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「This is JOSEI」。積み上げてきた力発揮の鹿児島城西が鹿実突破し、宿敵との決勝へ

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後半18分、鹿児島城西高FW前田隼希が先制点

[5.27 インターハイ鹿児島県予選準決勝 鹿児島実高 0-2 鹿児島城西高 OSAKO YUYA stadium]

 横断幕に掲げられた「This is JOSEI」の合言葉。インターハイ予選から着用する青と白の縦縞のユニフォームをまとった鹿児島城西が、自分たちらしい戦いで強豪対決を制した。
27日、令和4年度全国高校総体(インターハイ)「躍動の青い力 四国総体 2022」男子サッカー競技鹿児島県予選準決勝が行われ、鹿児島城西高が2-0で鹿児島実高に勝利。鹿児島城西は28日の決勝で神村学園高と戦う。

 5大会ぶりの鹿児島制覇を狙う鹿児島城西は3-5-2システム。GKが橋口竜翔(2年)で右から佐藤優馬(3年)、山口慶祐(3年)、姶良心己助(3年)の3バック。右WB田中和斗(3年)、左WB是枝大翔(3年)、1ボランチが小堀優翔主将(3年)、2シャドーが原田天(3年)と前田隼希(3年)、そして2トップを矢吹凪琉(2年)と石内凌雅(2年)が務めた。

 一方、27回目のインターハイ出場を目指す鹿児島実は先発8人が1、2年生。GK田中敦志(2年)、右SB田村倫也(2年)、CB福元一光(2年)、CB吉村太希(1年)、左SB尾ノ上禅主将(3年)、ダブルボランチが坂本一慎(3年)と原口順多(2年)、右SH仙田龍聖(2年)、左SH瑞慶山史師(3年)、前線はシャドー気味に入った外園智也(2年)と伊地知龍之介(2年)が構えた。

 鹿児島実は前半半ば頃から、取り組んできたダイレクトプレーの回数を増加。前線の選手が1タッチで落としたボールをサポートの選手が前向きな1タッチパスで狙い、相手DFと入れ替わろうとする。また、いずれも馬力のある瑞慶山と尾ノ上の左サイドが突破口になっていた。

 一方の鹿児島城西はロングボールを起点に左利きの技巧派MF原田や推進力のある前田が仕掛けに持ち込もうとする。中盤の底の位置で効いていた小堀を含めたトライアングルを軸にゴールを目指したが、公式記録上の前半シュート数はゼロ。一方の鹿児島実は17分に尾ノ上のクロスを仙田が頭で合わせたほか、伊地知がカットインから左足を振り抜き、また尾ノ上の左足FKがゴールを襲う。加えて、1年生CB吉村が高さを発揮するなど大きな隙を見せなかった。

 0-0で折り返した後半、鹿児島城西は前田の縦への動きやセットプレーからチャンス。佐藤のヘッドはGK田中に阻まれたものの、流れは徐々に鹿児島城西へと傾いていく。鹿児島実は10分にFW牧野樹生人(3年)が投入するが、鹿児島城西は直後に相手のビルドアップをインターセプトした石内がGKとの1対1から左足シュート。これはGK田中がセーブしてミスを取り戻す。だが、この時間帯を境に鹿児島実は繋ぎに行く回数が減り、攻撃が停滞してしまう。

 逆に勝負どころと見た鹿児島城西は、13分にMF佐俣盛之助(3年)とFW東條弘聖(3年)を同時投入。エースFW前田を前線へ押し出す。すると、鹿児島城西はこぼれ球を拾った是枝の縦突破などでゴールへ。そして18分、高い位置でボールを奪い返すと原田が右中間からグラウンダーの縦パスを通す。これを受けた前田がDFの股間を通すドリブルで突破し、さらにDF間へ斜めの動きで割って入る。そのまま左足シュートをゴールへ流し込み、スコアを動かした。

 鹿児島城西の小堀は「途中から出てきた佐俣や東條がスピードがあったりして、相手の嫌な部分をどんどん突いてくれる。そこでたくさん突いた分、隼希にボールが渡ったのかなと思います」と説明。新田祐輔監督も「7番(佐俣)、11番(東條)が肝ですね。やっぱり。アイツらどこまででも走るから」という2人のハードワーカーは先制後も相手DF、GKに厳しくプレッシャーを掛けてビルドアップを許さない。

 ペースを握った鹿児島城西は、小堀の好パスから前田がシュートへ持ち込むなど畳み掛けようとする。鹿児島実の森下和哉監督は「みんなよく取り組んでくれている。でも、後半は(ミスが出たこともあり、繋ぐことが)怖くなってやれなくなってしまいましたね」と指摘。MF梅木駿介(1年)、MF浅井颯樹(2年)、FW二宮魁星(3年)、MF今村颯太(3年)を立て続けに投入したが、左WB加藤廉(3年)も加えて勢いづいた鹿児島城西から流れを取り戻すことはできなかった。

 35分、鹿児島城西は前田が右サイドへ展開し、東條がラストパス。これはDFに阻まれたが、こぼれを拾った東條が中央でスペースを作り出した前田へ折り返すと、背番号9は右足ダイレクトで決めて試合を決定づけた。鹿児島城西は佐藤、山口、姶良の3バックも安定し、後半は被シュートゼロ。後半勝負で狙い通りに突き放し、決勝進出を果たした。

 鹿児島城西の新田監督は今年のチームについて、「団結感はありますね。『手を繋げ』とよく言うんですけれども、この3年生は手を繋げている感じがありますね」と説明する。自分たちでぬるさを排除。また、味方同士で激しく意見を言い合うことはあっても、すぐに切り替えて“手を繋いで”戦うことができる。

 そのチームは、1年時から徹底してきたスタイルで宿敵と勝負。小堀は「城西に入ってきた目標はしっかり全国出て活躍するということだったので、まずは明日決勝をしっかり勝って目標を一つ達成したい。新人戦、九州新人(代替大会)と惜しいところまでは行ったんですけれども、惜しいじゃ勝てない相手なので、どれだけ自分たちが準備からしっかりできるかが鍵だと思います。得点を決め切るや最後のシュートブロックのところを神村学園さんは徹底しているので、逆にそこは見習って、自分たちが明日はそこで神村学園さんを上回っていければ勝利に繋がってくると思います」と力を込めた。昨年の決勝は延長後半に決勝点を許し、惜敗。今年は最後まで徹底し、宿敵を上回る。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2022

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