beacon

苦戦も、力抜けた終盤に”らしさ”取り戻す。全国8強以上掲げる佐賀東が70+2分の決勝点で佐賀制覇

このエントリーをはてなブックマークに追加

佐賀東高が苦しみながらも2連覇を達成

[6.2 インターハイ佐賀県予選決勝 佐賀学園高 0-1 佐賀東高]

 硬さ取れずに苦戦も、佐賀東が終了間際の1点で全国へ――。令和4年度全国高校総体(インターハイ)「躍動の青い力 四国総体 2022」男子サッカー競技佐賀県予選決勝が2日に行われ、佐賀東高佐賀学園高に1-0で勝利。2大会連続16回目のインターハイ出場を決めた。

 昨年度選手権16強の名門校にとっては、非常に苦しい戦いだった。シュート数は7―14。後半半ばまで硬さが取れず、佐賀学園の良さを引き出す形になってしまっていた。それでも、終盤に掛けて内容を向上させ、相手を見て攻撃。アディショナルタイムにMF宮崎飛羽(3年)が決勝点を決め、全国切符を勝ち取った。

 佐賀東は注目エースのFW小嶋悠央(3年)が、長期離脱中。4-4-2システムのGKは松雪翔吾主将(3年)で、右SB岡功輝(3年)、CB石橋拓磨(3年)、U-17高校選抜CB宝納拓斗(3年)、左SB江頭瀬南(1年)、ダブルボランチが江口恭平(2年)と大島弘賀(1年)、右SH宮崎、左SH右近歩武(2年)、2トップは松本天地(3年)と宮川昇太(2年)がコンビを組んだ。

 一方、今年の新人戦王者で15年以来のインターハイ出場を狙う佐賀学園は、GKが野田真斗(3年)で、原崎滉太(3年)、白石琉稀主将(3年)、永尾至穏(3年)の3バック。ダブルボランチが平尾優稀(3年)と溝上要(3年)、右WB彌永凌汰(3年)、左WB鮎川璃空(3年)、そして頂点の位置でトップ下のように振る舞う山口凌弥(3年)を中心に、右に松崎遥春(3年)、左に中島啓輔(3年)が前線に構えた。

 序盤、佐賀東は余裕ある動きを見せる宝納やキープ力高い江口、松本を起点としたビルドアップでボールを前進させ、宮川の迫力十分の動きや左の右近のドリブル、江頭の精度の高い左足キックも活用しながらゴールを目指す。だが、よりゴール前のシーンを作り出していたのは佐賀学園の方だった。

 13分、左から中へ持ち込んだ山口がキックフェイントでマークを外してから、右足一閃。コースを突いた一撃は佐賀東GK松雪のファインセーブに阻まれたが、その後も平尾が柔らかいドリブルからシュートへ持ち込み、山口のスルーパスなどで抜け出した松崎が立て続けに好機を迎える。

 佐賀東は大島や宮崎が技巧を発揮していたが、佐賀学園が攻勢を続ける。山口や溝上が緩急で相手の足を止めてチャンスメーク。寄せの甘い相手を振り切り、シュートやラストパスの本数を増やしていく。そして、大家裕司監督が「後半、東高校の裏の対応にズレがあったので結構そこを狙っていました」と説明したように、佐賀学園は後半も相手DFラインのギャップを突く攻撃で決定機を作り出した。

 3分、右中間でボールを持った溝上がDFライン背後へ斜めのクロスボール。鮎川がゴール至近距離から放ったヘッドは佐賀東GK松雪が再びビッグセーブではじき出す。佐賀学園は直後にもCKの流れから鮎川が左足を振り抜くが左ポストをヒット。佐賀学園は再三の好機をモノにすることができない。

 後半、佐賀東は3バックの脇を狙う。宮崎との連係で岡が2度3度と右のポケットへ侵入してクロス。だが、佐賀学園は白石を中心に集中力を切らさず、ゴール前でクリアしていく。0-0の展開が続く中、佐賀東は16分に岡を右SB渡邉皓斗(3年)へスイッチ。飲水後の23分には大島をFW関裕心(3年)へ入れ替えた。

 佐賀学園も25分に松崎をFW中島右勢(3年)、31分には平尾に代えてMF山本洸成(3年)を投入した。終盤、オープンな攻め合いに。特に佐賀東は、終盤に掛けてようやく相手を見る余裕が出てきていたようだ。

 後半半ばの飲水タイム、佐賀東の蒲原晶昭監督は選手たちに「学園、あんなに楽しそうにやっているのに、オマエら、何、あんなに縛られて。もっと力抜いてやったら」とアドバイスしたのだという。

 主将の松雪も「いつも通りのプレーができていない選手、多少硬くなっている選手がたくさんいたので、いつも通りリラックスして佐賀東高校らしいサッカーをやらないといけないと声がけしました」と振り返る。目の前の相手に一生懸命になり過ぎたことで佐賀東の特長である相手と駆け引きしながら嫌な位置、嫌な位置へボールを動かすサッカーができていなかった。

 それでも、松雪は「リラックスした結果、1点が取れたと思います」。終盤、相手を左右へ揺さぶる回数を増やすと、延長戦突入直前の後半35+2分に待望の1点をもぎ取った。左サイドで江頭からパスを受けた右近がDFとの駆け引きから縦へ仕掛けてクロス。PAへ3人の選手が走り込み、大外の宮崎が右足ダイレクトでゴールへ流し込んだ。

「ニア固まっているから頭越せとずっと言っていて。やっと1個裏へ行きましたね」と蒲原監督は苦笑。後半のファーストシュートが決勝点となり、佐賀東が競り勝った。敗れた佐賀学園の大家監督は「記録上、後半は東がシュート1本(佐賀学園は5本)。これがサッカーなんだなと改めて思いました」。佐賀東は後半ラストプレーで決勝点を挙げた準決勝に続く劇的勝利。近年の佐賀県の高校サッカーを引っ張る名門が、そのプライドも力に勝ち切った。

 佐賀東は、J2での出場回数を増やしているMF吉田陣平(現新潟)をはじめ、好選手の揃っていた昨年度からメンバーが大きく入れ替わった。宝納とともに昨年の全国大会を経験している松雪は、「全国の厳しさをもっとチームに共有していかないといけない。こういう試合に慣れて、全国大会ではしっかり代表としての自覚も持って戦っていきたい。目標はベスト8以上です」と宣言。佐賀の名門は、一発勝負のトーナメント戦で普段通りの戦いができなかったことを反省し、どの試合でも自分たちのサッカーを表現できるように攻守両面で力を磨く。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2022

TOP