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強風を味方につけた米子北が4強入り、神村学園は持ち味出せず3失点

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後半11分、米子北高FW福田秀人が3点目のゴール。(写真協力=『高校サッカー年鑑』)

[8.19 インターハイ準々決勝 神村学園高 1-3 米子北高 テクノポート福井総合公園芝生広場]

 堅守速攻の米子北が、攻撃自慢の神村学園を封じ込めた。令和3年度全国高校総体(インターハイ)「輝け君の汗と涙 北信越総体2021」サッカー競技(福井)の準々決勝が19日に行われ、米子北高(鳥取)は3-1で神村学園高(鹿児島)を破って4強入りを果たした。

 米子北は、立ち上がりから積極的に押し込んだ。ロングパスを蹴り込むと、全体で押し込んでプレッシングを敢行。波状攻撃につなげた。前半は風下だったが、むしろロングパスが相手の背後に次々と落ち、クロスボールもGKから逃げる軌道になり、相手がクリアしにくい形に持ち込めた。

 強風は、誰にとっても難しい。前半4分、米子北は、FW片山颯人(3年)のクロスをフリーになっていた左MF木村愛斗(3年)がボレーシュートで狙おうとした場面でボールの軌道が変わり、足に当てるだけで終わったという場面があったが、より困るのは、ボールの軌道が自陣で分からなくなる守備側だ。

 神村学園の有村圭一郎監督は、ロングボールを思うように弾き返せない守備を見て、中盤の形を守備1枚、攻撃4枚から守備2枚、攻撃3枚に変更。「前にボールを早く送ってくるので(カバーリングが必要で)ワンボランチではしのげないかなというところで、ダブルボランチにして後ろに1人下げた時点で、主導権を握られてしまったかなというのはあります」と振り返った。

 反撃力が下がった神村学園に対し、米子北は攻勢。前半12分、右DF原佳太朗(3年)のロングパスから、左MF木村がドリブルシュートを決めて先制。前半28分も右から左へつなぎ、木村がシュート。さらに前半30分、左CKを右MF渡部颯斗(3年)が頭で折り返し、木村が押し込んで2点目を奪った。

 後半に入ると、MF佐野航大(3年)が追い風を生かしたミドルシュートを放って勢いをつけた。後半11分、FW福田秀人(2年)のドリブルは一度引っかかったが、こぼれ球が追い風で前に流れ、追いついた福田は、前に出てきたGKをかわしてゴール。リードを3点差に広げ、勝利を決定付けた。

 苦しい神村学園は、U-18日本代表FW福田師王(2年)が「挟まれる場面が多かった」と話したように、米子北のDF鈴木慎之介(3年)がマークに付いた上、中盤の佐野らに素早くカバーされて思うように攻撃を組み立てられなかった。ここまで3試合連続得点のMF大迫塁(2年)にも良い状態でパスが入らず、左サイドの篠原駿太(3年)の突破も封じられ、前半のシュート数は1-7と、一方的に押し込まれた。

 もちろん、神村学園がボールを持った際には、精度の高いパスで押し返していたが、米子北はハイプレスを止めて中盤でブロック。神村学園の有村監督が「縦パスを入れさせないように中央を締められて、サイドに持って行っても縦を切られて、中に戻すしかなかった」と認めたように、きっちりと対策を練られて、封じ込められた。後半14分にロングフィードからFW福田がヘディングシュートで1点を返したが、反撃はここまで。3-1で米子北が勝利した。

 前半の逆風、後半の追い風が、米子北のプレースタイルとマッチ。MF佐野が「練習場所が、風が強い。そこも大きな勝因だと思います。学校のグラウンドは土ですけど、週に1回程度練習している芝生のグラウンドが、風がめっちゃ強い。風は味方にできる自信はあったので、うまく使い分けられたと思います。自分は、セカンドボールを意識していて(前半は)相手のヘディングも風の影響で落ちるところが変わってくるので予測していたし、後半は追い風だったのでミドルシュートを意識しました」と話したとおり、相手が対応に苦しんで大きくクリアできなくなったボールを素早く回収して二次攻撃につなげていた。この動きが、神村学園の重心を下げさせ、主導権争いの優位性を確立した。勝った米子北は、21日の準決勝で星稜高(石川)と対戦する。

(取材・文 平野貴也)
●【特設】高校総体2021

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