beacon

攻撃力に加えて粘り強さ、勝負強さも強みに。昌平が18年以来のインターハイへ

このエントリーをはてなブックマークに追加

昌平高が18年以来となるインターハイへ

[6.19 インターハイ埼玉県予選決勝 昌平高 2-1 成徳深谷高 NACK]

 令和4年度全国高校総体(インターハイ)「躍動の青い力 四国総体 2022」男子サッカー競技埼玉県予選は19日に決勝を行い、昌平高が3大会ぶり4回目の全国大会出場を決めた。昌平は決勝で初優勝を狙う成徳深谷高と対戦。前半にU-17日本高校選抜MF篠田翼(3年)とFW平叶大(2年)が決め、2-1で競り勝った。

 距離感良くボールを動かすことやアタッカー陣の個人技といった昌平の特長とされる部分よりも、粘り強さ、勝ち切る強さが光る決勝戦だった。U-17日本高校選抜CB津久井佳祐主将(3年)が「後ろが守り切る、粘り切るのは今年の良さなのかなと思います。今年、まだ公式戦負けていないので自信になっています」と評した今年の強み。藤島崇之監督は「しっかりと粘り強くやるところなどを表現してくれたので結果に繋がったと思います。上手く行かない中でも勝つというところの大切さもありますし、次のステージでしっかりチャレンジできることはすごく大切なこと」と頷いた。

 今季、プリンスリーグ関東1部で3勝2分の暫定首位。ともにU-17日本代表のCB石川穂高(2年)とFW小田晄平(2年)らが怪我で不在の昌平は4-2-3-1システムを組んだ。GKが上林真斗(3年)、右SB上原悠都(1年)、CB津久井、CB今井大翔(3年)、左SB武村圭悟(3年)、中盤中央に佐藤海空斗(3年)と土谷飛雅(2年)、右SHがU-19日本代表候補MF荒井悠汰(3年、FC東京内定)、トップ下が篠田、左SH佐々木小太朗(3年)、1トップを初先発の平が務めた。

 一方の成徳深谷は準々決勝で前回王者の正智深谷高、準決勝でプリンスリーグ関東1部の西武台高を破って初の決勝進出。代表決定戦は埼玉県代表が2枠だった18年以来の挑戦だ。4-4-2のGKが木村航大主将(3年)、右SB辻本晴也(3年)、CB小久保伊吹暉(2年)、CB増子颯竜(3年)、左SB鈴木嵐(2年)、中盤の底に高橋流(3年)が構え、右MF松田陽瑠(3年)、左MF安野心富(3年)、トップ下が和光翔夢(3年)、そして2トップに平井心瑛(2年)と秋本光瑛(2年)が入った。

 前半、成徳深谷の為谷洋介監督は「入りのところからバタバタしすぎて、昌平さんをリスペクトしすぎているのか、観客とかスタジアムの雰囲気に飲まれてしまっているのか、出足が遅い、上手く踏み込めないのか、そのようなことが感じられて……」と振り返る。

 出足が重くなってしまった成徳深谷に対し、個々の技術力高い昌平はアタッキングサードまでボールを運ぶと、注目の荒井や篠田、佐々木がドリブルで局面を打開し、佐藤がミドルシュートを狙う。また、守備面では成徳深谷の得意とするロングスローを出させないように、ピッチの内側へのクリアを意識。成徳深谷も相手のドリブルに対してチャレンジ&カバーを徹底し、ゴール前に入ってくるボールを確実にクリアしていく。加えて、増子が抜群の高さを発揮。15分には鈴木が左ロングスローをファーまで飛ばし、こぼれ球を秋本が狙う。

 だが、昌平が先制点を奪うことに成功する。18分、左中間から篠田が強引にドリブルで持ち込むと、ペナルティーアークやや外側から荒井が仕掛けて左足シュート。このこぼれ球に素早く反応した篠田が、前へ持ち出してスライディングしながら右足を振り抜く。渾身の一撃がゴールを破り、1-0となった。

 ベンチも大喜びの昌平は畳み掛けようとするが、成徳深谷も安野が荒井の仕掛けを強烈なタックルで止めるなど士気を落とさずに対抗する。そして、セカンドボールを拾う形で前に出て松田や秋本が鋭いドリブル。昌平は30分、土谷のサイドチェンジから右の荒井がドリブルシュートを放ち、34分には津久井の縦パスから荒井が正確なマイナスパスをゴール前の佐々木へ通す。

 成徳深谷も直後に秋本が相手DFと入れ替わってゴールへ迫り、あわやのシーンを作る。拮抗した時間帯が続く中、昌平が相手のわずかなミスを逃さずに2点目を挙げた。40+3分、昌平は土谷がロビング気味のボールを前線へ配給。成徳深谷DF2人が対応していたが、動きが重なり、クリアすることができない。不利な状況にも諦めずにボールを追い、PAで奪った平が右足シュート。初先発の平が結果を残し、2-0とした。

 成徳深谷の為谷監督はハーフタイム、選手たちに「全然やれているのに、戦えていないよ」と指摘。互いに長いボールが増える中、成徳深谷はセカンドボールの回収が良くできていたほか、荒井の仕掛けを2人がかりで止めるなどV候補に対抗する力を見せていた。縦に速い攻撃にも怖さがあったが、気持ちの部分で後手に。だが、指揮官の檄もあって前向きになって迎えた後半、成徳深谷が1点を奪い返す。

 9分、成徳深谷はゴール前で前へ出ようとした秋本、平井が昌平DFに阻まれるも、残したボールを和光が右足でゴールへ流し込む。30分以上を残して1点差とし、湧き上がる選手たちとスタンド。11分にはFKで増子が競り勝ち、辻本が飛び込むなどロングスローやFKなどから同点を目指した。

 21分には左ロングスローのこぼれに高橋が反応して右足シュート。だが、昌平は平がブロックする。直後に成徳深谷は鈴木と秋本に代えてDF尾澤大成(3年)とFW佐藤奏琉(3年)を投入。昌平も平とこの日は切り札役を担ったMF長準喜(2年)を入れ替えて追加点を狙う。

 1点を追う成徳深谷はPAへボールを入れるものの、昌平はともに競り合いの強さを見せ続けた津久井と今井中心に強固な守り。成徳深谷は31分に和光をMF上野大地(3年)、39分には辻本をDF山田春斗(3年)へ入れ替えて反撃を続けたが、終盤へ向けて安定感と集中力の高さを発揮した昌平が昨年無冠の悔しさを晴らすタイトル奪取と全国切符獲得を果たした。

 昌平は今季、プリンスリーグ関東の鹿島学園高(茨城)戦で立ち上がりに退場者を出して0-2とされながらも終盤に追い付いてドロー。リーグ戦ではここまで3失点(5試合)の堅守で、インターハイ予選は2度の1-0勝利を含め、1点差ゲームをしぶとくモノにしている。一発勝負のトーナメント戦で早期敗退するなど勝負弱さのあった昨年からの変化。津久井は「去年、自分は経験して、今年変えようと思っていた。表現できるようになってきて良かったです」と頷く。

 また、この日は守り方の上手い成徳深谷に対し、無理に繋ぐのではなく、選手たちが判断しながらロングボールを多用。荒井や長らのテクニックで勝負するだけでなく、状況に応じた戦いをする力もある。「今年、個の打開力は楽しみな選手もいる」という藤島監督は、「ボールを動かしながらとかしっかり主導権を取るということは、より強調しながらしても良いかなと」と強みもより強化していく考えだ。

 インターハイは初出場した16年大会で3連覇を狙った東福岡高(福岡)や静岡学園高(静岡)を破って3位。18年大会では同年度の選手権覇者・青森山田高(青森)や大津高(熊本)を破って再び3位に入っている。悔しい敗戦も経験しながらチームは進化。その昌平が「今年の良さをしっかりと出して上まで」(津久井)を実現し、初の決勝進出、日本一を果たす。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2022

TOP