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意識高く勝利目指す帝京が10年以来となる夏の東京王者。今年度、左胸の星の数を9から「11個に」

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名門・帝京高が東京1位でインターハイへ

[6.19 インターハイ東京都予選決勝 関東一高 0-1 帝京高]

 令和4年度全国高校総体(インターハイ)「躍動の青い力 四国総体 2022」男子サッカー競技東京都予選は19日、関東一高帝京高の決勝を行った。東京都の全国大会出場枠は2で、ともに準決勝を勝利した時点で全国切符を獲得済み。東京王者の座を懸けた決勝は帝京が1-0で制し、10年大会以来の優勝を飾っている。

 東京1位の座は互いに譲れないところ。ただし、ともに全国切符を懸けた激闘を前日に終えたばかりで、翌週にはプリンスリーグ関東の試合が控えている。帝京の日比威監督が「(チャンスを得た選手たちには)オマエらにとってアピールのチャンスだからやれるだけやれ、と言って送り出しました」と語り、関東一の小野貴裕監督も「お互いにここから個性が出て来てくれ、というところだったと思います」と説明したように、ともに全国大会へ向けて新戦力の発掘などを狙ったメンバー構成。より力と、優勝への意欲を示した帝京が頂点に立った。

 帝京は2大会連続33回目のインターハイ出場を決めた準決勝から先発11人を入れ替えた陣容。4-2-3-1システムのGKが大橋藍(1年)で右SB大舘琉史郎(1年)、ゲーム主将のCB藤本優翔(3年)、CB田畑勲(3年)、左SB竹内大地(2年)、中盤中央に大口晴仁(3年)と藤田隆之介(2年)が入り、右SH藤崎巧士(3年)、左SH山崎湘太(2年)、トップ下が竹下律(1年)、そして1トップはU-19代表FW横山歩夢(松本)を兄に持つFW横山夢樹(2年)が務めた。

 一方の関東一は、3大会ぶり6回目のインターハイ出場を決めた準決勝からCB矢端虎聖主将(3年)、GK遠田凌(3年)、MF渡邊倖大(1年)を除く先発8人をチェンジ。4-4-2のGKが遠田、右SB川口颯大(2年)、CB倉持耀(3年)、CB矢端、左SB宮田響(2年)、ダブルボランチが渡邊と稲見佳祐(2年)、右SH日野塁(2年)、左SH山本匠(2年)、2トップに平形京太(2年)と長谷川凌翼(2年)が入った。

 試合は序盤から帝京がボール握る展開。ゆっくりとボールを動かしながら差し込むタイミングを伺う。対する関東一はまず相手の攻勢に対応する時間帯に。CB矢端を中心にコンパクトな陣形を維持し、入ってきた相手を封じながら試合を進めていく。

 試合は前半16分に動いた。帝京は右サイドでFKを獲得すると、キッカーの藤崎が左足で低い弾道のボールを蹴り込む。味方が合わせられなくても、枠を捉える狙い通りのキック。これが混戦を抜けてファーサイドのゴールネットを揺らし、帝京が先制した。

 帝京は各選手が個性を発揮。1トップの横山が切れのあるドリブルを連発し、29分には切り返しを交えたドリブルから左足シュートへ持ち込む。33分にはトップ下で失わない力を発揮していた竹下が巧みにPAへ潜り込んだ。また、藤崎のサイドチェンジ、山崎と竹内の左サイドがそれぞれ攻撃の強みを活かして押し込むなど主導権を握って攻撃を続ける。

 一方、アンラッキーな失点を喫した関東一だが、その後は再び落ち着いた守備。ゴール前の局面を作られていたものの、各選手が冷静にゴールを隠して守りながら、自分たちの流れが来る瞬間を待ち続けた。ボールを奪った際にはDFラインから攻撃を作り、稲見が切り返しを交えた独特のドリブルで前進しようとする。31分には左CKからチャンスを生み出すが、前半はなかなかその数を増やすことができなかった。

 帝京は後半2分、右サイドを山崎が抜け出し、ラストパスをファーサイドの横山が左足ダイレクトで強振。だが、GK遠田が反応し、追加点を許さない。関東一は13分に渡邊と長谷川に代えてMF小松奏哉(2年)とU-17高校選抜候補のエースFW本間凜(3年)をピッチへ送り出す。

 本間はいきなり右サイドを鋭く抜け出すと、その後も前線でのポストワークなどで攻撃の起点に。盛り返した関東一はショートコーナーから宮田の上げた右クロスを稲見が頭で合わせ、また本間のスルーパスに平形が反応する。

 対する帝京も、交代出場のMF樋口晴磨(2年)のスピードを生かした抜け出しから竹内が決定的な左足シュート。だが、関東一はCB矢端がシュートブロックし、1点差を継続する。帝京も大怪我を乗り越えて約10か月ぶりのAチーム先発となった藤本が高さを発揮するなど、随所で好守。その藤本は「東京都で1位を取って(インターハイ開催地の)徳島に乗り込むということは絶対に自信になる」と1位にこだわり、安定したカバーリングを見せる田畑らとともに決定打を許さず、守り続ける。

 帝京は終盤に掛けてMF山下悠斗(2年)、MF川村大樹(1年)、CB前濱就意(3年)、MF谷倫之介(2年)を投入。関東一もFW山戸建太朗(3年)を投入して1点を目指したが、帝京の守りは最後まで崩れなかった。1-0で勝った帝京は表彰式後、決勝で奮闘した選手たちと準決勝のメンバーが一緒になって喜びを爆発。関東一の選手たちは「絶対に忘れるな。これを忘れたら這い上がれない」という小野監督の指示で、その姿を目に焼き付けていた。

 帝京のFW伊藤聡太主将(3年)は、前日の準決勝前に決勝出場予定の選手たちから「『トップに行くためにも勝つから、準決勝絶対に勝ってくれ』と言われました」と明かす。そして言葉通りの仲間たちの活躍、勝利に「トップチームに入れない選手が活躍してくれるとトップチームの選手も『このままじゃダメだ』と危機感が生まれますし、そういう意味では刺激になる良い試合を見れたと思います」と微笑んだ。

 勝負強く準々決勝、準決勝、そして決勝も勝ち切り、東京制覇。帝京は、高い目標を達成するために負けて良い試合は一つもない、という姿勢をスタメン、サブ組の選手たちも共有することができている。前回大会で全国舞台を経験できたことが、意識を高めるきっかけの一つになっているようだ。

 伊藤は「去年、全国行けてもちろん優勝を目指していましたけれども、全員が全国大会のプレッシャーに圧倒されていたというか、正直自分もここまでなのかと感じました」と振り返る。同大会で準優勝した米子北高(鳥取)と初戦で対戦し、後半終了間際に追いつかれてPK戦で敗退。「(米子北は非常に強く、)あれを越えなければ、チーム的にも個人的にも上には行けない」と体感できたことが、登録メンバー入りした現3年生13人をはじめとしたチームの本気度も高めた。

 去年も全国上位で戦える力を有していた。だが、まだ全国制覇できるチームではなかった。それでも、今年は経験豊富な世代が最高学年になり、より逆境を乗り越えられるチーム、勝ち切ることのできるチームに。日比監督は選手たちの意識の変化を感じ取っている。

「学校にある9つのトロフィー(選手権優勝6回、インターハイ優勝3回)が彼らにとってどう映っているのか。今まではどこかお飾りのようにしか映っていなかったと思うんですよ。それが、今はこれを獲りにいかないといけないんだとなっているし、去年の米子北との忘れ物を獲りにいくと思っていると思います」。注目世代は今年度、ユニフォームの左胸に記された星の数を「9」から2つ増やす意気込みだ。

 伊藤は「星は(今回のインターハイで)10個にしなければいけないと思いますし、先生たちには(手間を掛けて)申し訳ないですけれども、(選手権も勝って)11個にして、切り悪くしたいと思っていますし、それは先生たちに許してもらって本気でやらないといけないと思っていますし、できると思っている」。不用意な失点などがまだあることも確か。まだ残っている甘さを取り除かなければならない。そして、どの相手に対しても“現代の帝京らしく”崩して、逞しく勝ち切るチームになってインターハイに臨む。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2022

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