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常に一生懸命で諦めない。“弱い世代”が“矢板中央らしい”チームに進化し、初のベスト8進出!

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矢板中央高が初の準々決勝進出。(写真協力=高校サッカー年鑑)

[7.26 インターハイ3回戦 矢板中央高 1-1(PK5-4)東山高 鳴門大塚]

「この夏、チームとして新しい歴史を作ろうという話をして臨みました」。初のベスト8進出を決めた試合後、矢板中央高の高橋健二監督はそう明かす。選手権では09、17、19、20年度と4度のベスト4進出。だが、インターハイは相性が悪く、最高成績はベスト16だった。その矢板中央が、今年は夏に快進撃だ。

 この日は、指揮官が「私が今まで指導した中でも一番飛ぶし、日本でもトップクラスじゃないかな」と説明する左SB木村匠汰(3年)のロングスローからMF田邉海斗主将(3年)が先制ヘッド。13分にも木村のロングスローから田邉の放ったヘディングシュートがクロスバーを叩く。ロングスローをはじめとしたセットプレーを有効活用し、追加点のチャンスを作り出した。

 また、DFリーダーのCB畑岡知樹(3年)や田邉、MF吉川侑輝(3年)を中心に守備意識の高い戦い。豊富な運動量と強度の高さを活かし、無失点のまま試合を進める。だが、シード校の東山高(京都)が2試合目であるのに対し、矢板中央は今大会3試合目だった。前線でよく競り合い、ボールを収める時間を増やしていた一方、運動量が低下して全体が徐々に間延び。相手にプレッシャーを掛け切れず、終了間際に同点ゴールを許した。

 それでも1失点で切り抜け、得意のPK戦に持ち込む。すると、1人目の畑岡から田邉、右SB勝田大晴(3年)、木村と4人連続でコースへ鋭いシュートを決めて成功。相手の5人目が外したのに対し、矢板中央はFW坂本怜輝(3年)が冷静に決めて歓喜を爆発させた。

 高橋監督は「ウチは3連戦目でだいぶ足が止まったけれど、よく1点で抑えた。PKは伝統的に強いというのがあるので、それがしっかりと出せた。本当は失点しないで勝ちたかったですし、そこのところは課題。でも、最後勝ち切ったことは選手たちの成長を褒めてあげたい」と目尻を下げた。また、“矢板らしさ”を発揮して勝ち切ったことを高橋監督は喜ぶ。

「正直、今年のメンバーはスタート段階で厳しいと私からも言われているし、一人ひとりの力を見たら例年に比べたら厳しいなという印象だったんですね。その分、彼らは練習から手抜きなしで一生懸命やるという、技術はなくても最後まで諦めない、矢板中央の伝統というか、それをきょうのゲームが一番出たかなと思います。(選手一人ひとりの自覚と本気の練習で)仲間意識が強い世代になったかなと思います」。

 全国区の強豪校だが、ほとんどが街クラブや中体連出身の選手だ。彼らが技術力や体力を向上させ、磨き上げた球際、切り替え、運動量を表現。堅守速攻、セットプレーも交えての得点など「自分たちのできること」を徹底して勝つという伝統がある。“弱い世代”は練習から諦めずに全力で取り組み、今年も“矢板中央らしい”チームに成長。そして、歴史を塗り替えた。

 木村は「勝つことによって成長するし、みんな自信がついてきてチームワークもついてきた」と語り、田邉は「今年の代はそんなに強くないと言われていて、下馬評だとそんなに高くない感じだったんですけれども、それを覆してチームの歴史を一個塗り替えることができたのは本当に嬉しいですし、これからの成長に繋がると思う」。歴史を塗り替えたが、ここで止まるつもりはない。V候補・前橋育英高(群馬)との準々決勝も“矢板中央らしく”戦い抜いて、白星をもぎ取る。

(取材・文 吉田太郎)
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