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[MOM3563]米子北DF鈴木慎之介(3年)_日章最大の強みを封鎖。「話し合った結果」も表現し、見事な堅守

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無失点。堅守・米子北高を表現したCB鈴木慎之介主将

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[8.18 インターハイ3回戦 米子北高 0-0(PK5-4)日章学園高 三国運動公園陸上競技場]

 米子北高(鳥取)と言えば、過去の選手たちが築き上げた「堅守」のイメージが付いてくるが、これは現在プレーしている選手たちにも受け継がれている前提のようなもの。話を聞けば、どの世代でも「ウチは堅守じゃないといけない」といった言葉が出てくる。今年の全国高校総体に臨んだチームについても、それは変わらない。

 主将を務めるCBの鈴木慎之介(3年=大宮アルディージャJrユース出身)が「昨年も今年もプリンスリーグ中国で最少失点でやれている」と語ったとおり、今も堅守が自慢のチームであることに変わりはない。それだけに、帝京高(東京2)との1回戦、東海大山形高(山形)の2回戦でどちらも相手に先制点を許してしまった展開には悔いが残った。

「自分たちの特長は『堅守速攻』。それなのに、その『堅守』のところが今大会はできていなかった」(鈴木)

 中村真吾監督からも守備陣に対して厳しい言葉があったそうだが、選手たちにとってそれは言われるまでもなく感じていたことでもある。鈴木は「ゼロで抑えられないとダメだと思っていたし、(3回戦を前に)GK含めて5人で話し合って、『今日の試合は絶対ゼロでいこう』と話し合っていました」と振り返る。

 試合は序盤からプレスが空転させられるシーンもあって相手のボール支配率が上回る流れとなった。中村監督はこうした展開自体は想定しており、その中で相手のストロングポイントである2トップをどう抑えるかをテーマとして持っていた。この2枚に対して数的優位を作って守るという考え方もあるが、指揮官の判断は違った。

「ドリブルも上手いし、ワンツーもスピードもある2トップ。でも、両サイドもそろっている。だから、なるべくサイドバックは我慢させて、2CBで頑張って守ろう」(中村監督)

 厳しい言葉はかけたが、その裏にあるのは「お前らならもっとやれるだろ」という信頼である。日章学園最大のストロングポイントへの対応は、鈴木と飯島巧貴(3年)の両CBの力に託した。そして二人は、その期待にしっかり応えてみせる。

「巧さ相手だったら、自分のチームでも佐野航大といつも1対1でやっているので自信があった。やられる場面もありましたけれど、落ち着いて対応できていたと思う」(鈴木)

 特に警戒していたのはワンツーを使ってのコンビネーションプレーだったが、ここも周りの選手も動かしながら冷静に対応。相手が上回った場面もあったが、最後にサイドバックのカバーリングが入るなど、2トップに対して2CBが対応することをベースにしながら、臨機応変な守りを披露してみせた。「話し合った結果が出た」と鈴木が胸を張ったとおり、見事な『堅守』だった。

 PK戦で鈴木は最後のキッカーとして登場。プレッシャーのかかる場面だったが、「先生からは『余り責任を負い過ぎないで蹴ってこい』と言われていた。自分は気持ちが弱いのでこれを決めたら成長できるんじゃないかなと思って蹴りました」という思いの乗ったボールはしっかりと枠を捉えて見事にネットを揺らし、米子北の準々決勝進出が決まった。

 次は神村学園高(鹿児島)。U-18日本代表FW福田師王(2年)ら強力な攻撃陣を擁するチームが相手となるが、鈴木は「今日と同じようにゼロで抑えていれば、チャンスはある」と意気込む。取り戻した『堅守』を示すには、格好の相手とも言えそうだ。

(取材・文 川端暁彦)
●【特設】高校総体2021
 


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