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明秀日立が4-1で茨城決勝進出。関東大会優勝を経て、向き合う2つの課題

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後半40+2分、明秀日立高MF長瀬瑠伊が左足ミドルを決めて4-1

[6.15 インターハイ茨城県予選準決勝 東洋大牛久高 1-4 明秀日立高 ひたちなか市総合運動公園陸上競技場]

 15日、令和4年度全国高校総体(インターハイ) 「躍動の青い力 四国総体 2022」男子サッカー競技茨城県予選準決勝が行われ、明秀日立高東洋大牛久高に4-1で快勝。明秀日立は18年以来の全国大会出場を懸けて19日の決勝で鹿島学園高と戦う。

 明秀日立は5月末の関東大会で日体大柏高(千葉)、山梨学院高(山梨)、桐光学園高(神奈川)と全国クラスの強豪3校を破り、初優勝。関東大会で勝って生まれた新たな課題にトライしながら、また1ランク上のチームに変わろうとしている。

 4-4-2システムの先発はGKが山谷将斗(3年)で、右SB藍原琉星(3年)、CB若田部礼(2年)、CB秋葉洸星(3年)、左SB本橋雅人(3年)。中盤は青木涼真(3年)と村田楓太主将(3年)のダブルボランチ、右SH森絢弥(3年)、左SH阿部亮介(3年)、前線は熊崎瑛太(2年)と石橋鞘(2年)が2トップを組んだ。

 一方の東洋大牛久は関東大会予選で決勝進出。延長戦の末、明秀日立に敗れたが、関東大会初出場を果たした。サッカー部の推薦枠がなく、「サッカーが好きで集まった集団」(丸山和男監督)というが、この日も茨城を代表する強豪校に食い下がって見せた。

 4-1-2-3システムのGKは野澤桧友(2年)で右SB染谷翔太(2年)、CB須田哲平(2年)、CB尾崎虎将(2年)、左SB上内悠暉(3年)。中盤の底に主将の佐野晴(3年)が入り、白沢大騎(3年)と佐藤悠也(2年)が2シャドー。そして、右から沼尻泰輝(3年)、植田澪(3年)、成島拓己(2年)の3トップでリベンジマッチに臨んだ。

 試合は前半1分に早くも動いた。「昨日の練習で萬場(努)監督からも言われて、勢いがない、自分たちの強さをもっと出していかないと、ということを気づかせてもらった」(村田)という明秀日立が立ち上がりからプッシュ。石橋の斜めのラストパスで抜け出した森が右足シュートを決めてリードを奪った。

 明秀日立はともに突破力秀でた左の本橋、右の藍原の両SBの攻撃参加を交えた攻撃などから前半だけでシュート9本。25分に村田の左CKから石橋がそらす形のヘディングシュートを決めて2-0としたものの、決定機を幾度も逸してしまい、ややミスも増えてしまっていた。

 だが、そのミスはトライしてのミス。萬場努監督が関東大会優勝を経て、感じたことが「(ミスに付け入るだけでなく)自分たちのアタックができないと(全国区の強豪に)勝っていけない」「純粋に攻撃力をつけたい」ということだ。高い位置で、動いている選手の足下へピタリとパスをつけて、DFを置き去りにすることなどにチャレンジ。堅守やフィジカル面を強みとする明秀日立だが、強豪の守りを破る力がなければ全国レベルの強豪に勝ち続けることはできない。

 関東大会制覇から、さらに上のステージへ向かうためのチャレンジ。細かい技術や決定力不足で出来具合は「4割くらい」(萬場監督)というが、意図してフィニッシュまで行くシーンが増加していることは確かだ。

 だが、関東大会優勝後に出ているもう一つの課題が、前半で試合を決定づけられず、相手の反撃を許すことに繋がった。東洋大牛久は徹底して下でボールを動かし、植田のキープ力や成島の突破力を活かしてゴールへ迫る。また、左クロスを植田が頭で合わせるシーンもあった。

 ハーフタイムには沼尻とFW岡田尭久(3年)を交代。セカンドボールを回収する佐野、白沢を中心にボールを繋ぐなど、前半よりもビルドアップにチャンレンジしていた。明秀日立は後半、攻守両面で一段階上のプレーを見せる村田が奪い返しからのシュートでゴールを脅かしたが、決め切ることができない。

 明秀日立は13分にMF長瀬瑠伊(3年)、17分にはFW根岸隼(2年)、25分にはDF山賀颯太郎(3年)を投入し、東洋大牛久も18分に小柄な技巧派MF鈴木大晴(2年)をピッチへ送り出す。明秀日立は、ボールを繋いで前進しようとする東洋大牛久の攻撃を高さと的確なカバーリングを見せる秋葉や回収力高い青木中心に阻止。そして、ギリギリのスルーパスを狙う村田や、1タッチパスでテンポを変える石橋、泥臭く前進する熊崎らが中央、サイドから攻め続ける。

 だが、諦めずに戦う東洋大牛久は食らいつき、2点差を維持。迎えた28分、右スローインからボールを繋いで鈴木がクロスを上げる。マークを外して走り込んだ成島のヘッドがゴールを破った。東洋大牛久は選手とコーチ陣が意見交換し、今年の選手たちに合ったシステムを見出して3トップを採用。見事なサイド攻撃で1点を奪い返して見せた。

 ゴールを決めた成島がボールを抱えたままセンターサークルへ。試合が再開されると、選手たちは気持ちの込もった攻守で同点を目指した。だが、FW吉田裕哉(2年)を投入した明秀日立はオープンな展開になる中で地力を発揮する。

 35分、右サイドで長瀬からのパスを受けた吉田が縦へのスルーパス。抜け出した長瀬がクロスを上げると、中央の根岸が豪快なヘッドでゴールを破る。交代出場3人衆によるゴールで3-1とすると、右SB須田遙斗(3年)投入後の40+2分にも吉田のパスを受けた長瀬がGKの頭上を破る左足のゴラッソで4点目。東洋大牛久の丸山監督に「後半、相手の足が止まった時にちょっと(狙いとする)サッカーをすることができました。でも、最後10分のギアが(明秀日立とは)違うなと思いましたね」と印象付ける終盤の強さによって、明秀日立が決勝へ駒を進めた。

 明秀日立の萬場監督はこだわりを欠いて突き放せず、失点もした戦いを厳しく指摘する。「関東大会勝って、良い思いをしたと思うんですよ。謙虚さやああいうもの(1つのチャンス)をひたむきに入れていかないと。まだまだ高校生として未熟なところが出ていると思いますね」。関東大会優勝は力が無いと言われていた世代が、練習、挑戦を重ねて獲得したものだった。

 村田は「(関東大会優勝で、)自信はついたけれど慢心にならないようにしようと言っているんですけれども、こういう失点だったり、点のところでこだわれなかったりというのがある。決勝へ向けて良い準備を続けて、勝って全国大会に出たい」。昨年の決勝で鹿島学園に0-2から逆転負けしたこともエネルギー。この日の戦いを糧に挑戦者として王者に挑み、必ず全国切符を勝ち取る。
 
(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2022

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