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長期離脱から待望の復帰。青森山田DF多久島良紀主将「しっかりその借りを返せるように頑張っていきたい」

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青森山田高の守備の要であり、精神的支柱のDF多久島良紀主将

 令和4年度全国高校総体(インターハイ)「躍動の青い力 四国総体 2022」男子サッカー競技が24日に開幕する。2連覇を狙う青森山田高(青森)は25日の2回戦から登場。大分鶴崎高(大分)と帝京高(東京1)の勝者と初戦を戦う。

 昨年の優勝メンバーで、今年のチームの主将を務めるDF多久島良紀(3年=大宮アルディージャU15出身)が昨秋の負傷、長期離脱から6月に復帰。精神的支柱であり、DFラインの要でもある多久島に離脱していた時期の思いや昨年、今年のチームについて、そしてインターハイへの意気込みを聞いた。

―インターハイ予選は、外から見る大会だった。
「去年から経験している選手が少ない中で、少なからず緊張はあったと思いますけれども、結果にこだわってやれたと思いますし、歴代の先輩方が繋いできてくれた伝統や連勝記録を止めないことができて良かったと思います」

―多久島君は、リーグ5連敗後に「気持ち」の変化を強く求めていた。
「流経(流通経済大柏高)戦(1-0で勝利)の前の週に5連敗している中で、どうやって勝とうかと。(黒田剛)監督やコーチに甘えていた部分があったので、その週は選手だけで話し合って課題やどうしたら良いかを明確にして試合に臨んだので。一番は気持ちが本当に出た流経戦だったので、そこは本当に良かったです」

―山田のユニフォームを着たから強くなる訳では無いと実感した。それでもチームが逞しく、頼もしくなってきたのでは?
「春、自分は遠征に帯同していなかったのでその時期のことは見ていないですけれども、プレミア開幕戦の時に比べたら、技術力や思考レベルが凄く変化してきた選手もいますし、体つきもどんどん大きくなっている選手もいますし、さらに成長しなければいけないのは当然ですけれども、前よりは成長していると思います」

―メンバーの入れ替わりが激しい分、自分もという選手も多いと思う。現在の競争をどう見ている?
「去年だったらスタメンが固定しがちだったんですけれども、今年は誰が出てもおかしくない。結果を出した選手や、能力のある選手がスタメンで出ると思うので、日頃の練習の強度などが凄く高くなっていますし、それが成長に繋がっているんじゃないかと思います」

―今年は、冬に鍛錬ができなかったことが影響した。
「そうですね。体力的な部分もそうですけれども、メンタルや筋力的な部分も不利な状況になりましたけれども、少しずつ戻して行けている部分はあると思います」

―インターハイまでに取り戻したい。
「昨年ほどの圧倒的な力の差は見せられないかもしれないですけれども、春から掲げていた『一戦一戦全力で戦う』ということができれば、どんどん優勝に近づいていけると思います。まずは先を見ずに目の前の試合に挑んでいくという目標へ、立て直していきたい」

―多久島選手は東北大会で復帰予定(取材は6月中旬)。楽しみで仕方ないのでは?
「去年の冬に怪我して、サッカーができない時期が凄く長くて苦しんだ部分があるんですけれども、家族だったり、チームメートだったりに励まされてやっとここまで来たという気持ちです。ただ、まだ再スタートしただけなので、満足せずに、今までチームに助けられてきた部分があるので、しっかりその借りを返せるように頑張っていきたいです」

―何が一番辛かった?
「やっぱりチームが負けている時に自分が何もできないという悔しさともどかしさがありましたし、みんながサッカーをして試合で経験を積む中で自分はできないというのが一番悔しかったですね」

―寮で「クソっ」という気持ちになることも。
「本当に怪我した時もそうなんですけれども、落ち込む時が凄く多くて、でも家族に『落ち込むな』『前を向け』と言われて。チームメートもそうですけれども、励ましの声が多かったので、今、こうやってピッチの上に立てる状況にある。本当に自分だけの力だけじゃないので、感謝したいです」

―黒田監督や正木コーチからも激励の言葉もあった。
「監督には『早く戻れるように、(慌てず)ちゃんとリハビリしろ』と声を掛けられていて。正木さんもそういう言葉を。自分は一年の頃から色々と経験させてもらっていて、その経験などを伝えるという責任もあったと思うので、そのプレッシャーも与えてもらいつつ、リハビリはちゃんとしていました」

―さすがに、プレッシャーはあった?
「ありましたね(苦笑)」

―個人としては、体を離脱前のレベルに戻さないといけない。まずそれがとても大変だったのでは?
「最初動き出す時は凄く重くて、これ復帰できるのかなという不安もあったんですけれども、若松トレーナーや監督、正木さん、本当に色々な人に支えられてリハビリも全力ですることができましたし、まだコンディションは完全に戻っていないですけれども、どんどん上げて行って、元の状態以上のプレーが見せられるようにこれからも頑張っていきたい」

―現段階の状態は?
「スピード、対人、ジャンプのところはまだまだ上げないといけないですけれども、筋力的な部分や、体つきは怪我する前よりも大きくすることができましたし、何より自分が去年試合に出ていて外から見る側になっていなかったので、サポートする側のことを感じることができました」

―外から見ることは、思っているものと違った?
「違いました。やっぱりキツかったですね。サポートだったり、自分のポジションの選手が活躍したりすると悔しいという思いもありますし、チームとしてサポートしなければいけないという葛藤もありましたし、サポートの選手はこういう気持ちなんだと感じることもできました」

―キャプテンとして、より視野も広がって、Bチーム、Cチームの選手たちの気持ちもより背負って戦うことができる。
「200人近い選手が山田にいて、その分も背負ってAチームのスタメン11人として戦わなければいけないという責任も改めて感じましたし、良かったです」

―去年と今年とはまた向き合い方も違う。
「今年は最後の年なので、チームも見なければいけないですし、個人としてもアピールしなければ行けないですし、その部分はムズいですね」

―チームに戻って何を加えるか、みんなが注目している。
「去年から出ているので、その安定感や一人だけ違うなと、一人だけ違いを見せられたら良いと思いますし、自分は守備が特に得意なので、誰よりも良い守備やヘディングを見せられたら良いと思いますし、攻撃のところもロングフィードやビルドアップのところも違いを見せれたら良いと思います」

―キックやスローはもしかしたら迫力を増しているかも。
「キックは最初怖がってあまり飛ばなかったんですけれども、徐々に蹴るにつれて精度も距離も上がってきましたし、ロングスローに関してはちょっと飛ばなくなっているのでちょっとずつ戻しています」

―目標のプロに行くためにするべきこと。
「まずはコンディションを戻すこと。今のままでは絶対にプロは無理ですし、技術的にも、体力的にも、メンタル的にも全ての面で怪我した時以上の状態にしていかないといけないですし、それをインターハイ前までには完璧な状態にしたい」

―60、70パーセントまで来ている。
「60くらいまでは来ているので、ここから試合感覚に慣れていければ良いかなと思います」

―ここまでサッカーができなかったこと初めて?
「初めてですね。大怪我が初めてで。あとは捻挫とか軽かったので」

―選手権はどのような気持ちで見ていた?
「選手権前だったので、手術が。悔しい気持ちもありましたし、やっぱり1年通して戦い抜きたかったという気持ちがありました。山田に来た意味が選手権に憧れてというのもあるので、めちゃくちゃ悔しくて、夜眠れなかったりもしましたけれど、それも切り替えないといけないと家族にも言われて前を向くことができました」

―改めて、去年のチームはどうだった?最強軍団の一人だった訳だけど。
「今年と比べたらダメかもしれないですけれども、一人ひとりの個の能力、個の強さというものが圧倒的に凄かったですし、チームとしても去年だったら(松木)玖生さんや(宇野)禅斗さん、藤森(颯太)さんが中心となって強いチームというものを作り上げていたので、全ての面で強かったと思いました」

―そのステージに近づいて行く。
「まだまだ遠い存在だと思います。ただ、あまり自分たちは比べることはしていないので。去年と比較しても仕方ないですし」

―多久島君のその強さや肉体はどうやって身につけた?
「試合の前日とかは別ですけれども、毎日毎日、試合が無い日とかは毎日筋トレしています。(チームメートと)お互いで『やろうぜ』、みたいな感じで高め合っているので、それは強さの秘訣です」


―自分が青森山田に求めていたものは身につけられた?
「自分は中学生まで(大宮の育成組織で)色々技術などを教えてもらってきました。この青森山田に来てメンタルや体力、体つきというものも一年の時に比べたら凄く成長しました。まだまだですし、もっともっと上を目指してやりたいですけれども、自分が思い描いていたことはこの3年間でできていると思います」

―将来、どうなっていきたい?
「やっぱりCBで高校1年生までやってきたので、CBで勝負したいというのがありますし、SBもできていて悪いことはないですし、今後2ポジションやることによって幅も出ると思いますし、どちらで出ても全力でやるだけだと思います」

―CBの魅力とは?
「ボールに触る回数が多くて、自分はファン・ダイク選手を目標にしているんですけれども、ロングフィードや守備の対人、センターでどっしりと構えているところが格好良いと思いますし、攻守に渡って活躍できるというのがCBの魅力です」

―最後に、インターハイの目標を。
「やっぱり優勝、連覇というものを目標にしてやっていきたいと思っています。去年の優勝があってシードを獲得したので、(その点にも感謝して)一戦一戦戦うだけです。まだまだ未熟なので一つ一つの課題や自分のウィークポイントを潰していきながら、インターハイでさらに強い青森山田を見せられたら良いと思っています」

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2022

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