アシストという数字以上に、そのプレーはいちいち効果的。大津高を中盤で支える“新米ボランチ”。MF薬師田澪(3年=宇城市立小川中出身)が大一番で躍動した。
インターハイ2回戦最大のビッグマッチ。プレミア対決ということもあって、大きな注目を集めていた流通経済大柏高(千葉)と大津の一戦。「流通経済大学柏が強くて速いというのはわかっていましたし、プレミアリーグで4位というのも知っていたので、やっぱりセンターバックのカバーだったり、ファーストのヘディングだったりは絶対に負けられないと思って、そこは意識していました」という薬師田は冷静さを携えつつ、いつも以上に闘志をたぎらせながらピッチへ入る。
開始1分にオウンゴールで先制すると、一気にゲームのペースを掌握。「(森田)大智がドリブルで相手を剥がしてくれるので、そこは大きいかなという感じです。小林(俊瑛)も前で収められますし、(川口)敦史もシュートを打てますし、(一村)聖連も個人技があるので、そこは使っていきたいですし、日高(華杜)も足が速くて、(岩本)昌大郎も良いボールを蹴りますから」。それぞれの選手の特徴を次から次へと淀みなく説明するあたりに、薬師田のチームメイトへの信頼が滲む。
「自分のストロングポイントはヘディングとキック、あとはミドルシュートなので、そこは意識してやっています」と自ら口にしながら、32分にはノールック気味のスルーパスを華麗に通し、一村のゴールをアシスト。“ストロングポイント以外”でもチームに攻撃面で貢献してみせる。
そして、後半24分。左サイドで獲得したFK。中央で待っていた薬師田は、「アレもコーナーキックで『来た!』と思ったんですけど、相手のキーパーの手が先に来たので『ああ……』となってしまって」という前半の惜しいシーンを思い返しつつ、目の前の1本に集中力を高める。
MF岩本昌大郎(3年)のキックに。183センチの体躯が宙を舞う。高い打点からヘディングで叩いたボールはゴールネットへグサリ。「ドンピシャで昌大郎が良いボールを蹴ってくれたので決められました」。主役を待ち受けるチームメイトの輪の中へ飛び込むと、その中心で雄叫びを上げる。3-0。予想以上の完勝で難敵を撃破。ベスト16進出を力強く手繰り寄せた。
すっかりボランチとしての存在感を放っているものの、実はこのポジションを任されるようになったのは新チームになってから。「まだ半年しかやっていないです。中学生の頃はセンターバックかフォワードで、小学生の頃もフォワードだったので、最初は『ボランチ?』って(笑)。でも、やっぱり守備重視の中で自分が求められたのかなって。センターバックをやっていた分、そういう感覚もありますし、あとはキックが自分の特徴なので、それは意識してボランチで出ています」。
参考にしている選手も変わってきたという。「もともと好きな選手はセルヒオ・ラモスだったんですけど、ボランチになってからはパトリック・ビエラというアーセナルにいた選手の動画を見ています。やっぱり守備も攻撃もできて、足も速いですし、身長も大きくてヘディングも競り負けないと。あの選手はヤバいですね」。フランス代表でワールドカップとEUROの優勝経験を持つ名ボランチを意識しながら、さらなる飛躍を誓っている。
これからの試合に向けての意気込みも、まずは目の前のことに向き合う姿勢を崩さない、「3回戦の相手も後ろは自分も含めてシュートゼロで抑えて、得点を増やして、次の準々決勝に進められるように頑張っていきたいと思います」。
自分のモノにしつつあるボランチのポジションで日に日に存在感を強めている薬師田だけに、ここから先の大事な試合で再び主役級のキャストに躍り出る可能性も十分。この大会を大きな飛躍の時にしてしまいそうな雰囲気が、今のこの男には漂っている。
(取材・文 土屋雅史)
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