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高まった呼応する力、仲間への強い思いも力に。日大藤沢が全国準V以来のインハイ切符獲得!

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前半25分、日大藤沢高は追加点を挙げたMF仲川颯一(右)とともにゴールを演出したFW森重陽介(中央)、MF岡西亜憐が喜ぶ

[6.18 インターハイ神奈川県予選準決勝 日大藤沢高 2-1 川崎市立橘高]

 日大藤沢が高まった呼応する力、仲間への強い思いも力に、全国へ――。令和4年度全国高校総体(インターハイ)「躍動の青い力 四国総体 2022」男子サッカー競技への出場権2枠を懸けた神奈川県予選は18日、準決勝を行った。第2試合は、日大藤沢高が2-1で川崎市立橘高に勝利。4大会ぶり9回目となるインターハイ出場を決めている。

 日大藤沢は17年のインターハイで初の全国大会決勝進出、準優勝。それ以来となる予選突破を懸けた一戦だ。4-2-3-1システムのGKは岡本亜鶴主将(3年)で右SB片岡大慈(2年)、U-17代表候補歴を持つCBアッパ勇輝(3年)、CB宮崎達也(2年)、左SB尾野優日(2年)、中盤は野澤勇飛(3年)と宗次柊磨(3年)のダブルボランチでトップ下が安場壮志朗(2年)、右SH岡西亜憐(3年)、左SH仲川颯一(3年)、そしてJ注目の198cmFW森重陽介(3年)が1トップに入った。

 一方、14年にU-16神奈川県選抜を国体日本一へ導いた山本義弘監督率いる市立橘は、準々決勝で19年日本一の桐光学園高をPK戦の末に撃破。公立校で唯一の4強入りを果たし、初の全国大会出場へあと1勝としていた。DF戸塚公陽主将(3年)ら主軸数人を欠く中での代表決定戦。4-3-3のGKは田中慶紀(3年)、右SB菅原蒼生(3年)、CB蔦本巧(3年)、CB伊藤遼祐(3年)、左SB菊池応次朗(2年)、1ボランチが早川旬(2年)で2シャドーが菊地幹太(2年)と臼井海斗(2年)、右から田中優太郎(2年)、板倉幹汰(2年)、高村桜輝(3年)の3人が3トップに構えた。

 出足よく試合に入ったのは日大藤沢の方だった。ボールを繋ぎ、サイドへの展開を交えながらの攻撃。丁寧なビルドアップを特長とする市立橘よりも、ポゼッションする時間を増やしていた。

 互いに強みの一つとしているセットプレーによってスコアが動く。市立橘は11分、早川知伸氏(横浜FCヘッドコーチ)を父に持つ早川の左足CKから、ニアの伊藤がすらす形でヘッド。だが、これはDFに阻まれた。一方の日大藤沢は17分、注目レフティーの宮崎の右CKがニアへ。最後はゴールエリアでコントロールした安場が、角度のない位置からGKの脇を突く右足シュートで先制点を挙げた。

 市立橘は早川を軸にボールを動かし、高村がタメを作るなど押し返す。そして、ロングスローも交えて反撃。飲水タイムでシステムを変えて守りも安定させていた。だが25分、日大藤沢がカウンターから2点目を奪う。ハーフウェーライン付近で森重が相手DFからインターセプト。右前方のスペースへスルーパスを送る。快足を活かして走り込んだ岡西が相手のチェックを強引に剥がして前進。そして、ラストパスを仲川が右足ダイレクトで流し込み、2-0とした。

 佐藤輝勝監督が「歴代でもこの子たち剥がす崩すをずっとやってきているし、それはウチの良さなんですけれども、それだけじゃないよねと。良い守備から良い攻撃を生み出す、そうじゃないとトーナメント勝てないよねとみんなが分かって。きょうの森重もそうですけれども、全員がハードワークできるチームになったのが、あの良い守備からの攻撃」と讃えたプレーで大きな大きな2点目が入った。

 後半開始からFW吉岡那都輝(3年)と右SB森元寿(1年)を投入した市立橘も長短のパスでハイサイドへ運び、そこからの崩しにチャレンジ。2分には高村の右足シュートが右ポストをかすめる。

 いずれも推進力のある高村と板倉に、鋭い動きを連発する吉岡が加わり、反撃を加速。だが、山本義弘監督は「(ハイサイドまで運んで)そのあと厚みが出なかったですね。(相手の低いDFラインに対し)もっと潜り込んでやらないといけない」と指摘する。タイミングを合わせて背後を取ろうとしていたが、日大藤沢の両CB、アッパ、宮崎も競り合いが強く、なかなか最後の質を高めることができなかった。

 日大藤沢は関東大会で腓骨骨折した右SB植田海音(3年)のためにも全国へ、という思いを各選手が表現していた。198cmFW森重は余裕のあるボールキープに加え、これまで以上とも言えるハードワーク。仲間への特別な思いが背中を後押ししていたようだ。

「自分は(植田と)3年間同じクラスで仲も良くて、海音がピッチに立てないというのは悔しいというかキツかったです。全国出るのは自分のためでもあり、仲間の海音のためというのが自分の中では大きくて、それもあって自分も走れました。キツいなと思った時はスタンドの海音とか見てまた頑張ろうと思ったりしたので、海音のために全国出るというのがチームとしても大きかったと思います」

 中盤でセカンドボールの回収やボール奪取の部分で奮闘していた野澤や宗次ら各選手が献身的な守備。攻撃の質の上がらない時間帯も続いていたが、終盤には岡西や野澤の強烈な右足シュートがゴールを襲う。

 日大藤沢は26分にMF岡田生都(2年)、31分にFW関田向陽(3年)を投入。市立橘も29分にCB永山青空(2年)、32分には右SB湯田颯(3年)、37分にはFW常盤俊太(3年)を送り出し、伊藤を前線へ上げる形で前にパワーを加えた。

 日大藤沢は39分、関口とのワンツーで岡西が抜け出し、GKをかわして左足シュート。市立橘DFの必死のカバーに対し、日大藤沢はこぼれ球を狙った森重の左足シュートもクロスバーを叩いてしまう。直後に森重とFW有竹翔吾(3年)を交代した日大藤沢から市立橘が待望の1点を奪う。39分、板倉の落としから高村が右足シュートを叩き込んで1点差。アディショナルタイムにセットプレーなどからもう1チャンスを作り出そうとしたが、FW諸墨清平(3年)を加えた日大藤沢が逃げ切り、全国切符を獲得した。

 日大藤沢は今年、掛け合う言葉の質、要求が高まったのだという。褒め合うところから厳しく求め合うチームへ。「ウチは呼応と言っているんですけれども、呼応するレベルが高くなった」という佐藤監督は、その日常が「(準決勝で)チャンスを決め切る力になった」と考えている。競争力の高さも強みに全国大会では神奈川県代表の責任を果たす。

「目標は日本一というのは変えていないですけれども、神奈川の代表としても魅力的なサッカーをするというのが宿命だと思うので。(魅力的なチームの多い)神奈川の代表として優勝できるように頑張りたい」と指揮官は語り、エースの森重も「チーム全員が一つになって(開催地の)徳島で全国獲りたいと思います」と宣言した。まずはトレーニングでより呼応し合ってレベルアップすること。そして、出られない仲間の思いも背負って全国大会のピッチに立ち、最後まで戦い抜いて目標を達成する。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2022

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