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ユース取材ライター陣が推薦する「インターハイ予選注目の11傑」vol.2

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土屋記者が注目するDF梅木怜(帝京高3年)

 令和5年度全国高校総体(インターハイ)「翔び立て若き翼 北海道総体 2023」男子サッカー競技の都道府県予選が各地で行われている。ゲキサカでは「インターハイ予選注目の11傑」と題し、ユース年代を主に取材するライター陣にインターハイ予選注目の11選手を紹介してもらいます。第2回は(株)ジェイ・スポーツで『Foot!』ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任し、現在はフリーランスとして東京都中心にユース年代のチーム、選手を取材、そしてゲキサカコラム『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』も連載中の土屋雅史記者による11名です。

土屋雅史記者「今回もこの企画では、日頃から取材させていただく機会の多い東京都の高校に絞って、11人を選出しています。ようやく都内で開催される高校の各種大会にも、応援の声が帰ってきました。試合に出ているどの選手に聞いても、やはり応援がもたらすパワーの重要性を実感している様子。ようやく日常の光景が戻りつつある今、全国大会への出場を目指して、ピッチでもスタンドでも思う存分サッカーを楽しんでほしいと思います!」

以下、土屋記者が注目する11名
GK吉富柊人(堀越高3年)
188センチの恵まれた体格に、自身でも最大の特徴だと言い切るビルドアップ能力を兼ね備えた、まさに現代的なゴールキーパーだ。今季のチームがより丁寧にボールを動かすスタイルを採っているため、「僕が前に出て行って、どんどんスペースを活用していけば絶対に数的優位になりますし、ビルドアップには自信もあるので、今年はどんどん攻撃に関わっていこうと思っています」とのこと。参考にしているエデルソンのように、試合全体に関わる力を伸ばしている。全国へと勝ち上がった1年時の高校選手権ではベンチにこそ入ったものの、試合出場はなし。「自分はまだ全国を味わっていないので、今年が最後のチャンスですし、後輩たちにもそういう経験をさせたいので、絶対に全国に出たいです」と話す守護神の活躍が、北海道行きの切符獲得には必要不可欠だ。

DF梅木怜(帝京高3年)
チームメイトのFW横山夢樹(3年)とともに、3月の段階でJ3・FC今治への加入内定が発表されている、都内屈指のディフェンダー。1年時はフォワードを務めていたが、昨年3月に初めてセンターバックで起用されると、その圧倒的なスピードと粘り強い対人能力を十全に発揮し、すぐさまスタメンを確保。臨んだ夏のインターハイでは徳島の地でもハイパフォーマンスを続け、チームの全国準優勝に大きく貢献してみせた。「自分としてもカバーリングは結構得意ですし、特徴なので、そこは負けられないと思っています」と言うように、カバーリングも含めた守備範囲の広さが際立つも、時折見せるインターセプトからの攻撃参加も実に魅力的。プロ選手とのトレーニングを経て、自分の中で上がった基準を落とすことなく、最後のインターハイ予選に堂々と向かう。

DF普久原陽平(國學院久我山高3年)
名門の國學院久我山で、1年時からレギュラーを張り続けてきた実力派のセンターバックは、昨年度の高校選手権で全国の舞台を経験。3回戦では結果的に日本一に輝く岡山学芸館高を無失点に抑える活躍を見せ、その評価を高めている。中学時代に在籍していたジェファFC時代は、主にボランチでプレーしていただけあって、ボール扱いはお手の物。「ボール奪取のところと、カバーリングした後に『ここに出てくるかな』という部分の“読み”は意識してやるようにしています」と全体の流れや、目の前の相手の意図を“読む”意識づけを繰り返してきたことで、守備者としての幅も広げている。なお、高校では理系を選択しており、「国語が苦手なので、オール5ではないですけど、成績はそれなりに、です」と笑顔。秀才系センターバックが弾き出す勝利への公式が、チームに歓喜をもたらしていく。

DF山口航生(駒澤大高3年)
伝統的に3年生がレギュラーの大半を占める駒澤大高で、既に1年生から左サイドバックの定位置を掴み、選手権予選のピッチも経験。2年生になった昨年度は左サイドバックでスタートしたが、シーズンが進むうちに右サイドバックやセンターバックも務めるなど、守備的なポジションならどこでもできるポリバレントさが、チームの戦い方の幅を広げることに一役買っていたことは間違いない。準決勝まで勝ち上がった4月の関東大会予選ではセンターバックに入り、高さに絶対の自信を持つDF若田澪(3年)と抜群の補完関係を構築しつつ、ディフェンスリーダーとして躍動する姿が印象的だった。中学年代に山口がプレーしていたForza’02は、過去にも数々の屈強なディフェンダーを駒澤大高に輩出してきたクラブ。安定の“Forza印”を後ろ盾に、この守備職人が見せる逞しい働きが、赤い大応援団を熱狂させることだろう。

DF島田侑歩(修徳高3年)
関東大会予選を力強く勝ち抜き、久々に東京制覇を達成した修徳高の頼れるキャプテンだ。「このチームは選手もスタッフもサッカーへの熱量が凄い人たちがたくさんいますし、練習の雰囲気から勝負にこだわってやってきました」と今年のチームに確かな手応えを感じてきた中で、自身は中学時代から指導を受けてきた吉田拓也監督の言葉も肝に銘じているという。「『根拠のない自信を持って、それを裏付ける努力をしろ』と言われていて、自分は人前に出ることが苦手だったんですけど、根拠のない自信を持って、『オレならできる』と思って、『じゃあそのためには何が必要なのか』と考えて努力したことが、こうやって結果に結び付いてくれているので、そこは継続したいです」。11年ぶりの夏の全国を狙う修徳は、このリーダーがしなやかに束ねる。

MF横倉和弥(東久留米総合高3年)
「チームの核となる選手に、みんなから頼られる選手になりたいです」と宣言するボランチは、ピッチのど真ん中からチームの攻守を司る。今大会も昨年度のインターハイ全国出場校の関東一高と対峙した1次トーナメントブロック決勝では、セットプレーから3つのゴールを演出し、背番号に恥じないパフォーマンスで延長の末にもぎ取った勝利の立役者となった。「攻撃の基点を作ったり、パスを付けたり、サイドを変えたりしながら、ゲームを自分で作って流れを持ってくることは考えています」という自己分析の通り、ゲームメイクに自信を持っているプレーメイカーは、「自分が思い描いたプレーが出てくるので、特に誰かを真似したいとは思っていないです」という発言も。今シーズンの東久留米総合の10番は、オンリーワンの存在感を放っている。

MFキム・ヒョンジョン(東京朝鮮高3年)
近年は東京でも上位進出の壁に阻まれている東京朝鮮高で、2023年のキャプテンマークを託されているのがナンバー10を背負っているキム・ヒョンジョンだ。「モチベーションを上げる時は必ずメッシを見ていますし、ベルナルド・シウバやペドリを参考にして見ています」と語るだけあって、ドリブルやパスにセンスを発揮する攻撃的な選手だが、春先からはチーム事情でボランチに入ることも。「顔をいっぱい出してボールに関与するプレーだったり、切り替えの部分の運動量を増やしていかないと、上の舞台では通用しないと思うので、そこを日々追求しています」と新境地の開拓に余念がない。東京朝鮮のコーチでもある5つ上の兄は同校サッカー部のOBであり、インターハイ予選でも選手権でも東京4強を経験した世代。「そういう位置まで戻るのが一番の使命だと思っています」と口にするキャプテンに懸かる期待は小さくない。

MF横地亮太(成立学園高3年)
昨シーズンはただ1人の2年生レギュラーとして、高校選手権予選のファイナルで決勝ゴールを叩き出し、チームに17年ぶりの全国切符をもたらした上に、開幕戦では国立競技場のピッチも経験。「大きな大会の緊張感は自分が一番わかっているので、みんなにそういう刺激を与えながらやっていかないといけないなという責任感は持っています」と主力の自覚をはっきりと携えている。さらに今季はキャプテンにも指名されており、「自分は『勝たせるキャプテンになりたいな』と思っていて、プレー面でもボランチとしてやっているので、いろいろな形でボールに関わりながら、チームをまとめていきたいなと思っています」と確かな意欲も。全体のバランスを整えながらも、機を見て前へと上がった時にゴール前で果たす仕事の質にも要注目だ。

MF塚本類(大成高3年)
昨年から出場機会を得ていたサイドアタッカーは、「縦突破からのクロスだったり、縦突破を見せた後のカットインからシュートまで行くところは、自分の強みかなと思います」と明言するような、フィニッシュまで関われるタイプのドリブラー。「小学生の時に入っていたボアSCというチームが“ドリブルチーム”だったので、そこで自分はドリブルを教えていただいて、今があるという感じです」とも話しており、普段は三笘薫やアザールの映像を毎日のように見て、イメージを自分の中に蓄えている。今シーズンの目標を問われると、「まだ選手権で全国に大成は出ていないので、今年の代で絶対に出たいですし、大成の新しい歴史を刻みたいなと思っています」と言い切るメンタルも逞しい。まずは4年ぶりとなる夏の全国出場を引き寄せるため、この男のキレキレドリブルが大成に歓喜を呼び込めるか。

MF原田悠史(国士舘高3年)
高校サッカー界の超名将・本田裕一郎テクニカルアドバイザーが1年時から期待を寄せ続けてきた“秘蔵っ子”が、いよいよ最終学年を迎えている。下級生の頃はケガが多く、体力的な面を考慮されてジョーカー的な起用が多かったものの、「途中から出ると時間も短くて、点を決められるチャンスも少ないと思うので、ずっと朝練もしてきました」と地道な努力を重ねてスタメンを奪取。50メートルを5秒台で走るという圧倒的なスピードを武器に、タレントの揃う国士舘の中でも一味違うスパイスを攻撃に加えていく。自宅から通えないこともなかった中で、「ちゃんと自立したかったので寮に入りました」と寮生活を選択し、日常をサッカーに費やす意識の高さも。エムバペやネイマールを参考にしているというスピードスターが、国士館を最高速度で牽引する。

FW関根宏斗(実践学園高3年)
持ち味は、明確過ぎるぐらい明確だ。右サイドでボールを持ったら、そこからがこの男の見せどころ。縦に持ち出して鋭いクロスを上げたかと思えば、中に切れ込んでそのままシュートを打ち込むことも。ただ、本人は「昌平からFC東京に行った荒井(悠汰)くんみたいに、もっとグイッと縦に行けるような力がないと、自分が目標や夢として持っている舞台には行けないと思うので、もっとチャレンジしていきたいです」と1歳年上で同じレフティの存在を意識しつつ、さらなる成長を誓っている。中学時代は鹿島アントラーズジュニアユースでプレーしていたが、一念発起してオファーの届いた実践学園へ進学。「もっと東京の中でも圧倒的な力を見せて、実践の中でも歴代で一番強いチームだと言われたいですし、全国でも自分たちの特徴を見せていきたいなと思っています」と話すなど、このチームへの愛着も人一倍強い。

■執筆者紹介:
土屋雅史
「(株)ジェイ・スポーツに勤務。Jリーグ中継担当プロディーサーを経て、『デイリーサッカーニュース Foot!』を担当。群馬県立高崎高3年時にはインターハイで全国ベスト8に入り、大会優秀選手に選出。ゲキサカでコラム、『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』を連載中。著書に「メッシはマラドーナを超えられるか」(亘崇詞氏との共著・中公新書ラクレ)。」


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