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指揮官も認めた「100点満点のゲーム」。青森山田は静岡学園をシュートゼロに抑える4-0の快勝でファイナルへ!

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青森山田高はMF松木玖生のFK弾に歓喜の祝福(写真協力=『高校サッカー年鑑』)

[8.21 インターハイ準決勝 青森山田高 4-0 静岡学園高 日東シンコースタジアム丸岡サッカー場]

 普段は常に厳しい姿勢を崩さず、必ずと言っていいほど改善点に言及する指揮官が口にした言葉に、この70分間への手応えがはっきりと滲む。「たぶん今日はシュートゼロで抑えているんじゃないかなということと、ペナにも侵入されていないんじゃないかなというところで、前線からキチッと守備ブロックを構築して、ハイプレスの中でボールを上手く取ってカウンターに繋げられたのが凄く大きくて、100点満点のゲームだったかなと思います」(黒田剛監督)。

 全国大会の準決勝。相手は国内有数のタレント集団にもかかわらず、4ゴールを奪い、被シュートをゼロに抑えてしまう『100点満点のゲーム』をやり切れる実力は、もはや『強い』という言葉だけでは形容し切れない。21日、インターハイ準決勝が開催。2年前の高校選手権決勝と同じカードとなった青森山田高(青森)対静岡学園高(静岡)は、4-0で青森山田が完勝。16年ぶり2度目の日本一に王手を懸けた。

 いきなりの決定機は前半5分。MF松木玖生(3年)が左へ振り分け、MF田澤夢積(3年)は丁寧に中央へ。フリーで飛び込んだFW渡邊星来(3年)が合わせたシュートはゴール右へ外れたものの、完全に崩し切った形からのフィニッシュ。11分にも左からDF多久島良紀(2年)が投げたロングスローを、ニアでFW名須川真光(3年)がフリック。DF丸山大和(3年)のヘディングは枠を越えるも、立ち上がりから青森山田の勢いが鋭い。

 すると、完璧な先制点は13分。右サイドでの2度追いからボールを奪い切ったMF藤森颯太(3年)が、名須川からのリターンを受け、中央へグラウンダーでクロス。セオリー通りにニアへ走ったMF田澤夢積(3年)が潰れると、3列目からフリーで松木が走り込む。「どフリーでしたし、あそこに飛び込むのが自分だと思うので。でも、シュートをふかさなくて良かったです」と笑顔を見せた10番が難なくプッシュ。ハイプレス。ニアへの飛び込み。3列目からのフォロー。約15秒の間に、関わった全員がやるべきことを徹底した青森山田が先にスコアを動かす。

 ビハインドを負った静岡学園は、とにかく前進できない。「他のチームと違って圧が凄くて、そういう面で圧倒されてしまったかなと思います」と最後方に構えるキャプテンのGK生嶋健太郎(3年)も言及したように、ドリブルで剥がしに行っても、パスワークで動かしに行っても、必ずと言っていいほど早い段階で“良い形の芽”を摘まれてしまう。

 とりわけ右のMF川谷凪(3年)、左のMF古川陽介(3年)というストロングも、「10番(古川)と11番(川谷)が凄く静学の長所だと思っていた中で、まず太陽と良紀のところでそこを抑えてくれました」と松木が言及したように、青森山田は右SB大戸太陽(3年)と左SB多久島良紀(3年)がきっちり対応しつつ、藤森と田澤の両サイドハーフも凄まじい強度でプレスバック。縦への突破を許さない。

 その中で、次の得点も青森山田に。35分。ここも前からのプレスでセカンドを拾い、田澤が浮かせた左クロスを藤森が折り返すと、名須川、松木と繋いだボールは再び田澤の元へ。今度は低いクロスが送り込まれ、名須川が左足で豪快にゴールネットへ叩き込む。9番を背負ったストライカーの今大会4点目。青森山田が2点をリードして、前半の40分間は終了した。

 静岡学園の川口修監督もハーフタイムに動く。DF野村海翔(3年)を左SBへ送り込み、その位置にいたMF荒井駿希(3年)を1トップ下へスライドさせて、攻守両面での変化を加えるも、後半も開始早々に圧倒的な個の輝きを放ったのは、青森山田の10番。

 4分。自らが獲得したFK。ゴールまで約25mの位置から松木が直接狙ったキックは、一片の迷いもない弧を描いて、左スミのゴールネットへ吸い込まれる。「あのコースは普段練習から取り組んでいた場所ですし、自分自身も『あのコースなら絶対に決められる』と蹴る前から確信できていたので、良いコースに蹴れて良かったです」。3-0。さらに点差が開く。

「自分たちが思っている以上にプレスの速さだったり、切り替えの速さというのは山田と差がありました」とは静岡学園のCB伊東進之輔(3年)。青森山田のプレスの速さと寄せ切る深さの前に、その高い技術を発揮できないまま、ボールロストの連続。ペナルティエリア内には全くと言っていいほど侵入できず。ようやく奪った1本目のCKは、終了間際の34分。これもシュートには結び付かない。

 ダメ押しの4点目は交代出場の2人で。35+4分。左サイドの深い位置まで潜ったMF小野暉(3年)がマイナスに折り返すと、フリーになったMF小原由敬(3年)は右足一閃。少しDFに当たったボールは、それでもゴールネットへ到達する。

「絶対100点なんてないんだけど、やっぱり静学相手にシュートをゼロで抑えられたというのは、これ以上のモノはないかなというぐらい、今のウチらのレベルの中では最高の守備をしてくれたんじゃないかなと。欲を言えば、点数を獲れたところがあと3,4点あったと思うんだけれど、ちゃんと4点獲ってくれたし、切れることなく、守勢に回ることなく、常に攻め続けながら、しっかりとできたのかなと思います」と黒田監督も最大限の賛辞を選手へ送った青森山田が、静岡学園を4-0で撃破。明日の決勝へと駒を進めた。

 青森山田の選手たちが、お互いに求める要求のレベルは驚くほどに高い。「今日は渡邊星来が相当走りましたよね。いつも名須川が行って、アイツがサボるんですけど(笑)、今日は逆だったのでビックリしました。『あんなに走れるんだ」って」と指揮官も名指しで言及した渡邊が、後半に全速力で相手にプレスを掛け、クリアを体に当てて弾いたシーン。それを見ていた松木は、あるいは自分たちのゴールが入った時以上に、渡邊に対してポジティブな賛辞の声を送っていた。

 藤森は常に自らが送るクロスへ、「ニアに入って来い」とフォワードへの要求を続け、宇野は味方のゴールが決まっても、まずは気になることを周囲のチームメイトと確認した上で、それからスコアラーの元へ祝福しに行く。大戸は後半終了間際に右サイドのいちばん高い位置まで飛び出し、相手のクリアをタッチラインへ弾き出していた。自分の考える100パーセントを実践するのではなく、チームから求められている100パーセントを体現し切れるのが、今年の青森山田が持つ最大の強みではないだろうか。

 決勝へ向けての意気込みを問われ、黒田監督はこう語っていた。「まずは青森山田のサッカーをきちんとやる、守備から攻撃、攻撃から守備というところのトランジションも含めて、何でもできるサッカーというのが青森山田のスタイルですので、そこを全面的に出していければ、シュートを打たせることなく、カウンターを受けることなくできるはずです。今までこのチームが始まってから攻撃が0点で終わったという試合は1試合もないので、しっかり守備ができれば必ず最低でも1点は獲ってくれる、大いにそれを浸透させていきたいと思います」。

 5試合を終えて、28得点2失点。だが、そんな数字でさえも測れないほど、今の青森山田が纏っている“史上最強感”は際立っている。

(取材・文 土屋雅史)
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