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[MOM3562]東山DF夘田大揮(3年)_思い背負って臨んだ3年生SB、後半ATにゴール前まで走り抜いて劇的V弾!

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後半アディショナルタイム、東山高DF夘田大揮(5番)が決勝ゴール

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[8.18 インターハイ3回戦 東山高 2-1 三重高 日東シンコースタジアム丸岡サッカー場]

 初戦だった2回戦の前橋育英高(群馬)戦ではベンチスタート。チームの勝利に喜びながら、悔しさを味わったDF夘田大揮(3年=MIOびわこ滋賀U-15出身)が『満を辞して』臨んだこの一戦で大車輪の活躍を見せた。

「悔しかったけど、監督がきちんと意図を説明してくれた。だからこそ、今日は監督の期待に絶対に応えたかった」。

 実は前橋育英戦は東山高(京都)の作戦によって、スタメンを外されていたのだ。前橋育英の左サイドハーフの笠柳翼(3年)を封じるために右サイドバックには守備力の高い井上蒼太(3年)が起用されたが、この試合では「セットプレーが鍵となる。夘田のヘッドの強さを発揮して欲しいと思い、朝に先発を伝えた」と福重良一監督から起用の狙いを話してもらったことでモチベーションは一気に上がった。

 後半22分、右CKを得ると、キッカーの真田蓮司(2年)と目があった。ニアサイドに向かって猛然とダッシュし、真田からのボールを高い打点のヘッドでゴール左に突き刺した。その後、PKで追いつかれるという嫌な展開になったが、夘田はもう1点取ることに集中をしていた。

 後半アディショナルタイムのゴールは、正直見ていた者が驚くほどの展開だった。東山がカウンターを仕掛け、MF石井亜練(2年)のパスを受けた右サイドハーフの阪田澪哉(2年)がカットインを仕掛けた瞬間、ゴール前にエアポケットが生まれていた。そこに走り込んでいたのが、右サイドバックの夘田だった。

「なぜそこに夘田?」と思ってしまうほど、相手DFの死角からスルスルっとそのスペースに潜り込んだ夘田は、阪田からのクロスを正確なトラップで足元に置くと、冷静に左足を振り抜いてゴールに突き刺した。

 試合後、「なぜあそこにいたんですか?」と思わず聞いてしまった。すると、彼は笑いながら「自分でも良くわかりません」と答えると、「もう残り時間も少なかったし、チームとして何が何でも70分で試合を決めたかったので、体が勝手に動いたんです」と続けた。

「もう気がついたら駆け上がっていて、直感であのスペースを見つけたんです。それで走り込んだら澪哉がいいボールをくれた。あとはもう夢中で決めました」。

 この試合、彼の腕にはキャプテンマークが巻かれていた。本来は同じ3年生でエースナンバー14を背負うMF木下慶が巻くものだったが、怪我で今回はメンバーから外れている。2年生がレギュラーの大半を占める今年のチームにおいて、「(3年生は)プレーで2年生に引っ張っていってもらっている分、声や気持ちの部分で引っ張らないといけないと思っている」と夘田が語ったように、自覚を持ってプレーをしている。だからこそ、「キャプテンマークを自分が巻かせてもらっているからこそ、全力を尽くさないといけないと思っていた」と、木下の無念の思いも彼の心には宿っていた。

 福重監督、チーム、そして木下を含めた3年生の思いも背負って臨んだからこそ、あのシーンで彼は背中を押される形でゴール前に走り込んでいた。次なる相手は青森山田高(青森)。この試合でスタメンかどうかはわからないが、彼はチームのために全力を尽くす覚悟はできている。

「絶対に勝ちたい。僕らで勝つんだという雰囲気を作っていきたい」。

 金星に向けて、夘田の目は輝きを放っていた――。


(取材・文 安藤隆人)
●【特設】高校総体2021

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