[MOM4300]四日市中央工MF片岡空良(3年)_守備で走って、攻撃でまた走った主将。プラスの声がけも
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[5.26 インターハイ三重県予選準決勝 三重高 0-5 四日市中央工高 四日市市中央陸上競技場]
長らく4-4-2のダブルボランチをシステムとして採用してきた四日市中央工高だが、今年は推進力に長けたMF平野颯汰(3年)とMF山口叶夢(3年)の両翼の良さを引き出すため、4-3-3を採用していることが特徴だ。
新システムの鍵を握るのはシャドーを務める2人の出来。アンカーが一人で中盤の守備を担わなければいけないため、シャドーがカバーしなければアンカー脇のスペースを相手に突かれてしまう。自慢の両翼がサイドを攻略しても、前線は1トップであるためシャドーが出なければ中の厚みも生まれない。
実際、三重高との準決勝前に、伊室陽介監督は「とにかくシャドーが走らなければいけない。ハーフレーンを何往復もできる選手にならないと苦しい」と話していたという。ただ、蓋を空ければ心配はなかった。主将と10番の座を託されたMF片岡空良(3年=ソシエタ伊勢SC)がいたからだ。
「みんな緊張していて、自分たちのストロングである攻撃が連動していなかった」。そう振り返る前半でも片岡の存在は目立っていた。「小学校の時からお父さんに走れた方が良いと言われて、試合の中に他の人より走るだけでなく、オフの期間に走り込みをしてきた」ことで磨いた走力を活用。攻守に顔を出しつつ、ボールを受ければ正確なロングキックでサイドを変え、両ウイングによる仕掛けを引き出した。
キャプテンとしての仕事も目を惹いたポイント。三重に押し込まれる場面も多かったが、「まずは失点しないことが大事。我慢の時間が増えたので、みんなで一体感を持って守備から入ろうと声をかけていました」。0-0で試合を折り返し、選手には焦りも見られたが、伊室監督はハーフタイムに片岡が「大丈夫だから」と声をかけていたのが大きかったと振り返っている。
セカンドボールを拾う回数が増え、三重を押し込んだ後半も前半と役割は変わらない。「得点も欲しいのですが、まずはチームが勝つのが一番。中盤でしっかり走ってセカンドボールを回収して、ワイドにつけようと考えていた。前の人に仕事をしてもらえるよう、まず自分が走ろうと意識していました」。ただ、チャンスと見れば運動量を活かして思い切って前にも出て行く。
2-0で迎えた後半22分の場面は片岡の良さが出たシーンだ。ミドルゾーンの左で平野がボールを持つと、片岡は左サイド高い位置へと飛び出し、ゴール前にクロス。後方から飛び出したシャドーのパートナーMF西脇葉(3年)がヘディングでゴールネットを揺らした。
試合の入りは低調だったが、終わってみればスコアは5-0。「今日のMOMは片岡ですね。危ない時は帰ってくる。チャンスになったら出て行く。プレーだけでなく、プラスの声をかけてくれよというのを実践してくれている」。指揮官がそう称えたように快勝は片岡抜きで勝たれない。
昨年はDF山本拓弥(3年)と共に下級生ながら、インターハイで全国の舞台を経験している。特徴を出せた部分もあったが、3回戦では米子北高に1-2で敗戦。「全国のチームは身体が強くて走れると感じた」と振り返る片岡は足腰を鍛えるため、学校近くの山を走った他、チームで設定されている朝の自主練の前に個人練習を行ってきた。肉体強化に励んでいなかったため、以前は当たり負けする機会も多かったが、今はそう簡単には倒れない。成長をより実感するため、再び全国の舞台を経験したいと考えている。「しっかり自分たちのサッカーをして、2連覇し、全国では昨年を超えたい」と意気込む片岡なら、再び走力でチームを勝利に導くだろう。
(取材・文 森田将義)
●【特設】高校総体2023
[5.26 インターハイ三重県予選準決勝 三重高 0-5 四日市中央工高 四日市市中央陸上競技場]
長らく4-4-2のダブルボランチをシステムとして採用してきた四日市中央工高だが、今年は推進力に長けたMF平野颯汰(3年)とMF山口叶夢(3年)の両翼の良さを引き出すため、4-3-3を採用していることが特徴だ。
新システムの鍵を握るのはシャドーを務める2人の出来。アンカーが一人で中盤の守備を担わなければいけないため、シャドーがカバーしなければアンカー脇のスペースを相手に突かれてしまう。自慢の両翼がサイドを攻略しても、前線は1トップであるためシャドーが出なければ中の厚みも生まれない。
実際、三重高との準決勝前に、伊室陽介監督は「とにかくシャドーが走らなければいけない。ハーフレーンを何往復もできる選手にならないと苦しい」と話していたという。ただ、蓋を空ければ心配はなかった。主将と10番の座を託されたMF片岡空良(3年=ソシエタ伊勢SC)がいたからだ。
「みんな緊張していて、自分たちのストロングである攻撃が連動していなかった」。そう振り返る前半でも片岡の存在は目立っていた。「小学校の時からお父さんに走れた方が良いと言われて、試合の中に他の人より走るだけでなく、オフの期間に走り込みをしてきた」ことで磨いた走力を活用。攻守に顔を出しつつ、ボールを受ければ正確なロングキックでサイドを変え、両ウイングによる仕掛けを引き出した。
キャプテンとしての仕事も目を惹いたポイント。三重に押し込まれる場面も多かったが、「まずは失点しないことが大事。我慢の時間が増えたので、みんなで一体感を持って守備から入ろうと声をかけていました」。0-0で試合を折り返し、選手には焦りも見られたが、伊室監督はハーフタイムに片岡が「大丈夫だから」と声をかけていたのが大きかったと振り返っている。
セカンドボールを拾う回数が増え、三重を押し込んだ後半も前半と役割は変わらない。「得点も欲しいのですが、まずはチームが勝つのが一番。中盤でしっかり走ってセカンドボールを回収して、ワイドにつけようと考えていた。前の人に仕事をしてもらえるよう、まず自分が走ろうと意識していました」。ただ、チャンスと見れば運動量を活かして思い切って前にも出て行く。
2-0で迎えた後半22分の場面は片岡の良さが出たシーンだ。ミドルゾーンの左で平野がボールを持つと、片岡は左サイド高い位置へと飛び出し、ゴール前にクロス。後方から飛び出したシャドーのパートナーMF西脇葉(3年)がヘディングでゴールネットを揺らした。
試合の入りは低調だったが、終わってみればスコアは5-0。「今日のMOMは片岡ですね。危ない時は帰ってくる。チャンスになったら出て行く。プレーだけでなく、プラスの声をかけてくれよというのを実践してくれている」。指揮官がそう称えたように快勝は片岡抜きで勝たれない。
昨年はDF山本拓弥(3年)と共に下級生ながら、インターハイで全国の舞台を経験している。特徴を出せた部分もあったが、3回戦では米子北高に1-2で敗戦。「全国のチームは身体が強くて走れると感じた」と振り返る片岡は足腰を鍛えるため、学校近くの山を走った他、チームで設定されている朝の自主練の前に個人練習を行ってきた。肉体強化に励んでいなかったため、以前は当たり負けする機会も多かったが、今はそう簡単には倒れない。成長をより実感するため、再び全国の舞台を経験したいと考えている。「しっかり自分たちのサッカーをして、2連覇し、全国では昨年を超えたい」と意気込む片岡なら、再び走力でチームを勝利に導くだろう。
(取材・文 森田将義)
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