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先を見据え、上手く行かないことにも妥協せずトライ。神村学園が鹿児島準決勝を4-0で突破

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後半11分、神村学園高は左SB高橋修斗が右足ミドルを決めて2-0

[5.27 インターハイ鹿児島県予選準決勝 神村学園高 4-0 樟南高 OSAKO YUYA stadium]

 27日、令和4年度全国高校総体(インターハイ)「躍動の青い力 四国総体 2022」男子サッカー競技鹿児島県予選準決勝が行われ、5連覇を狙う神村学園高が樟南高に4-0で快勝した。

 神村学園は準々決勝2得点のU-19日本代表候補FW福田師王(3年)がサブに回り、課題も出る試合だったが、後半に内容を好転させて連覇へあと1勝とした。4-4-2システムを組んだ神村学園はGKが広川豪琉(3年)で、右SB有馬康汰(2年)、CB大川翔(3年)、CB鈴木悠仁(1年)、左SB高橋修斗(2年)。ダイヤモンド型の中盤の底に笠置潤(3年)、右SH金城蓮央(1年)、左SH積歩門(3年)、トップ下が日本高校選抜のC大阪内定MF大迫塁主将(3年)、そしてU-16日本代表FW名和田我空(1年)と西丸道人(2年)が2トップに構えた。

 一方、樟南は96年大会以来となる準決勝進出。5-4-1システムのGKが小村竜也(2年)で、5バックの中央が藤田成亜(2年)、ストッパーが山下海斗(3年)と師玉海汰(2年)、右WB前田陸人(3年)、左WB奥薗秀斗(2年)、八木玲音(2年)と藤瑠士(3年)が中盤中央に入り、右SH原田莉空(2年)、左SH細山瑛太(3年)、最前線に富飛鳥(2年)が入った。

 開始直後、樟南は前線の落としを受けた細山が右足シュート。序盤、樟南は簡単には蹴らずにGKから繋いでボールを前進させようとした。だが、神村学園の素早い寄せの前に慌てるシーンが増えてしまう。最前線の富へボールを入れ、そこから攻撃を展開しようとするが、神村学園DF陣に跳ね返され、セカンドボールを拾われて連続攻撃を受ける展開となった。

 今年の神村学園は前線に推進力があり、後方にも配球の良い選手が揃うが、ストロングポイントに頼るよりも課題となっているビルドアップや人数を掛けた崩しにチャレンジ中。だが、この日の前半は個々の動きが少なく、やや相手の守りにハマる形となった。

 樟南はゴール前で藤田が頭から飛び込んでクリアし、師玉もタイミング良くインターセプト。180cmの山下や前田も競り合いで良く食い下がっていた。神村学園は大迫が左足ミドルを狙ったほか、高橋のサイドチェンジから名和田がクロスを上げ、西丸が左足ダイレクトでシュートを打つシーンも。両SBも高い位置で攻撃に係わっていたが、なかなか崩し切ることができなかった。

 それでも24分、中盤の底の位置でボールに係る回数を増やしていた笠置が、角度をつけた鋭いパス。これが樟南のDF網を抜けて前線の名和田へ通る。1年生10番はコントロールから右足シュートを決めて1-0とした。

 畳み掛ける神村学園は、敵陣での奪い返しなどから決定機を連発。だが、樟南は奥田や師玉がゴールラインすれすれでボールをかき出し、追加点を許さない。神村学園は一方的に攻めながらも1得点で前半終了。ハーフタイムには有村圭一郎監督から「良い選手は見えないところ、オフのところで一生懸命やる。ボールを持っていないところで汗をかけていない」と指摘されていた。

 後半、神村学園はファーストプレーで大迫が中央突破を図るなどギアチェンジ。樟南も5分に八木の縦パスから細山が右足を振るシーンがあったものの、後半は動きの出た神村学園の攻撃の迫力が増し、得点数を増やした。5分、名和田の右足シュートはクロスバーをヒット。だが、11分、自分でやり切る姿勢を指摘されていた左SB高橋が、カットインからの右足ミドルを右隅へ決めた。

 神村学園はすぐに追加点を挙げる。高橋を吉永夢希(2年)へ代えて迎えた14分、積がGKとDF間へ入れた右クロスを西丸が左足ダイレクトで合わせて3-0。21分には名和田の左クロスを積が頭で流し込み、4-0とした。

 神村学園は直後に右SB長沼政宗(2年)、CB槝之浦陽(3年)、MF上地蓮(3年)を投入。27分にはFW高倉太朗(3年)を起用した。一方の樟南は後半、9分のFW田中祐志(1年)投入を皮切りに、MF古川翔大(2年)、MF中西海聖(2年)、DF宮城大輝(3年)、FW田重田祐大(2年)を送り出した。神村学園は名和田が1対1をGK小村に止められるなど、5点目を奪うことはできなかったが、4-0で決勝へ駒を進めた。

 神村学園の有村監督は今季、あえて選手たちにストレスがかかるような戦い方を要求しているのだという。「ちょっとしたことなんですけれども、ちょっとしたことをやらない」(有村監督)というように、数10cmのマークを外す動きなどはまだまだ課題。だが、上手く行かない中で必要なことに気づき、その回数を増やすこともできてきている。

 また、大迫は「今は(上手く行かなくても、)チャレンジするところをやっていかないといけない。(各選手が)自分基準になっているところがあまりよくないところで、パスも相手がいないところにパスを出したり、シュートもGKいないところにシュート打ったりとか相手を見てもっとプレーできることを増やしていければ、もっと良くなると思います」。全体的にまだミスも多いが、福田と大迫、名和田ら攻撃陣は全国屈指のレベルでDF陣の怪我人が戻ってくれば安定感もより高まりそう。昨年度はインターハイがベスト8で選手権は初戦敗退。日本一という目標を成し遂げるため、個々の将来のためにも、できることを増やし、高いレベルの相手でも勝ち切る力をつけなければならない。

 1年時から注目されてきた大迫、福田が最終学年に。大迫は「今年は優勝したいですね。今のままじゃ絶対無理ですけれども。まずあした絶対に取らないといけない。全員で、100%で戦って、勝って、そこからの準備期間でピッチ内ピッチ外の隙をなくしていけば、全国でも戦っていけるチームだと思う」。まずは鹿児島城西高との決勝(28日)に集中。有村監督が「福田が入ればまたちょっと違う色が見せられる」と語るように、多彩な攻撃でゴールを連発して全国制覇への挑戦権を勝ち取る。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2022

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