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[MOM3955]米子北FW小橋川海斗(3年)_昨年度の悔しさぶつける沖縄産ストライカー

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[7.26 インターハイ3回戦 四日市中央工高 1-2 米子北高 鳴門・大塚スポーツパーク球技場]

 昨年度大会決勝。青森山田高から先制しながらも、後半終了間際と延長終了間際の2失点により、逆転負け。肩を落とし、涙を流す米子北高の選手が大勢いる中、より悔しい気持ちを抱えていたのが、フィールドプレイヤーで唯一出場機会がなかったFW小橋川海斗(3年)だった。

 2回戦で敗れた選手権の矢板中央高戦も彼にとっては、悔しさの募る一戦。2-2のまま迎えたPK戦で4番目のキッカーに名乗りを挙げた小橋川だったが、キックを外して涙を流していた。

「自分のせいで(負けた)という想いが強かったので、今年は引っ張ってやろうという気持ちがある。最前線でプレーしているので、やらなければという想いもあります」

 そう意気込んで挑んだ今大会だったが、初戦となった2回戦の高知高戦は、チームが4得点を奪う一方で、思い通りに走れず前半で交代となっていた。

 本人も3回戦で雪辱を晴らしたいとの想いはあったはず。そしてスタッフにも、小橋川に活躍して欲しいとの想いはあった。「今日はやるぞと先生たちから言われていた。最初から全開で飛ばしていけとも言われていたので、今日は走ろうと思っていた」と小橋川は振り返る。

 序盤から2トップを組むFW福田秀人(3年)が後方に落ちることで空いたスペースへとフリーランを繰り返し、ゴール前に迫っていた。1つ目の見せ場が訪れたのは、前半終了間際の35+3分。福田から出たスルーパスでゴール目を抜け出したが、シュートはサイドネットに終わった。

 2度目のチャンスは、後半開始直後。キックオフのボールを素早く前方に入れて、フリーでシュートを放ったが、ポストに阻まれていた。「チャンスはあったのに、外してしまった。今日は入らないのかなと頭の中で凄く考えました」。

 一方で、二度の好機を活かせなかったことで、ゴールへの欲望が高まったのも事実。「自分は試合の入りがちょっと弱くて、気持ちに火が付くまで時間がかかる。ただ、チャンスを外したり、シュートを決めたり、大きい出来事があるとスイッチが入る」と自己分析する小橋川にとっては都合が良かったのかもしれない。

 チャンスを活かせなくても、ベンチからは中村真吾監督の「次、チャンスあるよ」といった優しい声掛けが飛び続けるのも後押ししたという。奮闘がようやく実ったのは、後半5分。MF仲田賢信(2年)が入れたロングボールに反応すると、頭を出して相手を潜り込むことでゴール前を抜けだした。

 そこからは、「何も考えないで打とう。頭で考えたら逆に外してしまうので、気持ちよくシュートを打ってやろうと思っていた」と心を無にして放ったシュートが決まり、先制に成功した。その後は同点に追い付かれたが、交代で入ったFW森田尚人(2年)が決めて、2-1で勝利した。

 昨年味わった悔しさもあるが、インターハイは小橋川にとって思い入れのある舞台だ2019年のインターハイは小橋川の地元である沖縄での開催。ヴィクサーレ沖縄FCジュニアユースで2歳上の先輩であるFW崎山友太(駒澤大)の応援するために会場に訪れると、崎山のハットトリックを目の当たりにした。

「ハットトリックを目の前で見て、えげつないなと思った。友太さんみたいになりたいと思った」という小橋川は、米子北へと入学。寮生活を一緒に過ごし、意識の高さを感じると共に自主練にも付き合ってくれた崎山への憧れが増して行った。

 有観客で行われる今年のインターハイでは、3年前の小橋川と同じように米子北でプレーしたいと思う少年が出て来るかもしれない。昨年の悔しさを晴らすため、米子北の未来に繋げるため、準々決勝以降も小橋川の活躍は不可欠になる。

(取材・文 森田将義)
●【特設】高校総体2022

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