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ここからは去年を「超える」ための大いなるチャレンジ。中京大中京相手に5発快勝で岡山学芸館は2大会連続の全国8強!

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岡山学芸館高は前回大会を「超える」ための準々決勝へと勝ち上がった

[7.26 インターハイ3回戦 中京大中京高 0-5 岡山学芸館高 徳島スポーツビレッジピッチB]

 とうとう『並ぶ』ところまでは漕ぎ付けた。ここからは『超える』ための大いなるチャレンジ。悔しい思い出も、苦しいトレーニングも、すべてはこの先へと進むために必要なものだと信じて、日々の自分と向き合ってきたのだから。

「新チームの立ち上げ当初から、去年の先輩を『超える』と。全国ベスト4以上を目指そうという目標を掲げてチーム全体でやってきたので、まずは同じラインに立てたというところで、次の試合にすべてを懸けたいなと思います」(岡山学芸館高・高原良明監督)。

 まずは昨年の成績に並ぶ全国8強へ、堂々進出。令和4年度全国高校総体(インターハイ)「躍動の青い力 四国総体 2022」男子サッカー競技(徳島)3回戦が26日に行われ、徳島スポーツビレッジピッチBの第1試合で中京大中京高(愛知)と岡山学芸館高(岡山)が激突。中京大中京も粘り強い守備で対抗したものの、前半終了間際にMF木村匡吾(3年)がミドルを叩き込んで先制した岡山学芸館は、後半に入って4点を追加。5-0の快勝で準々決勝へと勝ち上がった。

 立ち上がりから岡山学芸館の勢いが鋭い。前半2分に木村が枠内に打ち込んだミドルを号砲に、右のMF岡本温叶(3年)、左のFW今井拓人(3年)と両サイドハーフを巧みに使ったアタックを連続して披露。14分にはDF中尾誉(3年)を起点に、今井の左クロスに飛び込んだMF田口裕真(2年)はわずかに届かなかったものの好トライ。20分にも田口のパスから、今井が放ったシュートは中京大中京のキャプテンを務めるDF伊藤凛人(3年)の果敢なブロックに阻まれたが、攻勢を強めていく。

「簡単に背後を取られないように、自分たちのディフェンスを崩されないように、というところはミーティングから話していました」と鈴村真平監督が明かした中京大中京は、押し込まれながらもDF出崎蓮太(3年)とDF渡辺晴斗(2年)のCBコンビを中心に築く堅陣。「自分たちのペースでボールを握れていましたけど、最後のところで決め切れずというのが続きましたね」とは岡山学芸館のキャプテン、DF井上斗嵩(3年)。スコアは動かないまま、時間が経過していく。

 そんな均衡を打ち破ったのは、6番を背負ったコンダクター。前半終了間際の35+2分。右サイドで田口からのパスを引き出した木村は、やや距離のある位置から左足一閃。繰り出された軌道はゴールネットへ豪快に突き刺さる。「ああいうシュートはよく狙うんですけど、うまく入ったことはそんなに多くないので、嬉しかったです」と笑った木村のゴラッソ。岡山学芸館が1点のアドバンテージを握って、最初の35分間は終了した。

「攻めざるを得ない状況になった」(鈴村監督)中京大中京は、前半の内に投入されたMF宮澤隼(3年)とFW溝口絢人(3年)に加え、後半11分にはMF清田空(2年)もピッチへ送り込み、果敢に1点を狙う姿勢を打ち出すも、なかなか相手陣内まで前進できない展開が続くと、岡山学芸館が一気に猛攻の牙を剥く。

 15分。右サイドで粘ってキープした岡本が、高速クロスをグラウンダーで蹴り込むと、ファーで待っていた田口がきっちり押し込んで、2点目。22分。試合途中で最前線へとポジションを移していた今井は、右サイドで岡本のパスを引き出し、カットインしながら強引にシュート。DFに当たったボールは、GKの頭上を破ってゴールネットへ弾み込み、3点目。

 26分。今井の丁寧なパスから、飛び込んできた木村が至近距離から打ったシュートは中京大中京GK黒柳昊士(2年)がファインセーブで応酬するも、こぼれに反応したMF山田蒼(3年)がプッシュして、4点目。32分。GK平塚仁(2年)がスペシャルなフィードを前線へ送り届けると、走った今井はそのまま左足でゴール右スミを撃ち抜き、5点目。

 ファイナルスコアは5-0。「後半は『守備は無失点で』ということにこだわってやっていて、守備陣もよく粘ってくれましたし、それから追加点がどんどん獲れたように、攻撃陣も活躍してくれたと思います」と井上も笑顔で語った通り、攻守に圧倒的なパフォーマンスを打ち出した岡山学芸館が、2大会連続となる全国8強を力強く手繰り寄せた。

 ちょうど1年前。真夏の福井で、同校初となる全国大会の準々決勝を戦った岡山学芸館。星稜高との一戦は先に2点を先行されながら、後半のアディショナルタイムに1点を返すと、残された時間も死力を尽くしてひたすら相手ゴール前へ殺到。だが、一歩及ばず、選手たちは雨の降り注ぐピッチに次々と倒れ込んだ。

 その一戦にフル出場していた木村は「あの試合は何もできなくて、凄く悔しかったです」と振り返りつつ、「“あと一歩”が届かなかったので、去年を経験しているメンバーを中心に、練習から常に最後の細かい部分にこだわってやってきたんです」と言葉を続ける。

「去年はあそこで止まってしまったので、今年こそは自分たちの代で壁を超えられるように、日々の練習を一生懸命やってきました」とキャプテンの井上が語れば、「目線が上がっていることはかなり感じます。去年もピッチに立っている子もいますので、『またあの場所に戻りたい』『あそこを超えたい』という想いは、私たちを含めて強いですね」とは高原監督。選手たちも、スタッフも、“あの試合”をきっかけに、全国4強を堂々と目指す資格を自分たちが有していると信じ、たゆまぬ努力を積み重ねてきた。

 次のステージは、1年前にその行く手を阻まれた準々決勝。対峙するのはその前回大会で日本一に輝いた青森山田高を倒し、3回戦も劇的に勝ち上がってきた帝京高。相手にとって不足はない。

「自分たちが目標にしている全国ベスト4がもう目の前にあるので、まずは準々決勝を全員で勝ち切って、そこからまたさらに優勝を狙っていきたいですね」。井上ははっきりとした口調で、こう言い切った。これからは『超える』ための大いなるチャレンジ。立ちはだかる壁は、壊すためにある。岡山学芸館が“1年越し”の野望を成し遂げるための決戦は、もうすぐそこまで迫っている。

(取材・文 土屋雅史)
●【特設】高校総体2022

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