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[MOM3567]星稜MF前田一勇(3年)_無尽蔵の走力でピッチを駆け続けた“ご褒美”は貴重な追加点!

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星稜高MF前田一勇(8番)が後半ATに大きな追加点(写真協力=『高校サッカー年鑑』)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[8.19 インターハイ準々決勝 岡山学芸館高 1-2 星稜高 三国総合運動公園陸上競技場]

 それはきっと72分間に渡って、誰よりもピッチを駆け続けてきた男に対する“ご褒美”だったのかもしれない。「いつボールが来てもいいように、ずっとグラウンドを走り回っているので、そこはいつもの自分がやってきたことが、身になったかなと思っています」。走って、走って、決め切ったゴール。星稜高(石川)が誇る“永久機関”。MF前田一勇(3年=グランパスみよしFC出身)のスタミナとスピード、無尽蔵。
 
 ベスト4進出を懸けた岡山学芸館高(岡山)とのクォーターファイナル。前田は積極的にゴールを狙う。最初のチャンスはFK。前半24分。キッカーを任されると、ゴールまで約25メートルの位置から直接狙ったボールは、相手GKにキャッチされるも好トライ。2度目のチャンスは35+2分。FW山崎陸成(3年)、MF岡田伯斗(3年)と繋いだボールを、枠内へ打ち込んだが、これも相手GKのファインセーブに遭う。

 攻勢の前半から一転、後半は守備に回る時間が長くなったが、サイドで攻守に奮闘する。そして、1-0で迎えたアディショナルタイムの35+2分。前田にチャンスが巡ってきた。

 左サイドで途中出場のMF福島元基(2年)がドリブルをスタートした時には、まだ前田もセンターサークル付近にポジションを取っていた。「相手の流れを断ち切るには、もう自分が点を決めるしかないなと思っていましたし、3回戦の徳島市立戦で、自分がハーフウェーラインから走って、クロスに入り込んだというのをイメージして、疲れてはいたんですけど、『チームのために最後まで走ろう』と思ってゴール前に走り込んだら、福島が良いボール上げてくれましたね」。

 一気に加速してマーカーを振り切ると、右足を必死に伸ばしてボールをゴールネットへ到達させる。それまでもスプリントを繰り返していた前田が、得点の匂いを嗅ぎ分けて飛び込んだ、体力と走力と気合が乗ったスーパーゴール。その後、岡山学芸館に1点を返されたものの、結果としては前田のゴールが決勝点。チームの勝利にきっちりと貢献してみせた。

 自らの特徴を踏まえつつ、参考にしている選手がいるという。「走ることとハードワークと縦の突破が得意なんですけど、三笘薫選手は全部『自分が、自分が』じゃなくて、アシストもちゃんとできる選手なので、それは参考にしています」。この夏から海外に渡った俊英を仰ぎ見つつ、自分にしかできないことを着実に積み上げている。

 今年の星稜は、決して前評判が高かったわけではない。「去年の先輩たちは本当に足元が凄く上手かったんですけど、新チームになって自分たちは足元も全然上手くないですし、チームの特徴が走れることなので、そこは割り切って、やりたいサッカーじゃなくて、勝てるサッカー、強いサッカーをしようと言ってきました」(前田)。やりたいサッカーと、勝てるサッカーと、強いサッカー。その融合ができれば申し分ないが、おそらく優先すべきは勝てるサッカー。この日の勝利の可能性を信じて疑わない選手たちには、アップからとにかくポジティブな雰囲気が漂っていた。

 今大会のここまでを、前田は自分の言葉で総括する。「初戦も2回戦も本当に自分たちがうまく行かない試合ばかりで、不安もあったんですけど、3回戦の徳島市立戦から少しずつ自分たちの試合勘も取り戻してきていますね」。3回戦と準々決勝の2試合で、前田は計3ゴールをマーク。アグレッシブな走力が、きちんと結果に繋がりつつあるのは喜ばしいことだ。

 ここまで来れば、欲は出てくる。前田はやはり自分の言葉で、意気込みを口にする。「これで3点獲ったので、ここから福田師王(神村学園高)くんを抜けるように、とにかく点を獲ってチームを優勝させたいと思います。ここからは本当にもう走るだけですし、最後まで戦い抜きたいです」。

 米子北高(鳥取)と対峙する準決勝のピッチでも、ひたすら走っている姿が目に浮かぶ。そして、その景色の中心でゴールを奪い、歓喜の中に身を置く自分の姿も、前田は既にイメージできているはずだ。

(取材・文 土屋雅史)
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