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[MOM3855]中京大中京DF伊藤凛人(3年)_“スーパープレー”で勝利を呼び込んだ堅守の要

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懸命なゴールカバーで失点を防いだDF伊藤凛人(3年)をチームメイトが称える

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[5.28 インターハイ愛知県予選準決勝 中京大中京高 1-0 名古屋高 会場未公表]

 プリンスリーグ東海への復帰を狙う中京大中京高だが、今季は県1部リーグで苦戦。1勝1分4敗と黒星が先行し、8位と低迷する原因となっているのが、リーグワーストを記録する守備の乱れだ。

 準決勝で対戦した名古屋高と4月上旬に対戦した際も、1-5と大敗。リベンジを狙ったこの日は守備を重視した布陣で挑み、前半を1-0で終えた。風下に立った後半は、名古屋が得意とするパワフルな攻撃、そしてロングスローとCKに苦戦しながらも、前半からの粘り強い守備を継続し、失点を与えない。リーグ戦とは見違えるような堅守の立役者となったのは、キャプテンを務める右SBのDF伊藤凛人(3年)。鈴村真平監督が「キャプテンはブレない所が大事。平常心でいられるのが彼の魅力」と評する人物だ。

 担任も受け持つ鈴村監督は「真面目過ぎる。ただ、裏を返せば硬すぎる部分もあるので、もっと力を抜いて欲しい」とも続ける。大黒柱の堅さはチームに伝播するため、試合の際はいつも「笑顔だぞ!キャプテン!」と声を掛けて、ピッチへと送り出すという。この日も見られた光景で、伊藤は「試合になると緊張しちゃって、硬くなるけど、今日はスタッフから『笑ってプレーしろ!』と言われ、気が楽になった」と笑みを浮かべる。

 粘り強い守備に彼が発する声は欠かせない。「チームの事を考えてくれている印象がある。キャプテンになってからは責任感を持って行動しているのかなと思う。チームの雰囲気があまり良くない時は、副キャプテンの蛭田(郁海)と一緒に『やろうぜ!』と鼓舞してくれる。チームが緩んだ時は、締める声も出してくれる」と話すのはMF宮澤隼(3年)。我慢の時間を乗り切れたのは、彼を中心にチームが一つとなれたからだ。

 持ち味であるオーバーラップからのクロスを発揮する機会は少なかったが、プレーでの貢献度も高かった。最大の見せ場は後半36分。ゴール前でFW米原生織(3年)に打たれたシュートは、GKの逆を突かれたが、伊藤が体勢を崩しながらもゴールカバーに入ってクリア。「気付いたら勝手に身体が動いていた。ゴールを守る執念で身体を投げ出しました。しっかりプレーでチームを救えて良かった」と振り返るスーパープレーがなければ、勝利はなかっただろう。インターハイ予選に入ってからの中京大中京が、4試合全て無失点という結果を残せている要因の一つが、伊藤であるのは間違いない。

 名古屋U-15出身の伊藤は「県外で勝負しようかとも思ったのですが、地元・愛知県が全国でも戦えるぞというのを示したかった」と中京大中京へと進学。昨年のインターハイでは愛知県勢としての力を示す格好の舞台だったが、1回戦で立正大淞南高(島根)に敗戦。伊藤自身は大会のメンバー入りを果たしたが、出番を掴めなかった。今年こそは全国のピッチに立って、中京大中京高の力を見せたいとの想いは強い。そのためには、あと1勝しなければいけない。「次の中部大一は良い相手で、強い相手だと思いますが、自分たちがやる事は変わらない。しっかりと1週間トレーニングして、また全国で戦いたい」と試合を終えた伊藤は口にした。

(取材・文 森田将義)
●【特設】高校総体2022

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