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先制点献上が「良い薬」に…後半に“らしさ”披露の近江、綾羽に逆転勝利で全国まであと一つ

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近江高MF大谷結衣斗(2年、左)のシュートを綾羽高MF末若昂大(3年、右)がブロック

[6.2 インターハイ滋賀県予選準決勝 近江高 2-1 綾羽高 会場未公表]

 令和4年度全国高校総体(インターハイ)「躍動の青い力 四国総体 2022」男子サッカー競技の滋賀県予選準決勝が2日に行われた。第2試合の近江高綾羽高の対戦は、DF金山耀太(2年)の2ゴールによって、近江が勝利した。4日の決勝では草津東高と対戦する。

 今年の近江は、2年生がスタメンの半数以上を占める若いチーム。公式戦でトーナメントを経験する選手が少なく、試合序盤はチーム全体に動きの堅さが見られた。パスワークによる崩しを志向しつつも、空いた相手DFの背後を狙ったが、落ち着いた対応を見せたDF今西真大(3年)を中心とした綾羽守備陣の牙城を崩せない。

 主導権を握りながら決定機を作れずに時間が進むと、最初にチャンスをつかんだのは綾羽だった。前半31分には左後方から入れたDF星山悠吏(3年)のクリアボールが近江DFの背後に落ちると、FW佐藤秋太(3年)が真っ先に反応。冷静にゴールの左隅を射抜いて、綾羽が均衡を崩した。

 欲しかった先手を奪われたが、失点は近江にとって良い薬になったのは間違いない。「後半になって1点ビハインドという展開になって、自分たちがやるべき事がハッキリした。点を獲らないといけない状況となり、硬さがとれたかなと思います」。そう振り返るのは、DF岡田涼吾(3年)だ。

 ハーフタイムに前田高孝監督から「2年生が縮こまってプレーしていたら、良さが出ない。とりあえず自分たちの良さややってきた事を100%出せ」と激を飛ばされたのも、プラスに働いた。前半は攻守ともにパワフルな綾羽に歩調を合わせ、長いボールが多くなっていたが、後半からは練習で取り組む相手のギャップをとりながらドリブルやパスを繰り出す場面が増加する。

 後半7分には、右サイドに抜け出したMF鵜戸瑛士(2年)のパスを逆サイドから、ニアへと飛び込んだ金山が合わせて、同点に追い付く。さらに同21分にはMF西飛勇吾(2年)のクサビを受けた途中出場のFW高木遥斗(3年)が素早く左前方に展開。フリーで受けた金山が前に出たGK田中智也(2年)の隅を突いて、逆転まで持ち込んだ。同23分には相手エリアで仕掛けたMF山門立侑(2年)が倒され、PA左手前でFKを獲得。MF高崎亮(2年)が直接狙ったが、クロスバーに嫌われ、3点目とはならなかった。

 後半は我慢の時間が続いた綾羽も、期待のMF小倉陸(1年)を投入し、反撃の機会を伺う。同24分には小倉が早速仕事を披露し、MF渡辺裕也(3年)のパスからフリーでシュートを放ったが、惜しくもポスト。MF福森誠剛(2年)が素早くセカンドボールに反応したが、近江DFが先にクリアした。試合はそのまま終了を迎え、近江が2-1で勝利した。

「勇気を持ってやれば良いのに、一押しが足りない。結局失点が一押しになって、やらなければとなっていった」。試合後、前田監督が課題を挙げた通り、エンジンのかかりの遅さは課題だが、若いチームが苦しみながらも、白星をつかんだのは事実。前田監督は「今日みたいなゲームを勝ちに持って行けたのは、彼らにとって良い経験」と続けた。岡田は「草津東は昨年、選手権(県予選)で優勝したチーム。僕たちはインターハイも選手権も獲れなかったので、しっかりチャレンジ精神を持ちつつ、ひた向きにやっていきたい」と意気込みを口にした。

 負けた綾羽としても収穫は大きい。プリンス2部への昇格を果たした昨年のメンバーが多く抜け、1からのチーム作りを進めている最中。2、3月は県内勢との練習試合でも白星を奪えなかった。インターハイ予選の苦戦も頭にあった中での4強入りは、チームの自信に繋がる。「今、自分たちが持っている力は全部出せたと思う。得点も出来たし、失点もしたけど競り合いやセカンドボールの回収など自分たちが大事にしてきた所でのバトルでは、ある程度結果が出せた。今日の結果は悔しくても、ここまでやれるようになったんだという感覚はある。悔しさよりも、手応えの方が大きい」(岸本幸二監督)。近江は次の決勝、綾羽は冬の選手権へ。苦しみながら、この試合で共につかんだ収穫は必ず活きるはずだ。

(取材・文 森田将義)
●【特設】高校総体2022

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