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九州国際大付が夏の福岡初制覇!我慢強さ、礼儀も持って戦い、PK戦12-11の激闘制す!

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九州国際大付高が初優勝、2度目のインターハイへ

[6.5 インターハイ福岡県予選決勝 九州国際大付高 1-1(PK12-11)飯塚高 小郡市陸上競技場]

 九国大付が悲願の初優勝! 5日、令和4年度全国高校総体(インターハイ)「躍動の青い力 四国総体 2022」男子サッカー競技福岡県予選決勝が行われ、九州国際大付高飯塚高が対戦。九国大付が1-1で突入したPK戦を12-11で制して初優勝、13年以来2度目の全国大会出場を決めた。

 雨中の激闘。両校計26人がキッカーを務めたPK戦は、後攻・飯塚の13人目を九国大付GK與田和也(3年)が止めて決着がついた。ピッチ、スタンドのオレンジが歓声を上げながら一気に集まり、大きな輪を作る。就任4年目の江藤謙一監督の目は赤く染まっていた。

「嬉しいですね。生徒たちはいっぱい泣いていたし、俺も泣いてしまいましたけれども……、本当に弾き返されて来たので、『ありがとうございます』という言葉が聞けたのが良かったですね」(江藤監督)。九国大付は06、10年度に選手権、13年には2位で地元開催のインターハイに出場し、プリンスリーグ九州では上位に名を連ねてきた。江藤監督就任後も福岡突破、全国上位を狙えるような世代があったが、宿敵・東福岡高に阻まれるなど何度も流してきた悔し涙。その福岡の壁を乗り越えて勝ち取った初タイトルとインターハイ切符だ。

 現3年生は、知将・杉山公一前監督(現・福岡大若葉高監督)退任を知った上で進学を決意してきた最初の学年。彼らから胴上げされた江藤監督は、「それが分かった上で選んでくれた一期生で勝てたのが僕は格別に嬉しいというか……。分かって送ってくれた地元の方々に恩返しできたのが嬉しいですね」と感無量の表情で、CB米山凛主将(3年)は「江藤先生を胴上げできたのが一番嬉しいです」と微笑んでいた。

 九国大付はいずれも主力のMF藤井滉稀(2年)やMF濱中翔太(3年)、FW小林豪王(3年)を怪我で欠く苦しい陣容。中盤ダイヤモンド型の4-4-2システムのGKは與田、右SB椎山浬(3年)、CB米山、CB竹原慧(3年)、左SB高森皓英(3年)、中盤はアンカーが黒岩峻(3年)、右MF高瀬泰斗(3年)、左MF井谷和希(3年)、トップ下がエースMF濱田大夢(3年)、2トップは頴川楓(3年)とDF登録の井上陽斗(3年)が務めた。

 一方、飯塚は前回大会で初優勝を果たし、初の全国大会で全3試合無失点、16強入り。連覇を懸けた決勝の先発GKは東谷康平(3年)、右SB松島朝日(3年)、CB坂本海凪太(2年)、CB片山敬介主将(3年)、U-16日本代表候補の左SB藤井葉大(2年)、中盤はやや下がり目に構える秦翼(3年)と村井天(3年)が中央でコンビを組み、右SH向野蓮(3年)、左SH池田悠夢(3年)、前線には芳野凱斗(3年)と大園治慈(2年)が構えた。

 序盤、九国大付はFW起用した井上へ目掛けたロングボール中心の迫力ある攻撃。6分には右CKをファーで叩いた井上のヘッドがニアポストを直撃する。一方の飯塚は9分、左SB藤井が会場の雰囲気を一変させるような左足の弾丸ミドル。また、芳野のドリブルが止まらず、藤井は精度の高い左足クロスを連発していた。

 加えて、飯塚は片山と坂本をはじめ、各選手が球際強い九国大付を上回るような強度を発揮。雨中のデュエル勝負で強さを見せると、セカンドボールの多くを回収し、展開力に長けた村井や秦を軸にボールを動かして行った。前半半ばに布陣を4-2-3-1へシフトした九国大付は濱田がボールを収めてポイントになっていたものの、全体的にサポートが遅い。状況はなかなか好転せず、飯塚がより多くのチャンスを作っていた。

 19分、左中間でパスを受けた池田が中へ持ち出して右足シュート。左隅のコースを突いたが九国大付GK與田が好反応で阻止する。飯塚は29分にも藤井の左クロスを大園が合わせ、33分には左サイドでのインターセプトから一気に縦へ切れ込んだ池田のクロスがゴール前を横切る。

 飯塚は前半終了間際に負傷した池田に代えて後半開始からMF織田翔空(3年)を投入。後半も飯塚が優勢に試合を進める。一方、後半開始から4-3-2-1システムへ移行した九国大付は米山がタックルを決めたほか、各選手が相手のドリブルや崩しに食い下がるなど持ち味の我慢強さ、粘り強さで対抗する。

 江藤監督が杉山前監督からバトンを受け取った際、より攻撃的なスタイルを掲げた一方、「絶対に変えてはいけない」と継続したのが、伝統として築かれていた我慢強さや粘り強さの部分。米山は「練習から最後まで諦めないという、どんな状況でも最後までスライディングをしたり、身体を張るというのはやってきているので、粘り強い守備には自信がありますね」と語っていたが、なかなか結果が出なくてもチームの強みとしてきた武器が雨中の決勝でも大きな力になっていた。

 飯塚は8分に大園をFW原翔聖(2年)へスイッチ。九国大付も16分に前線で奮闘した井上を突破力のある長身FW山本悠太(3年)へ入れ替える。前半に比べて九国大付の好プレーが増え、押し返していたが、21分に飯塚が先制点を奪った。右中間でボールを受けた原がスルーパス。これで抜け出した織田がゴール前へスピードのあるクロスを上げると、「絶対にチームを勝たせるという意志があったので、飛び込むだけでした」という芳野が頭でゴールを破った。

 飯塚はスタンドから飛び出してきた控え部員と芳野らピッチの選手が歓喜を爆発。対する九国大付は23分、頴川に代えてCB大崎愛斗(3年)を加え、米山を前線へ上げてパワープレーへシフトした。すると、その3分後の26分、敵陣中央からややゴール寄りの位置で米山がFKを獲得。これをキッカーの濱田が右足で狙うと、壁をかすめたボールが右ポストを叩き、インゴールへ跳ね返る。

 エースのスーパーゴールに沸き立つ九国大付イレブン。この後、米山と大崎のポジションを入れ替えた九国大付は、31分に飯塚・村井の決定的な右足シュートをGK與田が再びファインセーブで阻止する。シュート数は4-11だったが、ここでも粘り強さを発揮した九国大付が延長戦へ持ち込んだ。

 飯塚は延長前半6分、向野に代えてFW見潮陽生(3年)をピッチへ。九国大付は同後半3分にFW安部勝汰(3年)を送り出す。延長戦は互いに前線までボールを運び、特に後半はオープンな展開となったが、決定打が生まれず。決着はPK戦へ委ねられた。

 ともに1人目から7人目まで成功。九国大付8人目のシュートがポストを叩いたが、直後の飯塚8人目のシュートもゴール左へ外れてしまう。その後、両校ともに12人目まで成功。そして、13人目に決着がついた。

 このPK戦、九国大付はキッカーを務めた各選手がボールを拾い上げ、飯塚の選手に手渡ししていた。「礼儀としてチームとしてやっていることなので、審判の方への礼儀とかそういうところはいつも意識してやっています」と米山。そして、「応援に応えたくて戦って勝てたことが嬉しいですし、全国大会でも九国の名を轟かせられるように頑張りたいです。自分たちは最初、個の力がないと言われていたけれど、全員で最後まで戦うメンタリティーで補えるようになってきているので、全国大会でも応援されるような戦いをして、どんどん上に進んでいきたいと思っています。九国に新しい歴史を残せるように精一杯頑張りたいです」と意気込んだ。

 九国大付の選手は、学校が位置する北九州市を中心に通学圏内の福岡県北部や、山口県下関市から進学してきている地元選手がほとんど。3年間でスケール感大きな選手に鍛え上げられている印象だ。県外選手の多い私学強豪に負けられないという意地もエネルギー。濱田は「チーム全員が一つになって倒してやろうとずっと思っていた」。その目標を達成して福岡制覇を果たした九国大付が、怪我人も復帰する予定の全国大会でその名を轟かせる。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2022

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