beacon

2年連続ベスト8から見えたその先の景色。岡山学芸館が突入するフェーズは現実的な全国4強への再挑戦

このエントリーをはてなブックマークに追加

岡山学芸館高は2年連続での全国8強。堂々と胸を張っていい

[7.28 インターハイ準々決勝 帝京高 4-2 岡山学芸館高 鳴門・大塚スポーツパーク球技場]

 続けて体感したからこそ、わかったことがある。ここまでは来た。では、ここから先にどうやって辿り着くか。きっとその試行錯誤こそが、最も困難で、最も楽しいのではないだろうか。

「このベスト8まで来てみると、その先のベスト4の壁というのが凄く高いなというのは感じましたね。『こういう相手に真っ向勝負できないと、ベスト4以上には行けないんだな』ということは、今日の試合をやってみて、さらに痛感しました」(高原良明監督)。

 2年連続で全国8強を経験したからこそ、その先への景色がおぼろげながら見えてきたことは間違いない。岡山学芸館高(岡山)はもう、そういうフェーズに突入したのだ。

 立ち上がりの出足は、明らかに上回っていた。高校サッカー界の名門、帝京高(東京1)と対峙したクォーターファイナル。岡山学芸館はキックオフから攻勢に打って出たが、7分と14分に連続失点を喫してしまう。

「スタートの流れは良かったんですけど、やはり最初の失点が痛かったですね。どこまで0-0の状態で粘れるかなというところで、2点先制されてしまって。帝京の選手は技術も高いですし、余裕を与えると自由にされるところがあったので、そこは痛かったかなというところです」と高原監督。16分にはCKからMF田邉望(2年)が1点を返したものの、1-2で最初の35分間を終えることになる。

 追い付くチャンスはあった。後半4分。左サイドからMF福井槙(3年)がロングスローで投げ入れたボールは、ストライカーの足元へこぼれてくる。「前で(井上)斗嵩と(田口)大慎が競ってくれて、自分のところに来るというのは練習していたんですけど、焦ってしまって、ゴール前の冷静さを欠いてしまいました」と振り返ったFW今井拓人(3年)が至近距離から蹴り込んだシュートは相手GKの懐に収まると、そこからさらに2点を献上。一気に突き放された。

 それでも、最後まで諦めるわけにはいかない。執念の1点は後半アディショナルタイムの35+6分。相手CKからカウンターを発動させると、MF田口裕真(2年)が繋いだボールを、右サイドからMF木村匡吾(3年)が丁寧なクロス。「あそこにボールが入ってくるのはわかっていたので、上手く相手と駆け引きしながら、良いところに入り込むだけでした」と口にした田邉が、この日2点目をヘディングでマークする。

「『最後まで絶対に諦めるな』『最後まで戦い切るぞ』というところで、最後に1点獲れたというところは、今年のチームの頑張りが出た成果かなと思います」とは高原監督。意地は見せたが、みんなで掲げてきた全国4強は次回以降へお預けとなった。

 涙をこらえながら取材エリアに現れた今井は「学芸館の9番を付けさせてもらっているのに、決め切れなかったのが悔しくて……」と言いながら、感じた“差”をこう口にする。「自分たちは全員でやるチームですけど、向こうは“決めるべき人”がいたんだなって。学芸館にはまだ絶対に決める人がいないので、選手権までには自分が“決めるべき人”に、エースになって、また一から練習して、選手権も頑張っていきたいです」。

「メッチャ悔しいです……」と呟くように言葉を発した田邉は、自ら奪った2ゴール以上に、このレベルの試合を経験したことで感じたモノがあったようだ。「個の部分でも、チームとしてのハードワークだったり、これから変われる部分も今日の試合でいっぱい見つかったので、そこを修正して、もっと上に行きたいです。必ず来年はこの先輩たちを超えられるように、絶対にこの舞台にまた戻ってきて、先輩たちが掲げた目標を自分たちの代で達成できるように頑張りたいですし、このチームなら選手権でも全国ベスト4以上に行けると思うので、冬に向けて力を付けて、全国の舞台に戻って来たいです」。

 試合後。2回戦と3回戦ではゴールを奪い、この日もアシストを記録した木村が泣いていた。優しい表情で「悔し涙を流すぐらいの想いでやっていたということは、必ず次の成長の糧になると思いますし、彼は去年からも出ているチームの中心選手の1人なので、またこの悔しい想いを選手権にぶつけてくれるのではないかと思います」と今後の期待を口にした高原監督は、改めてこの夏の経験をこう総括する。

「今年も去年と同じ場所に立てましたけど、ここより上には行けなかったという部分で、去年も経験している子たちに関しては、まだまだ足りない部分が多くあるということは、チームとしても感じました。ただ、手の届かない場所ではないなとも思ったので、また彼らを鍛えていきたいです」。

 悔しさは、必ず未来への糧になる。ここから始まるのは、手の届かない場所ではなくなった、現実的な全国4強への再挑戦。岡山学芸館はもう、そういうフェーズに突入したのだ。

(取材・文 土屋雅史)
●【特設】高校総体2022

TOP