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大会前から意識していた確認、修正、徹底。星稜が“らしいサッカー”で3-0快勝

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後半22分、星稜高MF前田一勇がこの日2点目のゴール。(写真協力=高校サッカー年鑑)

[8.18 インターハイ3回戦 星稜高 3-0 徳島市立高 三国運動公園陸上競技場]

 令和3年度全国高校総体(インターハイ)「輝け君の汗と涙 北信越総体2021」サッカー競技(福井)は18日に3回戦を開催。星稜高(石川)と徳島市立高(徳島)の一戦はFW山下陸(2年)の先制点などから3得点を奪った星稜が3-0で勝利を収め、準々決勝進出を決めた。

 1、2回戦を勝ってきた星稜だが、主将のDF中村実月(3年)は内容面について「自分たちのサッカーがまったくできていなかった」と振り返る。ただ、それは織り込み済みでもあった。大会前に、「(コロナ禍の影響で)2週間くらい練習できなかった時間もあった」からだ。

 仕上がりに不安が残るなかで、大会前から意識していたのは以下のようなことである。

「うまくチームが作れていない中で、インターハイ入ってから試合の中で修正していく。自分たちのダメなところを言い合って、宿舎に帰ってから見直して、次の試合に活かしていく」(中村)

 このため、2回戦終了後の休養日を使ってあらためてここまでの課題をフィードバック。河合伸幸監督が「タッチ数が多すぎる、判断が悪いなど、いっぱい(反省材料は)あったので、そこを指摘しながら少し改善できた」と振り返ったように、限られた時間の中でももう一度自分たちの戦い方を確認し、徹底し直してこの試合に臨んでいた。

 序盤からロングボールを効果的に使いながら徳島市立を全体的に押し込んで試合の主導権を握ると、相手の低い位置からのビルドアップも効果的に遮断。「FWもまずは守備からと言われている」(山下)成果を見せる。徳島市立の河野博幸監督が「特に前半は前の3枚にボールが収まらなかった」と振り返ったように、徳島市立のストロングポイントである前線3枚を封じつつ、相手を押し込んでみせた。

 その展開の中から相手のミスを見逃さなかった結果として生まれたのが前半33分のプレーだった。GKからの繋ぎを奪ってからのショートカウンターで、MF岡田伯斗(3年)のパスを受けたFW山下が冷静にボールを持ち出してからのシュートを突き刺し、待望の先制点を奪い取る。そのわずか2分後にもゴール前のこぼれ球をMF前田一勇(3年)が蹴り込み、連続得点に成功。一気に優位に立つ流れでハーフタイムを迎えた。

 徳島市立のMF川上楓雅主将(3年)はこの流れについて「失点後に締め直してやらないといけなかった。自分たちの甘さが出て、連続失点になってしまった」と悔やむ。先制点についても、直接的にミスになったプレーだけでなく、受け手の声出し不足や、奪われたあとの対応も失点原因だったとし、「甘さが出た結果だった」とした。

 ハーフタイムに河野監督からの指摘も受けた選手たちは反撃を開始し、前半は観られなかった連動性のある攻撃も出るようになり、星稜守備陣を崩し切るには至らない。クロスボール対応など安定感が素晴らしい星稜GK山内友登(3年)の隙のない対応もあって、ゴールを奪うことはできなかった。

 逆に星稜は慎重に試合を運びつつ、後半22分には交代出場のMF戸川期雄(3年)の右サイドからのクロスを受けた前田がこの日2点目、チームとしては試合を決定付ける3点目のゴールを流し込んで3-0とリードを広げ、そのまま逃げ切ってみせた。

 星稜・河合監督は「ウチらしいサッカーになってくれたなという感じはした」と手応えを語りつつ、「まずは16強の壁を越えられるかどうかだと思っていた。あとは勢いで、選手たちに任せながら、思い切って戦ってくれればと思っています」と準々決勝に向けてあらためて意気込んだ。

 一方、敗れた徳島市立の河野監督は「ボールを収めてどんどん前に出られる形を最初から作れるようにしていかないといけない」と終盤にかけて改善された部分を最初から出せればと惜しみつつ、県内大会だと意識できない部分もある「一つのミスの怖さを分かってくれたと思う」と教訓を得たことを踏まえて、あらためて冬への出直しを誓った。

(取材・文 川端暁彦)
●【特設】高校総体2021

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