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ユース取材ライター陣が推薦するインターハイ予選注目の11傑vol.2

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土屋氏が推薦するGK鈴木健太郎(成立学園高3年)

 令和4年度全国高校総体(インターハイ)「躍動の青い力 四国総体 2022」男子サッカー競技の各都道府県予選で熱戦が繰り広げられています。ゲキサカでは「インターハイ予選注目の11傑」と題し、ユース年代を主に取材するライター陣に選手権注目の11選手を紹介してもらいます。第2回は(株)ジェイ・スポーツで『Foot!』ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任し、現在はフリーランスとして東京都中心にユース年代のチーム、選手を取材、そしてゲキサカコラム『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』も連載中の土屋雅史氏による11名です。

 土屋氏「今回もこの企画では貫かせてもらっている通り、日頃から取材させていただく機会の多い東京都の高校に絞って、11人を選出しています。昨年度は関東一高が高校選手権で全国ベスト4と躍進するなど、全国レベルの実力を有するチームも少なくない東京高校サッカー界。この数年で考えると、コロナ禍に見舞われた社会の中で、あるいは他の地域の高校生以上に我慢を強いられてきた印象もあるだけに、彼らが何の憂いもなく目の前のサッカーと向き合えることを願ってやみません」

GK鈴木健太郎(成立学園高3年)
東京を制した関東大会予選では5試合でわずかに1失点と、正守護神として圧巻のパフォーマンスを披露。本大会出場を決めた國學院久我山高戦でも、ゴール前に入ってくるハイボールはほぼ100パーセントの確率でキャッチしてしまい、相手の反撃ムードをみるみる萎ませるプレーで、完封勝利を力強く引き寄せた。「アイツは足元が上手いので、結構ビルドアップからの攻撃が良い形になるかなと思います」とは今シーズンから指揮官に復帰した山本健二監督。チーム自体がポゼッションスタイルを標榜する中で、左右両足を使いながら正確なキックで味方へとボールを付けられる彼の存在は必要不可欠だ。昨シーズンは先輩のGK西大輔(現・東海学園大)と切磋琢磨しながら、選手権予選でも出場機会を得るなど経験を積んできた。都内有数のゴールキーパーが、さらなる飛躍の時を迎えている。

DF中村健太(堀越高2年)
1年生だった昨シーズンから出場機会を掴み取っていたが、選手権の全国大会では敗退した2回戦の数分しかプレー機会を得られなかったことで、自分がチームを牽引する立場になることを決意。自身のプレーも「去年は結果にこだわり過ぎて、目の前の1個の球際だったり、競り合いがおろそかになっていたなという想いがあったので、やっぱり上を見過ぎずに、地面に足をつけて、誰にでもできることをしっかりやって、あとは結果が付いてくることをやりたいなと思っています」とイチから見つめ直している。自らの特徴を「アグレッシブにボールを奪いに行って、持ち味の縦突破からのクロスやシュートが持ち味かなと思っています」と語るように、サイドを果敢に駆け上がる突破力が持ち味で、FC東京U-15むさし仕込みの足技も水準以上のレベル。昨年は準決勝で敗れ、全国切符を取り損ねたこの大会でのリベンジを誓っている。

DF渡辺誠史(大成高3年)
昨シーズンもセンターバックのレギュラーを務めていたものの、選手権予選では初戦の開始早々に接触プレーで負傷交代。それから半年近くをリハビリに費やし、ようやく5月に公式戦での戦線復帰を果たすと、いきなりその試合で後半からの登場ながらゴールを記録。「まさかとは思っていましたけど。もう叫びました(笑)」とチームメイトからも祝福を受けた。一番の武器は力強い対人の守備とヘディングだが、統率力も着々と身に付けている様子。「去年は後ろにもアントンくんのような大きな存在がいたので、そこを真似して引き継ぎたいというか、声を出してどんどん引っ張っていかなきゃなという想いはあります」と、先輩のGKバーンズ・アントン(FC町田ゼルビア)から学んだコーチングも新たな武器に、チームとして3年ぶりとなる全国出場を虎視眈々と狙う。

DF大田知輝(帝京高3年)
「ビルドアップやキックや繋ぎの部分は特徴だと思います」と自ら分析するセンターバックは、昨シーズンまでボランチを任されていたこともあり、よりプレッシャーの少ないポジションで優雅にボールを動かすプレーも印象的。流麗なポゼッションスタイルを志向するカナリア軍団の中で、ビルドアップの重要なピースを担っている。マンチェスター・シティ好きということで、かつてはロドリを参考にしていたが、ポジション変更に伴って今はルベン・ディアスとファン・ダイクを目標にディフェンス力を磨いている最中。「帝京という名前がある以上は、責任を持ったプレーをやらないといけないですし、もちろん他のチームにも負けないくらい、全国でも活躍したり優勝するのが帝京だと思うので、そのイメージをより強めていきたいですね」と名門復権への強い想いも携えている。

DF金指功汰(早稲田実高3年)
「もともとは右利きのボランチだったんですけど、左足も蹴れるということで左サイドバックにコンバートしていただいて、それによって左足も右足と同じくらいかそれ以上に蹴れるようになりましたし、扱えるようになったので、それは成長を感じているところでもあります。今は両利きということでお願いします!」との言葉にも頷ける。初見の印象は間違いなく左利きのそれ。セットプレーも左足で蹴っているが、実は“後天的レフティ”だというのだから恐れ入る。中学時代は三菱養和SC巣鴨ジュニアユースでプレーしており、当時のチームメイトでもある青森山田高のMF中山竜之介は「小学生の頃からの親友で、オフで帰ってきた時には焼肉に行ったりします」という間柄。大成高のDF渡辺誠史や帝京高のDF並木雄飛も含め、養和時代の仲間たちの活躍も刺激に、自分にベクトルを向けて日々のトレーニングに励んでいる。

MF萩原草汰(東久留米総合高3年)
1年生の頃は中盤のアンカー的な立ち位置の選手だったが、昨シーズンから前目のポジションを任されたことで、「『別に点は獲らなくていいや』みたいな感じで、散らしていたんですけど、シャドーに入った時は前目なので、『自分も点を獲らないといけないな』ということで、前に行く回数は結構増やすようにしました」と意識改革に着手。夏過ぎからはトップチームでの出場機会を得ると、ゴールに関わるプレーも増加。中盤のキーマンへと成長を遂げた。今シーズンは10番を背負っており、加藤悠監督は「主力になってもらわないと困ります」と話しているものの、本人は「自分は準決勝の関東一戦を西が丘で見ていたんですけど、あの決勝ゴールの時に鳥肌が立って『カッコいいな』と思いましたね。印象にメチャクチャ残っています」と3年前に選手権で全国に出場したチームに憧れて入学しているだけに、空色のユニフォームへのこだわりは誰よりも強い。

MF佐藤将(東海大高輪台高2年)
ドリブル好きが高じたエピソードが面白い。「自分の得意なプレーがドリブルなので、家では部屋の中にコーンを4本置いて、5号球でドリブルをやっています。ギリギリでドリブルできるぐらいの部屋ですけど、高校に入ってから、『もっとドリブルが上手くなりたいな』と思って始めました。たまに夜の9時半ぐらいにやり出すことがあって、『何で今やるの?』と親に言われることもあります(笑)」。この話からも分かるように、とにかくサッカー小僧感が漂う選手だ。今シーズンは本来のボランチから、一列上がったトップ下で起用され、より攻撃的な意識を高めている様子。だが、走行距離もチームでトップクラスと攻守に効果的なプレーを続けている。好きな選手はアンドレス・イニエスタと大島僚太。高輪台らしい“サッカーのできる”アタッカーから目が離せない。

FW加茂隼(駒澤大高3年)
「どんなボールでも完璧に収めて、そこから前を向いて、仕掛けて、積極的にシュートを打って、どこからでもゴールを獲れるような選手になりたいです」。頼もしい言葉を残してくれた駒澤大高のアタッカーは、昨シーズンの選手権予選でもストライカーとして、インターハイ予選優勝の実践学園高を沈めるゴールを奪っている。キャプテンに就任した今年は左サイドハーフにもトライ。「今は任されているところで自分がやるべきことをやるだけだと思います」とポジティブに取り組んでいるようだ。関東大会予選で決勝まで勝ち上がったことで、「コロナの影響もあって、あまり合宿もできなくて、他の代よりは絆を深める機会がなかったと思うんですけど、こういう大会を通じて自分たちが1つになってくるというのは感じています」とチームの一体感にも手応えを。185cmの長身を誇り、「J1で主力になるような選手になりたい」と言い切るこの男の活躍が、赤黒軍団の躍進には絶対に欠かせない。

FW牧山翔汰(実践学園高3年)
関東大会予選、インターハイ予選と二冠を達成した昨シーズンのチームの中で、2年生で唯一メンバー入りを果たすゲームも多かったストライカーは、全国出場を決めたインターハイ予選準決勝でもゴールを決めるなど、ジョーカーとして存在感を発揮。「自分はもともと中体連出身で上手くないので、前からアグレッシブにプレスに行って、相手の背後を取って、相手に身体をぶつけて、というような、相手からしたらうざいような所で評価してもらっています」と謙虚に語る雰囲気も面白い。本人も話しているように国分寺第五中サッカー部出身で、当時は東京の中体連選抜にも入っていたが、その時のチームメイトだったFWアジズブライアン瑛汰(ジェフユナイテッド千葉U-18)が年代別代表に入ったことで、「一緒にやっていた人が、気付いたらあんな選手になっているので、負けたくないですね」とライバル意識を燃やすなど、成長欲は十分に持ち合わせている。

FW本間凜(関東一高3年)
今シーズンの東京高校サッカー界の顔になり得る選手と言っていいだろう。2年生だった昨年は夏前にフォワードの定位置を勝ち獲ると、選手権で一気にブレイク。都予選で驚異の4戦連発を記録し、チームの優勝に大きく貢献すると、「自分は小中と出られなかったので、初めて全国大会に出られることが嬉しいです」と話していた本大会でも、まずは国立競技場開催となった開幕戦の中津東高(大分)戦でゴールを挙げ、3回戦の矢板中央高(栃木)戦では劇的な決勝点をマーク。全国レベルでもその得点感覚が通用することを証明してみせた。「自分は体力が持ち味で、裏抜けとかディフェンスとかずっと走れる選手でいたいんです」という言葉の通り、攻守に労を惜しまぬ献身的なプレーと、一瞬でゴールを奪えるポイントに現れるポジショニングが魅力。しなやかなストライカーが、今度は夏の全国の舞台で輝く可能性も決して低くない。

FW田島慎之佑(修徳高2年)
昨シーズンは1年生ながら名門の10番を背負い、左サイドのアタッカーとしてレギュラーを確保。「自分では前に行くパワーとスピードがあると思っています」という自己分析通り、縦への仕掛けから相手ディフェンスへ怖さを突き付けていくアグレッシブな姿勢で、チームに確かな推進力をもたらしてきた。「正直まだいろいろな対応ができていないところがあるんですけど、左足のキックと、足の速さもあって、性格も凄く良い子なので、期待しています」とは修徳中時代にも指導を仰いだ吉田拓也監督。ゴールも呼び込め、アシストも重ねられるプレースタイルは「お父さんが世代で、そこから動画を見つけた感じなんですけど、スピードで抜く時は参考にしています」と明かすティエリ・アンリをお手本にしているもの。本家のような左サイドから中にも縦にも行けるドリブルには、大いに注目してほしい。

■執筆者紹介:
土屋雅史
「(株)ジェイ・スポーツに勤務。Jリーグ中継担当プロディーサーを経て、『デイリーサッカーニュース Foot!』を担当。群馬県立高崎高3年時にはインターハイで全国ベスト8に入り、大会優秀選手に選出。ゲキサカでコラム、『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』を連載中。著書に「メッシはマラドーナを超えられるか」(亘崇詞氏との共著・中公新書ラクレ)。」
●【特設】高校総体2022



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