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[MOM3566]静岡学園MF古川陽介(3年)_両指揮官絶賛のアシスト、3度の切り返しでマークを無力化

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静岡学園高の10番MF古川陽介は技巧で違いを生み出した。(写真協力=高校サッカー年鑑)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[8.19 インターハイ準々決勝 静岡学園高 1-0 大津高 テクノポート福井総合公園芝生広場]

 驚異的な身体能力で何度も付いてきた相手を、技術で完全に振り切った。試合の勝敗を決定付ける1点を生み出したのは、静岡学園高(静岡)の左MF古川陽介(3年=京都サンガF.C.U-15出身)の執拗な切り返しフェイントだった。

 力任せの方向転換ではなく、フェイントから緩やかにスピードアップするだけで、またピタッと止まることができ、相手の反応を見て次の動作に移る。二度、三度、逆を取られながらも粘った相手の動きが完全に止まるまで切り返し、左足でふわりと送ったクロスからヘディングシュートによる、この試合唯一のゴールが決まった。

 誰もが、その技巧を認めざるを得ない。大津高(熊本)の山城朋大監督は「ゴール前に人もいたし、ボールも鋭いものではなかった。でも、あそこまで切り返されると、どうしても(マークをしている選手だけでなく、ほかの選手も)目線がボールに行って、あそこ(シュートを打った選手の場所)を空けてしまったかなと思います」と悔しがりながらも、完ぺきなお膳立てをした相手の10番の力量を認めた。

 また、これまでに数々の名選手を育ててきた静岡学園の川口修監督も「相手は、見たことないでしょうね。また切り返すの? という。相手の逆を取るのが、彼の持ち味。抜くだけでなく、最後にちゃんとアシストをする。そこまで要求しているので、あれは、良いプレーだったと思います」と称賛を惜しまなかった。

 マークについていたのは、大津の右DF日高華杜(3年)。スピードを筆頭に高い身体能力を武器とする選手だ。日高をかわした古川は「切り返しは元々得意で、相手の動きを見て切り返すんですけど、結構、食いついてきていた。2回くらいまではいつもやるんですけど、まだ相手が付いてきたので、来るなあと思って、もう1回やったら完全に抜けたので。いつも練習で奥に詰まったときに、速いボールではなく(相手に)引っかからないボールを練習していて、それがそのまま出せた」と手ごたえを語った。

 とにかく、ボールを奪われない。このアシストで先制点を得た後は、タッチラインやエンドライン際で鮮やかなボールコントロールを見せて相手を翻ろうした。「ライン際は相手があまり突っ込んで来れないので、ギリギリをいつも狙うようにしています」と簡単に言うが、取れそうで取れないドリブルは高度で、相手にストレスを与えるのに十分だった。

 また、ドリブルだけではなく、ワンタッチのパスでもボールコントロール力の高さを見せた。後半25分、サイドチェンジのボールがタッチラインを割りそうになったが、走って追いつくと、飛び上がった体勢でボールをはたき、FW持山へパス。持山のパスに抜け出した右MF川谷凪(3年)がゴールネットを揺らすもオフサイドでノーゴールとなったのだが、難しいボールをうまくつなげてしまう古川の技術で、ボールロスト寸前からゴール目前のチャンスへとプレーの流れが変わった場面だった。

 ドリブルからのラストパス、そこに得点力が加われば、ステージが上がっても活躍が期待できそうだ。サッカーを上手くなるだけでなく、競争の世界で勝ち上がっていく意識を持つようになったのは、高校からだという。

 大会直前に行われていた東京五輪を見た感想を聞いてみると「準決勝のスペイン戦で日本が圧倒されていて、もっと個人のレベルも、サッカー自体のレベルも向上させて、世界で戦えるようにならないといけないと思いました」と話し、OBの旗手怜央が活躍している姿には「静学出身で世界で活躍できることを証明してくれたので、だいぶ刺激になりました」と、将来に目指す舞台への飛躍をイメージしていた。

 21日に行われる準決勝の相手は、優勝候補筆頭の青森山田高(青森)。その技巧が、組織された強力な守備に対して、どのような効果をもたらすか、注目だ。

(取材・文 平野貴也)
●【特設】高校総体2021

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