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[MOM3911]矢板中央DF木村匠汰(3年)_“全国No.1?"。会場ざわつかせた大型左SBの2つの武器

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矢板中央高の長身左SB木村匠汰は後半34分に頭でゴールも

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[6.14 インターハイ栃木県予選準決勝 矢板中央高 3-0 さくら清修高 栃木グ]

 課題もあるが、強力な2つの武器で存在感を示している。矢板中央高のDF木村匠汰(3年=クマガヤSC出身)は182cmの大型左SB。この日は課題だったヘッドでチーム3点目を挙げた一方、左足キックとロングスローで会場をざわつかせていた。

 立ち上がりから「遠心力で、体全体でやっているので。本気で投げれば(ライナーで)ファーポストに届く」というロングスローを連発。ボールは低弾道でゴールエリアへ届いていた。対戦したさくら清修高の齋藤竜偉監督も「練習や県リーグでは経験できないです。プリンスリーグのチームでもあれで失点している」と舌を巻くレベル。後半10分の2点目は彼のロングスローが相手のミスを誘って生まれたゴールだった。

 肩甲骨と腰を意識し、両手首を返すところまでしなやかなフォーム。投じられたボールは伸びるようにゴール前へと向かっていく。他のロングスロワーとは一線を画す球筋。本人も“全国No.1”の「自信があります」というロングスローが相手を苦しめ続け、ゴールをもたらした。

 また木村は左足キックも特長だ。これも低弾道で逆サイドの選手へ届く対角のロングボールは、チームの戦術に組み込まれている。「元々キックが得意であと自分は柔軟性があるので、質の良いボールは蹴れます」と木村。柔らかいクロスでもチャンスを演出し、ロングシュートも打ち込んでいた左SBは、試合終盤に左足ダイレクトで素晴らしい軌道のロングパスを通し、周囲から「ヤバい」という声も上っていた。

 金子文三コーチは「彼のキックは棒で叩くような形ではなく、しなりのきいたムチなんですよ。むちゃくちゃしなやかなキックをします」と説明する。大振りするのではなく、コンパクトな振りから、インパクトの瞬間に力を入れている形。本人が「ちょっと体勢斜めにして、上から下に叩くみたな。そうすれば低弾道で行く」というキックは、より精度が上がったことで試合を通して相手の脅威になっていた。

 木村は1年時から名門・矢板中央のAチームに帯同。だが、メンタル的な弱さがあって、なかなかトレーニングで力を発揮することができなかった。それでも、「今年は自分ラストなんで、そこに懸ける思いが違います」と木村。高橋健二監督や金子コーチから求められてきた精神的なタフさやコーチングから変化し、ピッチでよりチームに貢献できるようになってきている。

 スケール感は大きいだけに、対人守備やヘディングなど課題を改善していけば、楽しみな存在。木村は「自分の武器をどんどん出したい。ロングボールとあとは守備極めて自分のところで完結できちゃう、そんな選手になりたい」。まずは「絶対に勝ちたいです」という決勝で勝利し、全国大会でその武器を見せつける。


(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2022

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