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今大会初出場の準決勝は悔しい経験に。静岡学園DF伊東進之輔は「みんなで笑顔で終われるように」努力を重ねる

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相手FWと競り合う静岡学園高の大型CB伊東進之輔(写真協力=『高校サッカー年鑑』)

[8.21 インターハイ準決勝 青森山田高 4-0 静岡学園高 日東シンコースタジアム丸岡サッカー場]

 まだコンディションは万全ではないが、それを言い訳にするつもりなんて毛頭ない。今大会唯一の出場となった準決勝で突き付けられたものは、さらなる成長の糧にするだけだ。「やっぱり試合に出るからには勝とうという気持ちでやりましたけど、想像以上に相手のレベルが高くて。もっとやれると思っていたんですけど、自分たちが力不足だったかなと思います」。静岡学園高のディフェンスリーダー。DF伊東進之輔(3年=千里丘FC出身)はこの経験を笑って振り返ることができるように、冬の全国へ向けてもう歩き出している。

 2週間前に左足首を捻挫していた伊東は、メンバー入りこそしていたものの、準々決勝までの4試合で1分たりとも出場していなかった。だが、青森山田高(青森)という最強の相手と対峙する準決勝を前に、指揮官の川口修監督はある決断を下していた。

「伊東は本当はまだ万全じゃなくて、ぶっつけ本番で70分持つかどうかというのもあったんですけど、本人は『足は大丈夫です』と。なので伊東と話をして、『とにかくあの山田の強度を体感して来い』と。『復帰明けで山田はきついぞ。でも、そこで失敗してもいいから』ということで送り出したんです」。

 ピッチに立つからには、100パーセントの力を発揮して勝利に貢献する。「信じて使ってもらったので、『絶対ゼロで行きたい』というのはバックラインのみんなでも話していました」と伊東。3月の時之栖チャレンジカップでは4-3と撃ち合いの末、青森山田に勝っている。自信はあったはずだった。

 ところが、試合が始まると、まったく自分たちの積み上げてきたサッカーが発揮できない。伊東も開始10分ぐらいまでは、いつものように最後方からボールを持ち出して、ビルドアップにアクセントを加えていたが、「普段出ないようなミスも多かったですし、静学らしいサッカーをやるためには、僕らから攻撃が始まっている部分もあるので、そこをできるようにならないとなと感じました」と振り返ったように、少しずつそれもできなくなっていく。

 13分にはカウンターからのクロスで先制点を奪われると、35分にも左右に揺さぶられる展開から、やはりクロスへ対応できずに2失点目を喫する。「ゴール前に入り込んでくる質とか、クロスの質とかは、上手いなと思いました。テクニックという部分ではウチが勝っていると思うんですけど、最後のゴール前に入り込む質だったり、キックの質だったり、そういう部分はレベルが高いなと感じました」。

 後半開始早々の3失点目は、自ら与えたFKを直接沈められたもの。最終盤にはエリア内で完全にマークを外され、フリーになった選手に4失点目を献上。終わってみれば0-4。想像以上に力の差を見せ付けられる格好で、伊東のインターハイはわずか1試合の出場で幕を閉じた。

 大会全体の印象を問われると、少し顔を歪めながらこう語っている。「悔しさしかないですね。やれると思っていたんですけど、やっぱりまだ全然動けていなかったので、思うように行かなかったなと思います。ジャンプ力が落ちている部分はあったと思うんですけど、それを言い訳にしたくないですね。ケガで出れていなくて、チームにも迷惑を掛けましたし、その中でもこういう状況でも使ってくれたみんなには感謝しているので、次の選手権ではやり返したいなと思います」。

 目指すべきものは、より明確になった。「自分たちが思っている以上に、プレスの速さだったり、切り替えの速さというのは山田と差がありました。今まで山田以外には通用してきた部分も、山田に勝つためにはもっとやっていかないといけないと思いますし、逆に山田に勝つためにやっていたら、もう1回山田と試合をやれるチャンスはあると思うので、もっともっとレベルを上げていきたいです」。

 もうわずかに数か月だけが残された静岡学園での時間は、1秒たりとも無駄にできない。「最後にこんな悔しい想いでは終わりたくないので、みんなで笑顔で終われるように、ここから残りの時間も本当に努力して、打倒・青森山田という気持ちでやっていきたいなと思います」。

 体感したからこそ、イメージはできた。打倒・青森山田。もちろんそのためには、圧倒的なポテンシャルを有する伊東の躍動が、絶対に欠かせない。

(取材・文 土屋雅史)
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