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エースFW小湊絆、強い青森山田のイメージを「自分たちの代で覆す訳にはいかない」

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青森山田高のエースFW小湊絆

 令和4年度全国高校総体(インターハイ)「躍動の青い力 四国総体 2022」男子サッカー競技が24日に開幕する。2連覇を狙う青森山田高(青森)は25日の2回戦から登場。大分鶴崎高(大分)と帝京高(東京1)の勝者と初戦を戦う。

 22年青森山田の10番を背負うのが、FW小湊絆(3年=横浜FCジュニアユース出身)だ。強さとしなやかさを併せ持つ強力なフィニッシャーは昨年のインターハイで2得点、選手権でも3得点をマーク。思うような結果を残せなかった時期を乗り越えて得点を重ねているエースに自身の変化や目指す姿について、そしてインターハイへの意気込みについて聞いた。

―インターハイ予選で勝って、全国大会出場を決めた。
「一番大きかったのが、インターハイ予選前の流経(流通経済大柏高)戦(1-0)に勝てたことで、流れ良く持って行けたのかなと思いますし、みんなその流経戦に懸けて、準備していました」

―5連敗した桐生一戦から何が一番変化した?
「(個人としては)自分の考え方の問題なんですけれども、全部『自分で』となってしまっていました。自分が、自分がってなり過ぎていたというか、絶対に自分が決めて勝つんだと。自分が結果出ていなかったというのもあるんですけれども、自分が決めればチームが勝てるという思考しか頭の中になくて、それを(黒田剛)監督にも『変えて、チームの勝ちのために全て徹しろ』と言われて。実はその3週間前くらいからずっと言われていたんですけれども、それが自分の中で納得できていなかったというか」

―俺がエースだし、俺が決めなきゃと。
「絶対に俺が決めるんだ、というエゴが悪い方向に働いていたというか。そのエゴはもちろん持たないといけないんですけれども、それがチームにとってマイナスになっていたと思います」

―もしかしたら、対戦相手にも小湊君さえ抑えればという考えがあったかもしれない。そこで真っ向勝負してしまっていた。
「自分が持った時に2枚、3枚来ますし、それで周りを信用せずに自分で行ってボールを失ってカウンターを受ける回数というのも増えていたので。それでも、自分は自分だけでどうにかしようと思ってしまっていました」

―そこから周りを使おうと変われた瞬間が。
「結局、シュート練習の1点でも周りからのクロスだったり、周りがボールを繋いでくれたりしたお陰で自分がゴール前で、1タッチで点獲るという形が多いと感じました。去年、自分が点獲っていたシーンが、自分が何枚も剥がしてゴール前まで持って行くんじゃなくて、ゴール前に出てきて1タッチ2タッチで点を決める形の方が多かったと監督にも言われましたし、そっちの方が自分らしい点の獲り方なのかなと思って、それで自分はゴール前での仕事に徹しようと考え方を無理やりですけれども変えられたというか。去年は周りがスーパー過ぎたので、それに付いて行くだけという考え方で良かったんですけれども、自分自身で今年のチームが弱いというのは理解しています。そうなると、心の中のどこかで、自分がやんないといけないという気持ちが強くなってしまっていたのかもしれない」

―チームの結果が出なければ自分のところにも戻ってくる。
「結局、去年凄かったのは勝ち続けたことなので、どんなに試合数を重ねても、分析されても、絶対に勝ち切れていたので、それが凄い部分だった。結局勝てないと個人個人の評価にも繋がらないですし、もちろん注目を浴びることも少ないですし、という風になって行くと自分のマイナスにもなってしまう」

―苦しい思いをしたことで壁を乗り越えられた。
「ここから後期に掛けて、『自分が』にならずに、いかに点数を重ねられるかが課題です」

―以前からエゴを出す方だった?
「やっぱり点数を獲ることが好きでしたし、決めたいという気持ちが人一倍強いというのがありました」

―選手権ではゴール後にカメラを意識したパフォーマンスをしていたのが印象に残っている。そこまで見ているんだと。
「去年、ベンチから見ることが多かったんですけれども、自分たちが攻める方のカメラが明らかに多いなと思ったりしていたので。それは見えるものだと思うんですけれども、他の人に聞いたら、そんなところまで見ていないと(微笑)」

―苦しいシーズンの中で成長できていることや発揮できていることは?
「ゴール前に限らず、1対1の局面とかではキープや仕掛けるところでは負けている部分が少ないと思いますし、個人としては通用している部分が多いと思います。でも、その後のカバーの選手にボールを取られたりすることが多いので、1対1の関係ではなくて後ろの2枚、3枚まで見れるようにというのはありますね」

―上手いし、強いし、速い。今後、どうなっていきたい?
「ユーティリティさは自分の持ち味だと思ってやっていますし、でもこれという突出したものが無いなと最近思っていて。もちろん、全てが高水準と言ったらそれまでなんですけれども、それだけに収まりたくないという思いもあります」

―ここを突き抜けさせたいという部分は?
「決定力ですね。それこそ、百戦百打一瞬の心じゃないですけれども、試合の中でシュートチャンスはどんなに劣勢でも絶対に1本は巡って来る。それを決め切るかどうかでチームの勝利だったりは絶対に変わってくるし、それを決めきれないとDF陣が頑張って守ってくれているのに、となります。どうしても点を獲られたり、負けたりしたら守備陣の問題にされがちですけれども、それって攻撃陣が点獲るべきところで獲れていなかったり、ボールの失い方が悪くて不利な状況でカウンターを受けたりするから。決め切るべきところで決め切る、相手にとっても『コイツ、目を離せないな』という怖い選手にならないといけない」


―現状では、シュートの精度が足りない?
「ゴールに直結する形でプレーし過ぎている。正木さんにも言われたんですけれども、点獲れている時ってちょっと遊び心があって、ゴールからちょっとそれてから(仕留める)という部分もあったりしたと。点獲るという気持ちが強すぎて一直線になり過ぎている、心に余裕がある時は左右に振りながらDFの位置とかズラしながらできていたと言われました」

―なぜこのようなFWに?
「小学校や中学校の頃から、フィジカルやスピードという部分ではどちらかというと通用していました」

―スポーツ、何やらせても上手そう。
「多分、運動能力が高いんですけれども、横浜FCをジュニアユースに選んだことでパスサッカーだったので。FWでもテクニックや技術力というのは毎日の練習の中で求められることでした。その中で、今トップチームのコーチをしている小野智吉さんが自分の中3の時の監督だったんですけれども、ポストプレーのボールの置きどころなどの技術力を元々自分が身に付けていたものに加えてくださって、色々できることに繋がったと思います」

―上手くなるために横浜FCを選んだ。
「他にも選択肢はあったんですけれども、通うとなった時に自分は品川区に住んでいて近いというのもあったので。ただ、ユースに上がるとなった時にこのまま横浜FCにいて、自分のやりたいサッカーができるかどうか考えた時に、自分がやりたいのはパスサッカーじゃなくて縦に速いサッカーや、サイドからの攻撃が多いチームでサッカーをやりたかったので、山田に行きたいと。横浜FCのスタッフの方々も自分をサッカー選手として尊重してくれました。その後も一人のサッカー選手として自分に接してくれましたし、試合にも使ってもらったので、そういった意味では感謝しています」

―実際、山田に来て。
「本当に大変でしたけれども、国体がなかったので自分は1年の頃から多久島、中山と一緒にAチームに混ぜてもらっていて、去年だけじゃなくて(藤原)優大さんたちの代のことも分かっている。だから、もっと足りていない部分などを伝えていかないといけないんですけれども、今のチームではまだまだ足りていないのかなと思っています」

―個人的には、西の福田、東の小湊くらい注目されても良いのではないかと。
「もっと注目浴びたいですし、代表入りたいですし、FWをやっている以上、結果を求めていかないといけないです。福田師王は常に点を決めているイメージがあります。選抜でも、プリンスでも毎試合得点欄のところを見たら絶対に福田師王がいるみたいな感じのイメージがあるので、それが代表レベル。それがあるから海外挑戦とかのチャンスも巡ってくると思いますし、そういう得点者に絶対にいるという風になっていかないと。注目を浴びるにはまだまだかな、と思っています」

―今年は進路も考えながらのシーズン。
「最終的にはプロを目指したいので、その過程の中で大学も考えています。Jリーグを見ると、FWは海外の選手が多い。今、プロになったところで海外の選手に負けて、勝負できないとなるのではあれば、三笘薫選手や上田綺世選手のように(大学を経由して)なって行った方が将来的にも即戦力で代表とかに絡んでいけるのかなと。そういう意味では高卒プロよりも、大学へ行った方が良いのかなと思ったりしています。ただ、4年後に本当にプロになれるかと考えた時に今なるのが正解なのか、ずっと迷っています。プロでしかできない経験ももちろんあるので、毎日考えています」

―総合的に考えて決断する。
「(松木)玖生さんくらいスーパーじゃないと、1年目からスタメンじゃ使ってもらえないと今年のJリーグを見ていると感じます」

―インターハイは去年とは立場の違う大会になる。
「もちろん目標は優勝です。シードなので去年よりも日程的に有利な部分はあるんですけれども、そこを踏まえた上での戦い方やチームが勝ちに徹することができるかがインターハイでは課題になると思います。やっぱり個人としてはゴール前に出てきて点を獲れる、そしてどんどん重ねて行けるようにしたいです」

―大久保嘉人選手がインターハイで10得点獲っている。
「福田師王には絶対に負けたくないです」

―今年も山田は強い、と見せたい気持ちはやっぱりある?
「『山田は強い』という固定概念、イメージというものを自分たちの代で覆す訳にはいかないし、『山田は勝ち続けられることが凄い』とたくさんの人たちが評価して下さっていたので、勝ち続ける難しさはもちろんありますけれども、どんな年代でも勝ち続けられるのが山田だと思うので、それは絶対に自分たちの代でその評価を変えることはできないですね」

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2022

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