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「試合中も『ヤバイ、ヤバイ』と」。悔しさ糧に進化した日章学園CB工藤珠凜主将が強い思いとともにリベンジの舞台へ

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日章学園高CB工藤珠凜主将は全国大会で存在感を示し、チームを勝たせることを誓う

[6.4 インターハイ宮崎県予選決勝 日章学園高 4-0 日南学園高 ひなた宮崎県総合運動公園サッカー場]

 結果は4-0。前半22分までに2得点を挙げ、後半には交代出場の2選手がゴールを加えるなど良い面も多かった日章学園高だが、CB工藤珠凜主将(3年=日章学園中出身)が味方に厳しい指摘をするシーンや、唇を噛むようなシーンも少なくなかった。細かな判断ミスが続き、初優勝を狙う日南学園高を勢いづける展開に。勝つことはできたが、意識面からレベルアップする必要性を痛感する試合になったようだ。

「この試合だけじゃなくて相手に合わせてやってしまったり……。もっと日章学園のプライドを持って、本当に県内は隙を作らずに大会を通じてシュートゼロ本くらいでやらないといけないので、そこらへんの気持ちが足りない。優勝すればOKとなっているので、もう一個基準をあげないといけない」

 工藤ら現3年生は日章学園中時代に全国中学校大会優勝。工藤は高校でも下級生時からレギュラーを務め、昨夏は全国16強を経験した。日章学園の一員としてのプライド、宮崎県内では圧倒的な差を示して勝つという思いは一際強い。だからこそ、厳しい言葉が口から出てきていた。

「キャプテンというのもあって、絶対に負けさせてはいけないというのがあって、相当な思いを持ってやってきた」と工藤。満足の行く内容ではなかったが、主将は最終ラインで高い強度の守りと的確なカバーリング、声でチームを鼓舞することを続けていた。

 まずはチームの勝利が一番。チームの団結力が高まったことも感じている。厳しい言葉を続けたが、優勝して再び全国を戦えることはもちろん、嬉しい。インターハイは中学時代に続く日本一を狙う大会であり、個人としての成長を示す大会でもある。

「自分としては去年の尚志戦(2回戦)、自分のところで全部やられて……。0-0だったんですけれども本当に何もできなくて、無力感を味わって、試合中も『ヤバイ、ヤバイ』と。どん底を味わったのは初めてでした」。尚志高のFW陣は背後を取る動きが巧み。自分の背後を狙われ、何度も突かれてしまった。

 その経験は糧に。「あの経験があったから、そのあとどんどん余裕を持ってやれるようになりました。(当時は)足下とかには強く行けていたんですけれども、裏への苦手意識があったので。でも、視野のところを含めて改善できているなと思います。去年は試合に出て守るだけ。失点しないようにと必死だったんですけども、今年は試合の中でも自分が存在感を出せる存在になれればなと思っています」。インターハイは注目CBにとって、アピールの大会でもある。

「去年からU-17の高校選抜があると聞いていて、選手権でアピールしたいなと思っていたんですけれども、(怪我で出場できずに予選敗退と)悔しい結果に終わって、まだ個人としては全然全国に名を売れていないですし、今年は自分が存在感を出すぞくらいの姿勢でやっていきたい」

 日章学園中まではFWやボランチが主戦場。高校進学後にCBへコンバートされた。1年時に怪我が重なり、半年以上プレーできなかったが、その期間に「相当やっています」というほどの肉体強化に取り組んだ。その成果もあって空中戦の強さや球際は自信のある武器。「自分の強さを活かしながらチームのみんなに勢い、安心感を与えられるようなCBになりたい」と語る工藤が、より日章学園全体の力を引き上げ、全国舞台でリベンジする。

(取材・文 吉田太郎)
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