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攻撃だけじゃない。粘り切る、勝ち切る力示した昌平が18年以来の4強と新たな成長のチャンス掴む

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後半、昌平高MF長準喜がゴールライン上でスーパークリア。(写真協力=高校サッカー年鑑)

[7.28 インターハイ準々決勝 大津高 0-1 昌平高 JAアグリあなん陸]

 “粘り強い”“勝負強い”昌平高(埼玉)が18年大会以来となる準決勝へ進出した。この日は立ち上がりこそボールを保持しながら主導権を握っていたが、CB津久井佳祐主将(3年)の負傷交代や相手の高さへの警戒心が影響してか、後ろに重い展開になってしまった。

 23分に相手オウンゴールで先制したものの、中盤で主導権を握られ、サイドから決定機を作られてしまう。選手交代によって中盤の選手を入れ替え、敵陣で試合する時間を増やそうとしたが、この日はロストが増えてしまい、FC東京内定MF荒井悠汰(3年)やMF篠田翼(3年)にボールが入ってもサポートが少ない。なかなか攻め切ることができなかった。

 シュート数は4-12。それでも、昌平は勝ち切った。U-17代表CB石川穂高(2年)がDFラインをコントロール。藤島崇之監督は「(大津の)あの高さは間違いなく脅威だったので、そこの部分と、その次の部分(セカンドボール)というところの大切さなんかはしっかり対応できたのは良かった」と勝因について説明する。

 守護神のGK上林真斗(3年)が高さを発揮し、後半の決定的なピンチではMF長準喜(2年)がスーパークリア。U-16代表候補の右SB上原悠都(1年)も的確な守備対応や球際の強さを見せ、左SB武村圭悟(3年}も出足の良い守備で貢献していた。

 加えて、津久井に代わって緊急出場したCB佐怒賀大門(2年)も、指揮官が「サッカーセンスでしっかりと対応できるので、行くべきところに行きますし、そういうところの良さはあった」というプレー。U-17高校選抜の一員で、高体連トップクラスのCBである津久井不在の影響はもちろん大きかったが、篠田も「バックラインがきょうはすごかった」と感謝したように、他のDF陣がその影響を最小限に留めた。

 攻撃陣に注目が集まる昌平だが、守備面の堅さは今年の特長だ。以前、津久井は「昌平は毎年攻撃が注目されて守備は注目されないので、(石川)穂高と、DFラインと、GKで、今年の昌平は守備に注目されるようにしていきたいです」と語っていた。

 これまでならば、攻めているものの、相手に粘り切られて敗れていた昌平が、この日は守って、粘って、白星をもぎ取った。篠田は「今年は(プリンスリーグ関東1部から)本当に失点少なくて、(伝統的に強力な)攻撃陣もそうですけれども守備陣も失点少なくできているのんで、それは今年の強みかなと思います」と信頼し、藤島監督も「これまでは(全国大会などで)粘る状況は少なかった。これも良い経験になる」。全国大会の出場回数を重ねる中、粘り切る、勝ち切る力をつけてきた昌平が次は初の決勝進出にチャレンジする。

 耐えて勝つことを目指しているチームではない。試合後、藤島監督は「(今大会)初めてしっかりと締めましたけれど、勝って繋がったことは良かったけれど、内容は彼らも満足していない。その満足していない状況が次に繋がると思います」。この日勝ったことでまた新たな経験を積むことができる。厳しい戦いの中で個人、チームとしての成長と結果を得ること。次は帝京高との準決勝を突破し、日本一と新たな成長のチャンスを掴む

(取材・文 吉田太郎)
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