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日章学園が4-0で宮崎6連覇。予選で学んだ課題を改善し、全国で上へ

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日章学園高が宮崎県予選6連覇

[6.4 インターハイ宮崎県予選決勝 日章学園高 4-0 日南学園高 ひなた宮崎県総合運動公園サッカー場]

 日章学園が学びの6連覇――。令和4年度全国高校総体(インターハイ)「躍動の青い力 四国総体 2022」男子サッカー競技宮崎県予選決勝が4日に行われ、日章学園高が6大会連続17回目の全国進出を決めた。決勝で日南学園高と対戦した日章学園は、4-0で快勝。ノーシードから頂点に立ち、タイトルを守った。

 前回大会で全国16強の日章学園は、CB工藤珠凜主将(3年)をはじめ、右SB蔵屋明徹(3年)、左SB芝清人(3年)、MF金川羅彌(3年)、MF松下貴要(3年)と全国経験者5人が先発。4-5-1システムのGKは小林俊雅(3年)で右SB蔵屋、CB新穂海斗(3年)、CB工藤、左SB芝、ダブルボランチが金川と石田誠二(3年)、右SH松下、左SH安藤優翔(2年)、トップ下が鳥栖U-15の先発として日本一を経験している川越廉斗(1年)、そして1トップを田上遼馬(2年)が務めた。

 一方の日南学園は準決勝で名門・鵬翔高をPK戦の末に破り、初の決勝進出。3-4-1-2のGKが山口隼輝(3年)、3バックは主将の鬼塚梨央(3年)と竹之内瑠生(3年)、河野凌芽(3年)、ダブルボランチが菊池祐志(3年)と那須優稀斗(2年)、右WB中尾遙斗(2年)、左WB松田寛太(2年)、トップ下が田中渓大(3年)、そして吉田天斗(3年)と太田瑞樹(3年)が2トップを組んだ。

 日南学園は取り組んできた下で繋ぐ攻撃と、ハイラインの守備で王者に挑戦。それに対して日章学園は序盤から技術力の高さ、スピードを活かして相手ゴールへ迫ると、8分に先制点を奪う。自陣PAからビルドアップする日南学園DFに対し、距離を詰めた川越がキックモーションの大きな相手の前に潜り込む形でインターセプト。右横でサポートした田上が左足ダイレクトで難なくゴールへ流し込んだ。

 日章学園は10分、接触プレーで右足を痛めていた松下とMF川野漣斗(3年)を交代。アクシデントがあったものの、前線で強さを見せる田上のポストプレーや川越のスルーパスから川野がPAへ侵入するなど、その後も仕掛けの回数を増やす。18分には金川の好パスを起点とした攻撃から、最後は川越が左足を振り抜いた。

 日南学園はこれをGK山口の好守で凌ぐと、20分には菊池がDF2人を剥がして持ち上がり、右足シュート。日南学園はスピードのある太田らが前線から相手にプレッシャーを掛けて攻撃の精度を狂わす。

 日南学園がやや勢いづく中、“日章学園の心臓”が一撃でその流れを食い止める。20分、PA手前で川越がタメを作り、前線へ上がってきた金川が左足を強振。これが左ポストを叩いてゴール内側へ跳ね返り、2-0となった。

 だが、日章学園は原啓太監督が「決勝の雰囲気じゃなかったですね。ハードワークしないのがちょっと残念だったですね」と指摘する戦い。2点リードで気が緩んでしまったか、強引に攻めてボールを失ったほか、球際での軽さや切り替えの遅さが出てしまう。

 川越が敵陣PAで再び相手のビルドアップを引っ掛けたり、金川が切り替え速くボールを奪いに行くシーンもあったが、強度でも、ボール保持でも日南学園を下回る時間帯があった。日南学園は菊池や田中が積極的にボールを引き出し、前向きな崩しにトライ。対人の強さを見せる日章学園の工藤や新穂の壁を破るまでは至らなかったが、内容面で渡り合っていた。

 日南学園は後半開始から前線の要である吉田に代え、FW岡田大和(2年)を投入。開始10秒で太田が右足シュートを放つと、2分には左クロスから中尾が決定的なヘディングシュートを放つ。日章学園は田上が連続で枠へシュートを放つがいずれもGK正面。一方、7分に松田をDF原口海翔(3年)へ入れ替えた日南学園は、11分にも相手のビルドアップのミスを突いた太田が左足でシュートを狙う。

 日南学園の清水美行監督は「(日章学園が)長いボールが多かったので、後半は一個前にして縦にロングボールを蹴らせないことをやったら、ちょっとウチの時間になりましたね」。日章学園は相手DFラインの背後を突く攻撃で決定機も作り出し、蔵屋がインターセプトから一気に右サイドを駆け上がるシーンもあったが、判断の悪いボールロストなど全体的にリズムの悪い時間帯が続いた。

 日章学園は15分に川野をMF石崎祥摩(3年)へ交代。一方の日南学園は菊池をDF夏山虎太(3年)へスイッチする。21分、日南学園MF那須が左サイドから放ったロングシュートを捉えるが、日章学園GK小林が何とかセーブ。前後半ともに「(宮崎県内で日章学園相手に)ああやってビルドアップしようというチームは少ないと思う。ウチはずっと練習してビルドアップをしてきた」(清水監督)という力を発揮した日南学園だが、1点奪うことができなかった。

「宮崎では絶対に負けられない」「圧倒して勝つ」のプライドを持って戦う日章学園は、貪欲に3点目を狙い続ける。前線を追い越してハイサイドを突く金川のクロスなどからチャンス。26分に田上をFW篠田星凪(2年)、29分には安藤をFW皆川春輝(2年)を入れ替えると、この2人がゴールを破る。

 29分、芝の左アーリークロスを中央で胸トラップした篠田が左足シュートをねじ込んで3-0。31分には、右サイドを抜け出した川越のグラウンダーのラストパスを皆川が右足ダイレクトでゴールへ押し込んだ。

 試合終盤、日章学園は石田とMF赤木心玖朗(3年)を交代。一方、MF荒巻匡佑(3年)、FW福島緋南太(1年)とピッチに送り出した日南学園も最後の1プレーまで得点を狙うが、日章学園が4-0で勝利した。

 この日は不満の内容となり、プリンスリーグ九州でも勝ちきれない試合が続いているものの、原監督は経験値のある3年生やポテンシャルの高い下級生など今年のチームについて、「去年と同等にやれる。個の能力は落ちるとは思わない」と評価する。この日はリードした後にハードワークを欠いた部分があっただけに、昨夏の全国3回戦で敗れた米子北高(鳥取)の強度、圧力を選手たちとも再び共有する考えだ。そして、指揮官は「シュートの割には点数が獲れていないので攻撃のクオリティをもう少し上げたい」と求めた。

 準決勝でも先制直後に追いつかれるなど、今回の予選は学びの大会に。工藤は「これから全国に向けて、もっとチームに発信して、より堅くて、タフなチームに変えていきたい。今大会、ノーシードということで早い段階で難しい試合も経験しましたし、圧倒して勝たないといけないという気持ちがあったんですけれども、内容も点数も数字も含めて圧倒してというのはあまりできなかったので、課題の方が残る大会になりました。でも、チームとしてもより団結力が増して、より成長できた大会になったと思うので、切り替えていきたいと思います」。目標は全国大会で上に行くこと。地力のある世代は自分たちのやるべきことを再確認し、全国で強豪校を上回るチームになる。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2022

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