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[MOM3850]高知FW角田颯磨(3年)_「頼れすぎる人」が背中で見せ、全国へ導く

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高知高を牽引し、全国大会へ導いたFW角田颯磨主将

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[5.23 インターハイ高知県予選決勝 高知高 3-0 高知中央高 春野総合運動公園球技場]

 GK出身である高知高の大坪裕典監督は、チーム全体を見渡せる守備の選手にキャプテンを任せたいと考えているという。だが、今年のチームで大役を託したのは、エースの角田颯磨(3年)。これまでの考えとは違っても、彼に託した理由について大坪監督は「角田はキャプテンシーがあるし、身体を張って背中で見せられる。この子なら、キャプテンが務めるんじゃないかと思って託しました」。

 高知中央高との決勝で見せた姿も、まさに背中で見せるプレーだった。高知中央が準決勝で見せた戦いぶりを踏まえ、アンカーのMF片山良雅(3年)が相手の鍵と踏んだ角田は2トップを組んだ村田楓芽(3年)と縦関係になり、片山にボールを入れさせないよう前線から積極的な守備を披露。「颯磨さんが、前から走ってくれる事で制限がかかるので、後ろとしては守備が狙いやすい」(DF森紺、2年)という効果と共に、主将が見せる懸命な姿によって、チームに勢いを与えたのも確かだ。

 貢献は守備だけに留まらない。本業である攻撃でも、持ち味である身体の強さを活かしたプレーで起点となり、チームメイトの良さを引き出した。前半32分に生まれた先制点も彼のパスからDF西本翔馬(3年)がクロスを上げて、MF尼崎幸誠(3年)が合わせた形。「今年のチームは『挑戦』を合言葉にやっている。行けると思えば打つ。自分が思ったプレーを怖れずにやっていこうと思っていた」。そう明かすようにチャンスと見れば積極的にゴールを狙ったことも、チームの背中を押す要因となったのは間違いない。

 チームを全国大会出場に導いた立役者だが、本人は悔しさの方が強い。初戦こそ1人で6得点と大暴れしたが、準々決勝からの3試合は無得点に終わったためだ。「自分はFWで10番とキャプテンを任されている。得点でチームを引っ張りたかったけど、この3試合は無得点でチームのために数字が残せていないのが、悔しい。周りを活かすプレーは出来たけど、個人的には納得していない。やっぱり得点が欲しかった」。そう話す角田が全国行きを喜んだ後に、険しい表情でスタッフと話し込む姿が印象的だった。

 そうした自身と徹底して向き合う姿は、チームメイトの信頼に繋がっている。「颯磨さんは頼れすぎる人。自分の中で、誰か一人頼るとなったら、すぐ颯磨さんが浮かぶ。人としても凄い。(準々決勝)高知国際戦も颯磨さんのおかげで勝っているけど、点が獲れなかったり自分のプレーに納得がいかなかったら、凄く悔しがる。でも、試合中は気持ちを表に出さず、チームをプラスの雰囲気に変えてくれる。めちゃくちゃ大人」。こう口にするのは、中学時代からの後輩でもある森だ。

 全国大会は悔しさを晴らす格好の舞台。将来的なプロ入りを目指す角田にとっては、良いアピールの場でもある。「全国では得点を意識したい。チームとしては格上ばかりとの対戦になるので、無失点が大事になってくると思う。無失点に抑えて、ワンチャンスを決め切るのがチームとして狙い、その決め切る選手が自分でありたい」。そう意気込み彼なら、今大会の悔しさを力に変えられるはずだ。

(取材・文 森田将義)
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