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プレミア勢の強さと意地。堅守・近大附に苦戦も、焦れずに90分間、PK戦で上回った履正社が全国へ

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PK戦勝利を喜ぶ履正社高の選手たち

[6.11 インターハイ大阪府予選準決勝 近大附高 0-0(PK3-5)履正社高]

 プレミアリーグで揉まれた履正社が全国進出――。令和4年度全国高校総体(インターハイ)「躍動の青い力 四国総体 2022」男子サッカー競技への出場権2枠を懸けた大阪府予選は11日、準決勝を行った。第1試合は履正社高が0-0で突入したPK戦の末、5-3で近大附高に勝利。16年以来、4回目のインターハイ出場を決めている。

 近大附は今年、プリンスリーグ関西2部で5勝1敗の暫定首位。今大会は同1部の大阪桐蔭高をPK戦の末に下すなど、13年以来となるインターハイ出場へあと1勝に迫っていた。3-5-2システムのGKは李源太(3年)、右から北嶋元勝(3年)、吉川啓介(3年)、鳥屋凛太郎(3年)の3バック、右WB若松大輔(2年)、左WB峯垣外光平(3年)、アンカーが橋本健丸(3年)、2シャドーが中島大静(3年)と松山祐輝(3年)、そして2トップを椿原詩温(3年)と太田悠太(3年)が務めた。

 一方、今年、プレミアリーグに復帰して広島ユース、G大阪ユースから白星を挙げている履正社は、「数的優位を中で作って相手を中に集約させてサイドというのを狙っていた」(平野直樹監督)という理由によって、代表決定戦で初めて “ゼロトップ”を採用。GKはジョン・カミィ・信バー(3年)、右SB東尾大空(3年)、CB平井佑亮(3年)、CB加藤日向(3年)、21年U-17代表左SB西坂斗和(3年)、中盤は徳山亮伍(3年)と小田村優希(3年)が“トップ下”のU-17高校選抜MF名願斗哉(3年)、川端元(3年)をサポート。ワイドFWとして右に古田和之介主将(3年)、左に張山拓夢(3年)が構えた。

 前半は履正社が抜群のキープ力を見せる名願や川端を上手く活用。4分には名願の展開から張山がカットインシュートを打ち込み、その後も名願がDFを強引に振り切ってゴールへ迫ろうとする。そして、左サイドで切れ味鋭い動きを見せる西坂がドリブル、ワンツーでPAへ。また、1タッチのパス交換で相手の足を止めるシーンや名願が奪い返しから左足シュートを放つシーンもあった。

 対する近大附は両WBが押し下げられながらも、13分に西坂のシュートをブロックするなど集中してゴールを守り続ける。中央からドリブルで仕掛けてくる名願に対しては複数の選手で行く手を阻むなど対応。相手のパスワークにファーストDFが外されても、連動して中を閉じ、入って来る相手に厳しくチェックする。履正社は攻撃のテンポがなかなか上がらず、消極的な攻撃になってしまう。

 近大附はボールを奪うと、前線の長身FW太田と鋭い動きを見せる椿原、またオープンスペースへ。幾度か速攻へ持ち込むと、椿原が個でボールを収め、敵陣深くまで切れ込んで見せる。加えて、ロングスローなどのセットプレーで先制点を目指した。だが、履正社は192cmCB平井が抜群の高さを発揮。GKジョンも安定した動きを続けて得点を許さない。

 ボールを保持して攻め続ける履正社は後半6分、右の古田が縦突破してクロス。これを後半開始から投入されたMF中村成那(2年)が右足で狙うがクロスバーをヒットする。10分には立て続けのCK、ロングスローで相手にプレッシャーをかけるが、近大附は粘り強い。

 一方の近大附は、14分に若松をDF松本悠聖(3年)と入れ替える。山田稔監督は「チームのバランスが上手くいかなかったので、(若松の)ロングスローもあったんですけれども、早めに松本を入れて安定させました」と説明する。後半、1ボランチから2ボランチへ変更した近大附は、その変化と選手交代によって守備のバランスを向上。バイタルエリアのスペースを埋め、履正社のビルドアップをより停滞させることに成功する。

 そして、後半も椿原が奮闘。1人でCKを取り切るなどチームを前進させていた。17分には吉川が右足ミドルにチャレンジし、18分には右CKをファーの北嶋が折り返してチャンスも。履正社は中盤、前線の配置を変えながら攻め続けるものの、負傷した名願のドリブルが減ったこともあってか、攻撃をスピードアップすることができない。ボールを繋いでクロスまで持ち込むも、吉川らに跳ね返されてしまう

 履正社の平野監督は「マイボールになってから素早く攻撃できれば良かった。相手に戻るような時間を与えるような繋ぎしかできなかった。何のためにボールを動かしているのか。ゴールのためにパスしているのに、パスのためにパスをしている。そこが非常に不満。ミスすること、トライすることを怖がっているのか」と首を傾げる。一方、狙い通りに試合を進める近大附は、22分にFW谷口皓(3年)、28分にはMF高下麻実(2年)を投入。履正社は終了間際に連続攻撃から東尾が右足を振り抜くも枠を外れ、0-0のまま延長戦へ突入した。

 近大附は延長戦開始からDF前田義春(2年)をピッチへ。交代組が強みを表現する近大附は、4分に椿原が獲得した右FKから前田が枠へ左足シュートを打ち込む。履正社は8分に投入されたMF中鉢大翔(2年)が前への意識を高めるが、延長戦は我慢強い守りから鋭い仕掛けでセットプレーを獲得していた近大附の流れ。同後半2分には、前田の左ロングスローのこぼれを松本が左足の強シュートで狙った。

 この後、履正社はCB石塚蒼空(2年)、近大附はMF廣谷郁海(2年)を加えたが、スコアは動かず、PK戦決着となった。PK戦は近大附の3人目のシュートがわずかに左へ外れたのに対し、履正社は古田から名願、東尾、小田村と成功し、最後は西坂が左足で決めて5-3。全国切符獲得を喜んだ。

 苦しい戦いとなった履正社だが、相手の高い強度に対抗しながら、焦れずに戦い続けてPK戦で勝利。名願は「高校年代トップの(プレミア)リーグでやらせてもらっているので、そこは意地を見せないといけないなと思っていたので良かったです」と語る。

 プレミアリーグの経験はやはり、大きいようだ。古田は「守備の部分で今シーズン無失点の試合がなかった中で、無失点で終えることができたことは良かった。プレミアリーグの方が全国レベルのチームと毎週できるということでレベルも高いですし、その中で試合をさせてもらっている分、レベルの高い強度の試合に慣れているというのがあったと思います」。攻めあぐねた試合ではあったが、プレミアリーグのスピード、強度で揉まれてきたチームは最後まで隙を見せず、延長戦を含めた90分間、PK戦で相手を上回った。

 上位進出が期待される全国大会では、得点を取り切る部分により注力する。平野監督は「プレミアリーグでやらせてもらっているので力がない訳では無い。ゴールを目指しながらのパス&ゴー、パス&サポートということをやっていかないと。もっとゴールを目指していきたい」と語った。

まずは12日の決勝(対関西大北陽高)で勝って、大阪第1代表の座を掴むこと。古田は「他府県ではプレミアリーグのチームが負けている。全国への切符をとりあえず掴めたのは収穫。大阪一獲って絶対に行きたい。日本一を目指して、もちろん獲りに行きたい」と意気込み、名願は「練習から日本一の取り組みをしてという話をしているので、そこは自分たちの努力でできることだと思うので、日本一の取り組みをして日本一を獲りたいと思います」と力を込めた。高校年代最高峰のリーグ戦で経験を重ねながら質の高い攻撃や打開力、強度も見せている今年、過去最高の全国8強を超えて日本一を目指す。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2022

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