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仲間の「ごめんね」に涙。昌平は主将欠いた準決勝で代役たちが奮闘も、3位に

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初優勝を目指した昌平高は3位に。(写真協力=高校サッカー年鑑)

[7.29 インターハイ準決勝 帝京高 1-0 昌平高 鳴門大塚]

「ごめんね...」。

 試合終了直後、チームメートからその言葉を掛けられた主将は、涙で返答できなかったという。昌平高(埼玉)は、前日の準々決勝・大津高(熊本)戦で右足首関節の脱臼、外側靭帯断裂などの重傷を負ったU-17高校選抜CB津久井佳祐主将(3年)を欠く中での準決勝。代役として先発したCB佐怒賀大門(2年)が期待に応えるプレーを見せるなどよく戦ったが、0-1で敗れ、初の決勝進出を果たすことはできなかった。

 前夜入院していた津久井は、準決勝開始直後に会場のメーンスタンド下に到着。それに気づいた藤島崇之監督は、松葉杖姿の主将を呼んでベンチに座らせた。指揮官は「怪我で試合に出れなかったという悔しさは感じていると思いますし、人一倍キャプテンシーがある選手。この大会も素晴らしいパフォーマンスを見せてくれていたので悔しいと思う」と彼の気持ちを察する。

 その津久井はハーフタイムやクーリングブレイクを含めて、ベンチでチームメートに向けて声がけ。試合中、視線の先では、先発を託された佐怒賀や普段コンビを組むCB石川穂高(2年)が、J注目FW齊藤慈斗(3年)ら帝京高(東京1)アタッカー陣に食い下がっていた。

 特に佐怒賀は、180cmの津久井よりも10cmほど身長が低いものの、守備対応の巧さを発揮。加えて、鋭く前に出てインターセプトして見せる。また、石川も齊藤との激しいマッチアップで負けずにボール奪取。津久井は「今日、CBの2人は自分以上にやってくれたと思いますし、大門に関してはいきなりの試合なのに、きょうは凄く良かったので層は厚いなと思いました」と後輩たちの守備を賞賛。例年、攻撃に注目が集まる昌平だが、今年の特長である堅守を2年生CBコンビやスーパーセーブのGK上林真斗(3年)らがこの日も良く表現していた。

 昌平は後半、試合終盤での勝負を見据えてベンチスタートだったU-17高校選抜MF篠田翼(3年)、MF長準喜(2年)、そしてU-19代表候補MF荒井悠汰(3年、FC東京内定)を相次いで投入。前半から決定的なシーンを作っていたが、最後の精度を欠いたほか、帝京の我慢強い守りに阻まれて得点を奪うことができなかった。

 藤島監督は、津久井に対して「ここからまたグレードアップできる選手だと思うので、そこは凄く楽しみにしていきたい」と期待。また、チームについては「この後、(プリンスリーグ関東、選手権と)次のステージもある。夏のところもしっかり良い状況でトレーニングを積みながら、モチベーションを作っていかないといけない。良い切り替えができるように我々も道筋をつくっていかないといけない」と語った。プリンスリーグ関東1部からプレミアリーグ昇格、そして選手権で初の日本一に再挑戦する。

 表彰式出席後、涙のまま取材エリアに現れた津久井は、「キャプテンですし、試合に出れなくて、勝てれば良いなと思っていたんですけれども負けると凄く悔しくて、あの時あんな怪我しなければ良かったと思います。(3位表彰ではなく、)明日(決勝後に)表彰式したかったですし、この借りは選手権で返したいと思います」と力を込めた。主将は地元・埼玉に戻った後、手術する模様。復活への道のりは簡単なものではないはずだが、仲間たちの支えを受けながら、前を向き続ける。そして、昌平は必ず選手権で借りを返す。

(取材・文 吉田太郎)
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