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[MOM3923]市立船橋DF藤田大登(3年)_「増嶋効果」を体現、攻守で全国切符獲得に貢献

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チーム2点目を奪った市立船橋高DF藤田大登(3年)が歓喜の疾走

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[6.19 インターハイ千葉予選決勝 市立船橋高 3-2(延長) 日体大柏高]

 市立船橋高が3大会ぶりのインターハイ全国切符を勝ち取った千葉県決勝戦は、ハイボールとセットプレーが鍵だった。波多秀吾監督が「日体大柏さんの前線の迫力に対して、うちのディフェンスライン。どちらが粘れるかだと考えていた」と話した一戦。市立船橋の守備陣では、日体大柏の190センチの長身FWオウイエ・ウイリアム(3年)をどう抑え込むかが一つのポイントだった。

 DF藤田大登(3年)は「増嶋(竜也)さんを含めてコーチと色々と話をして、1人では勝てない分、2人、3人と数で対応しようと対策を練っていた。セットプレーで何回かやられたけど、それ以外は起点を作られることはなかった」と明かした。周囲の選手と連係してオウイエを挟み込んで自由を奪い、約10センチ大きい相手に制空権を握らせなかった。

 しかし、すべての場面で封じ込むのは難しい。1-1の同点で迎えた後半の11分にCKからオウイエにヘディングシュートを決められ、逆転を許した。拮抗した試合の流れが相手に傾きかけたが、藤田がすぐさま流れを引き戻した。3分後、MF北川礁(3年)が左足で蹴った左CKを、相手の狭間に入り込んだ藤田が豪快なヘディングで合わせて、すぐさま同点。やられたら、やり返すとでも言わんばかりの一撃を見舞った。

 セットプレーと言えば、市立船橋の伝家の宝刀だが、今季はひと際磨きをかけているという。藤田は「今年に入って増嶋さんが教えてくれるようになってから、セットプレーはすごく力を入れていて、守備も攻撃も毎週、練習をして、自信を持ってできていたので、それが身になった。攻撃面では、ブロックの入り方など色々と教えてもらっていて、詳しくは企業秘密ですけど(笑)、あの場面でも生きました。練習通りに入って行けました」と話し、笑顔を見せた。

 増嶋コーチは、東京、柏レイソル、ジェフ千葉などで長く活躍を続けた元プロ選手。インターハイや全日本ユースなどの全国大会で優勝した市立船橋のOBでもある。昨季から母校の指導を手伝い、今季から試合でもベンチ入り。主にセットプレーを担当している。「守備面で苦手だったマークの付き方なども、教えてもらって改善できている部分がある」と話した藤田は、味方との連係も含めて、攻守両面で「増嶋効果」を体現した。

 藤田は、180センチほどのサイズはあるが、際立った身体能力を示すタイプではない。頭角を現したのは、今シーズンに入ってからだが、経験を積んでたくましさを身につけている。センターバックを組むDF懸樋開(3年)は、170センチ弱と小柄だ。空中戦を含めて競り合いでは、大きな責務を担い「自分が引っ張っていって、市立船橋の守備を支えなければいけないという責任がある」と覚悟を持って守備にあたっている。目指す先には、身体能力がずば抜けていなくても名門を引っ張ってくれた先輩の姿がある。「1年の時に、石田侑資さん(鳥取)がいた。同じチームにいるだけで気持ちも楽になるような存在だった。自分も後輩からそう思われるようなセンターバックになりたい」と絶対的な信頼感のあるストッパーへの成長を思い描いている。

 藤田の得点で追いついた市立船橋は、延長後半に藤田とセンターバックを組む懸樋がFKの流れから決勝点を決めて、3-2で勝利。長身FWに立ち向かった守備陣がセットプレーの機会を生かし、2点を奪って勝ち切った。過去最多9度の優勝記録を持つ市立船橋の目標は、日本一しかない。守備の大黒柱を目指す藤田は「やっぱり、自分たちの目標は、日本一。千葉県を優勝するのも目標ではあったけど、通過点。これから、またプレミアリーグも始まる。(1勝2分4敗で降格圏の11位と)下位に沈んでいるので、ここから1つ、2つとギアを上げて、全国で優勝できるようにしたい」と次の舞台に臨む意気込みを示した。

(取材・文 平野貴也)
●【特設】高校総体2022

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