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堅守に自信深めた米子北、冬の再挑戦に向けて攻撃改善の課題を持ち帰る

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米子北高は好勝負を演じたが、無念の3位に。(写真協力=高校サッカー年鑑)

[7.29 インターハイ準決勝 前橋育英高 0-0(PK4-3)米子北高 徳島市球1]

 年代別日本代表を何人も擁する相手のパスワークに惑わされず、徹底した組織的な守備は確実に通用していた。しかし、PK戦を終えて手にしたのは3位の表彰状。決勝行きの切符はつかめなかった。

 全国高校総体(インターハイ)サッカー競技男子の準決勝が29日に行われ、前回準優勝の米子北高(鳥取)は、優勝候補の一角である前橋育英高(群馬)にPK戦で敗れて涙をのんだ。

 序盤の15分は相手指揮官も認めたほど、米子北のハイプレッシャーが機能して主導権を掌握。クーリングブレイクで落ち着きを得た前橋育英のパスワークに押し返される展開になったが、それでも自陣での守備ブロックでしっかりと対抗。決定的なピンチはなく、試合を進めた。

 左サイドで攻撃の起点となっていたMF中井唯斗(3年)は「奪った後のパスを正確に一本つなぐところが足りなかった。個人としては、サイドで持った時に、もっと仕掛けられれば良かった」と悔しがったが、一方で「相手は全然格上で、プレミアでも上位。それでも対応はできた。自信はつけられた」とチーム一体で跳ね返し続けた守備面には手応えを得ていた。

 大会を通して見せたのは、ハイプレスとブロッキングの使い分け。ハイプレスで主導権を奪う時間にショートカウンターやセットプレーで点を奪い、相手がペースを上げてくる中では、ブロックでしのぎながらカウンターを狙う戦い方は、大いに相手を苦しめた。

 ただし、中村真吾監督が「終盤、もう少し前に出たかった。ブロックを作らざるを得なくなり、どこかのタイミングで、もう一度プレスに行きたかったけど(ペースを)取り戻せず、防戦一方のような形になった」と悔しがったように、一度ブロックで引き込む形になると、前線との距離が遠くなり、ロングボール頼みでパスがつながらなかった。

 数少ない速攻しか攻撃の選択がなくなった部分は、改善を目指す。主将を務めるDF野田徹生(3年)は、無失点の守備だけでなく、チーム最多3本のシュートを放つなど攻撃面でも貢献したが「チームの約束事は、徹底できていた。その中で個々の能力、つなぐ能力がまだ足りていなかった。我慢の時間が長いことは分かっていたけど、なかなか自分たちの攻撃に持っていけなかったのは、僕たちの課題。最後、打ち合いの展開では、北高の良さである運動量を出して、走り勝てないと絶対に全国では一番を取れない」と課題を持ち帰り、後半のアディショナルタイムに打った惜しいミドルシュートについても「気持ちがたかぶって、力んだ。そこで冷静に仕留められるように練習したい」と今後のトレーニングに経験を生かす姿勢を示した。

 0-0で突入したPK戦では、70分の中では、守備面で貢献度の大きかったDF野田とDF森川和軌(3年)がキックを失敗。クロスバーに当ててしまった。中村監督は「勝ち切れる強さという部分では、普段からの甘さもあるところ。もっと厳しくやっていかないと。持っている能力は2人とも高い。勝ちにこだわる姿勢、態度、そういう強さがほしい。結果(PKを)外したというのは、まだまだ甘いということ」と2人に期待を持ちながらも、この敗戦を糧にさらに成長することを強く促した。

 優勝候補相手にも通じた守備は、全国トップクラス。中村監督は「大会の中で粘り強さ、勝負強さはちょっと身についたと思う。でも、このままじゃ(冬の選手権での日本一は)絶対に無理。北高らしさを大事にしながら、どうやっていくか考えないといけない」と冬の高校選手権での日本一再挑戦に目を向けた。堅守を維持しながら、攻撃を改善できるか。夏の悔しさが成長の糧となる。

(取材・文 平野貴也)
●【特設】高校総体2022

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