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目指すのは1試合通じての“ミスゼロ”。大津MF森田大智の意志が悲願へと続く扉をこじ開ける

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“ミスゼロ”を真剣に目指す大津高のキャプテン、MF森田大智(写真協力=『高校サッカー年鑑』)

[8.16 インターハイ2回戦 流通経済大柏高 0-3 大津高 三国運動公園人工芝グラウンド]

 さらっと口にした目標は相当にレベルの高いものだが、それすらも可能にしてしまいそうな空気感を、この10番は纏っている。「今日はミスも多かったし、自分では全然納得いっていないです。自分は“ミスゼロ”というのを目指していて、そういう中では全然今日はダメですし、インターハイは大会を通じてまだまだかなと思います」。悲願の日本一へ向かう大津高の司令塔。MF森田大智(3年=FCK MARRY GOLD AMAKUSA U15出身)は、これからも真剣に“ミスゼロ”を自分に課していく。

 まず、ボールを失わない。優勝候補同士のビッグマッチとして注目を集めた流通経済大柏高(千葉)戦。強豪居並ぶプレミアリーグEASTの中でもそのインテンシティで優位性を発揮する選手たちを向こうに回し、まるで水中を泳いでいるかのようにスイスイと球体を運んでいく。

「早い時間に先制点が獲れたのが良かったと思います」と自身で振り返ったように、開始1分の先制点がチームに大きな勢いをもたらしたのは間違いないが、それだけではないゲーム運びの巧みさも感じさせる展開の中で、プレーに強弱を付けられる10番が放つ存在感は特別だ。

「いつもだったら取れている所が綺麗に取れなくて、取れたとしてもちょっと足を伸ばして頑張ったりして、そこからまた1枚2枚と出てきて、そういうところを自分たちはできなくて、相手はできていたのかなと」と話したのは流経大柏のキャプテンを務めるMF渋谷諒太(3年)。そう言葉を紡ぎながら思い浮かべる選手の筆頭に、森田の姿があることは想像に難くない。

「全員で走り負けないことだったり、気持ちの部分は絶対に負けないという強い意志があったので、そこは全員で気持ちを出してやれたかなと思います」。決して大声でチームを引っ張っていくタイプではないが、どんな相手にも抜群の技術を武器に立ち向かっていく10番の背中は、チームメイトに大きな勇気を与えている。

「そんな大差で勝てると思っていなかったので、ビックリしていますけど、流経相手に3-0というのは凄く自信になると思います」と笑顔を見せた森田は、日常から高いレベルの相手と公式戦の舞台で切磋琢磨してきていることの重要性も、ハッキリと口にしている。

「新チームが始まってすぐは結構ひどかったんですけど(笑)、プレミアをやっていく中で成長したというか、最初に比べたら本当に強くなっているという実感が自分たちでもあります。やっぱり強度の部分でもインターハイでは自信を持って全員ができていますし、Jユースを相手にしてきた経験値は凄く大きいかなと思います」。

 プレミアでの経験を経て、自分が為すべきプレーもより具体的にイメージできている。「凄く守備ができるタイプではないので、ミスしないことにプラスして、前に入っていったり、前での攻撃的なプレー、シュートだったりスルーパスを増やしていきたいです」。

 “ミスゼロ”を目指すことで身に付けてきた蓄積の集合体は、きっと自身をもっと大きな舞台へ連れていってくれるはずだ。大津のナンバー10。鮮やかなプレーの裏側に秘められた森田の強い意志が、何度も跳ね返され続けてきた頂点へと続く扉を、こじ開ける。

(取材・文 土屋雅史)
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