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静岡でジャイキリ!「準決勝・静学撃破」再現の磐田東が05年以来の全国王手!

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磐田東高が前回大会全国3位の静岡学園高を撃破

[5.29 インターハイ静岡県予選準決勝 静岡学園高 0-0(PK1-3)磐田東高 愛鷹広域公園多目的競技場]

 静岡県1部リーグ勢の磐田東が、プレミアリーグWEST2位の静岡学園相手にジャイアントキリング! 令和4年度全国高校総体(インターハイ)「躍動の青い力 四国総体 2022」男子サッカー競技静岡県予選準決勝が29日に行われ、プレミアリーグ勢でスーパーシードの静岡学園高と地区予選から勝ち上がってきた磐田東高が対戦。0-0で突入したPK戦を磐田東が3-1で制し、05年以来の決勝進出を決めた。磐田東は同年以来2度目の全国大会出場を懸けて、決勝(6月5日)で藤枝明誠高と戦う。

 磐田東は、唯一全国大会に出場した05年大会準決勝で静岡学園と対戦し、1-0で破っている。また、前回準決勝へ進出した10年大会の対戦相手も静岡学園で当時は2-0から追いつかれ、延長戦の末に2-3で惜敗。山田智章監督は「試合前に言ったんですよ。準決勝では1勝1敗だよって」と明かす。

 MF和田新吾(元名古屋)ら擁していた05年のように、力のある選手が揃っている訳では無い。指揮官も認めた通り、静岡学園との戦力差があることは確か。攻撃の要であるMF港聖頼主将(3年)が負傷離脱中ということも影響したか、この日は相手の守備強度の高さと切り替えの速さの前に、取り組んできた攻撃面で良いところをほとんど出せなかった。

 それでも、ゲーム主将のCB森蓮太(3年)が「自分たちの力を出せれば良い勝負ができると思っていた。個人ではスキルが劣っていても、組織でやれればしっかり戦えるなということは昨日(準々決勝)を含めて自信になっていた」と語ったように、守備の部分で集中力を維持しながら戦うなどやるべきことを徹底し、80分間を0-0。浜松開誠館高との準々決勝に続くPK戦を制し、喜びを大爆発させた。

 静岡学園は今季、復帰1年目のプレミアリーグWESTで5勝1分1敗の暫定2位。今大会はスーパーシードで準々決勝から登場し、今回が2試合目だ。4-5-1システムのGKはU-17代表の中村圭佑(2年)で、右SB永田拓夢(3年)、21年U-17代表候補CB行徳瑛主将(3年)、CB森下蒼大(3年)、左SB鈴木新(3年)。ダブルボランチがU-17日本高校選抜MF白井柚希(3年)と保竹駿斗(3年)、U-17日本高校選抜の右SH高橋隆大(3年)、左SH寺裏剣(3年)、トップ下が西井大翔(3年)、1トップを21年U-16代表候補FW神田奏真(2年)が務めた。

 一方の磐田東は10年以来の4強入り。4-4-2システムのGKは岡村虹輝(2年)、右SBが前・磐田監督の鈴木政一氏を祖父に持つ鈴木彩斗(3年)、CB森、CB森谷柊平(3年)、左SB倉田幸栄(3年)。ダブルボランチが鈴木王太(3年)と熊野日路(3年)、右SH谷野暁希(3年)、左SH瀧井空(2年)、そして神谷宥河(3年)と徳増倭(2年)が2トップを組んだ。

 試合を通してボールを支配していたのは静岡学園の方だった。だが、前半は中盤のボールを受ける回数が明らかに少なく、バックパスが増えるなど後ろに重い展開。高橋と寺裏の強力な両ワイドまでボールを運び、彼らがキープ力を発揮していたが、鈴木彩、倉田の磐田東両SBに縦を切られ、カットインも人数を掛けて守る相手に対応されてしまう。

 磐田東は押し込まれる展開だったが、「ファーストDFをしっかりいく」(山田監督)ことを徹底。人にしっかりと付いて守り、守備網の内側に入って来るボールに対しては、前へ出て厳しくチェックする。静岡学園は飲水後に白井や保竹の前線に係る回数が増加したが、決定打を打ち込むまでは至らない。

 森は「相手はプレミアのチームなので、左のウイングの(寺裏)剣選手とか9番の神田選手とか迫力があると思っていたので、そういうところで自由にやらせないことを最終ラインを含めて話をしていたので、上手く抑えられて良かったと思います」と説明する。

 逆に磐田東は28分、左ショートコーナーから鈴木王が上げた左クロスに森が飛び込む。また、カウンターから瀧井がドリブルで一気にPAへ切れ込むシーンもあった。守備面も引いて守るだけにならないように、前から行けるところは前へ出て連続したプレッシング。回数は少なかったが、幾度か中盤を経由して前線までボールを繋ぎ、谷野のスピードも相手を嫌がらせていた。

 静岡学園は後半6分、高橋がカットインから上げた右クロスをファーサイドの寺裏が決定的なヘッド。だが、GK正面を突いてしまう。13分に静岡学園は西井をMF近藤安元(3年)へ代え、磐田東も神谷をFW伊藤悠陽(1年)へ入れ替える。

 15分には静岡学園GKのビルドアップのパスを磐田東の谷野がインターセプト。左足で狙ったシュートはDFにクリアされたが、静岡学園はDFの細かなミスなど、ところどころで隙も出てしまっていた。

 それでも、ボランチが高い位置でボールを受けられるようになり、「後半はある程度良くなった」(川口修監督)。だが、シュートを決め切ることができなかった。16分に高橋がカットインから放った左足シュートはクロスバーをヒット。直後には再三空中戦の強さを発揮していた行徳のヘッドがゴール右へ外れる。

 静岡学園は34分に寺裏をMF望月空(3年)へスイッチ。35分には永田のグラウンダークロスに神田が飛び込むも、磐田東GK岡村が勇気を持って飛び出し、ゴールラインすれすれでCB森谷がクリアする。静岡学園は40分に高橋のクロスを胸で止めた神田が右足シュート。そして、磐田東が鈴木彩をDF前嶋誠(3年)へ入れ替えた後の後半40+5分、静岡学園は右FKに神田が飛び込むが、ボールは右ポストを叩いてしまう。

 静岡学園の川口監督は「相手が守備的に来たということで、相手の守備が素晴らしかったということと、相手が守ってきたところでこじ開けることができなかった。全員に言えることなんだけど、攻める姿勢が足りない」と厳しい評価。試合は0-0のまま80分間を終え、即PK戦へ突入した。

 磐田東の山田監督は「PK、運だよと。それは、しょうがないねと。でも、勝とうねと話しました」。健闘で終わるのではなく、勝利で終えることを目指した磐田東は、PK戦でリードを奪う。先攻・静岡学園1人目が外したのに対し、磐田東は谷野と倉田が成功。そして、静岡学園3人目をGK岡村が足でストップする。

 静岡学園も直後にGK中村が止め返したが、磐田東GK岡村は4人目のシュートを再びストップ。最後は森が右足で決め、3-1でV候補を撃破した。大興奮の磐田東イレブン。森は「今日勝ったことは今後の人生に関わってくることだと思うので、本当に良かったと思いますし、今日静学さんに対して自分たちの課題が露呈したので、(決勝まで)あと一週間しかないですけれども良いものを作り上げたい」とサッカー人生における大きな1勝の喜びと、引き締めの言葉を口にしていた。

 静岡県西部地区の強豪・磐田東は15年までプリンスリーグ東海で戦っていたが、現在の主戦場は県1部リーグだ。トーナメント戦ではなかなか県4強入りすることが叶わなかったものの、山田監督は「自分で考える人間になって欲しいから、どうしたら良いという問いがけから入るように」と選手たちが自分たちでモチベーションを維持し、前向きに取り組めるような言葉がけを意識し続けてきたという。

 この日対戦した静岡学園は全国有数の選手層。だが、対戦した時に怯むのではなく、本気で勝つためのメンタリティーと戦う術を求めてトレーニングしてきた。この日、攻撃面に関してはサポートの動きが遅れ、狙いとするビルドアップをすることができなかったが、無失点で堂々の勝利。山田監督は決勝へ向けて、「楽しんでやります。子どもらが自分たちで舞台を整えたので、子どもたちが楽しんでやってくれれば結果はついてくると思う」。17年前と同様に準決勝で静岡学園を突破して決勝進出。改めて自信を得た選手たちは、エコパファイナルでこの日以上のサッカーを表現して静岡制覇を実現する。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2022

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