beacon

“チーム堀越”で挑んだ一戦で「針がカチッとハマるきっかけ」になり得る劇的勝利。堀越は国士舘との激闘に1-0で競り勝つ!

このエントリーをはてなブックマークに追加

堀越高は終盤の決勝ゴールで次のラウンドへ!

[5.28 インターハイ東京都予選1回戦 堀越高 1-0 国士舘高 堀越学園総合グラウンド]

 チームには1年を振り返ると、ここがターニングポイントになったと思い起こせるゲームがあるはずだ。苦しみながらも、粘り強く手繰り寄せたこの日の勝利は、もしかしたら彼らにとってのそれになり得るのかもしれない。

「しっかり守れて、崩れずに、最後に点を獲れたというところで言うと、1つ階段を上がっていきそうな感じはありますね。だいたい優勝する時は、シュート1本で相手もバンバンシュートを打っているのに、なぜか勝てちゃいました、という試合もあって、そういう針がカチッとハマるきっかけになるのかなとは思いました」(堀越高・佐藤実監督)。

 令和5年度全国高校総体(インターハイ)「翔び立て若き翼 北海道総体 2023」男子サッカー競技東京都予選1回戦が28日、堀越学園総合グラウンドで開催され、夏の全国出場4回を誇る堀越高と、昨年度の高校選手権予選ファイナリストの国士舘高が激突した名門対決は、後半37分にエースのFW高谷遼太(3年)が劇的な決勝弾をマークし、1-0で勝利を収めた堀越が2回戦へと駒を進めている。

 試合の構図は明確だった。「攻撃はビルドアップでキーパーの吉富を前に出させて、相手の陣地で外回ししていって、どこかのタイミングでフォワードの高谷に当ててから、という攻撃の“画”はありました」とキャプテンのFW中村健太(3年)も話した堀越は、足元の技術に定評のあるGK吉富柊人(3年)も高い位置を取り、DF森章博(2年)とDF森奏(2年)のセンターバックと3人でボールを動かしながら、時折高谷へのフィードを織り交ぜ、主導権を奪いに掛かる。

 一方の国士舘はある程度長いボールを前線のFW前田晴飛(3年)とFWワフダーン康音(3年)に預けつつ、セカンドボールをMF奥野駿太(3年)とMF島田龍(2年)のドイスボランチが回収すると、右のMF原田悠史(3年)と左のMF大関流生(2年)を生かした両翼の推進力勝負に。前半15分には左サイドを抜け出した前田のシュートが左ポストを叩くなど、シンプルな手数からチャンスを作り出す。

 堀越も30分にはFW伊藤蒼太(3年)が右へサイドを変え、運んだ中村のシュートはゴール右へ。33分にもDF竹内利樹人(2年)も関わるアタックから、中村のパスを受けた高谷の左足シュートは枠を越えるも好トライ。「結局ブロックの外回しで動かすだけで、最後の核のところにはあまり入れていなかったですし、国士舘さんの出足とか、攻撃の球際のところとか、そういうところは凄く勢いもありましたね」とは堀越を率いる佐藤実監督。前半は0-0のままで40分間が終了した。

 後半のファーストチャンスは堀越。5分に自らの突破で獲得した右CKを中村が蹴り込むと、高谷が良いポイントへ飛び込むも頭に当て切れず。以降も中盤に入ったMF吉荒開仁(3年)、MF渡辺隼大(2年)、MF小泉翔汰(2年)がボールを受け、左のDF佐藤優真(3年)と伊藤の縦関係が仕掛ける形を作るも、決定的な局面までは至らない。

 すると、国士舘のパワーがゲームリズムを少しずつ引き寄せていく。16分にはキャプテンマークを巻くGK大阪竜也(3年)が蹴ったフィードから、右サイドを鋭い切り返しで抜け出した原田のシュートは、吉富が何とかキャッチ。21分には左サイドを駆け上がったDF安井創太(3年)のクロスから、最後は前田が至近距離から決定的なシュートを放つも、ここは吉富がビッグセーブ。さらに終盤の34分にも、島田を起点に原田が繋ぎ、再び前田が枠へ収めたシュートは、吉富がまたもファインセーブ。188センチの大型守護神が堀越を水際で押しとどめる。

 ストライカーは、その時をずっと待っていた。37分。吉富のフィードは大きく伸びて、相手のDFラインとGKの間に落ちると、「最初は『自分が競れればいいな』ぐらいの感じで走っていたんですけど、相手が頭でバックパスするタイミングだったので、何か起きればと思って、そこに足を出したらうまく当たってくれました」と振り返った高谷が伸ばした足でつついたボールは、飛び出したGKと入れ替わるような形でゆっくりとゴールネットへ吸い込まれる。

「ああいうところに行かないと、ああいうことは起こせないですから」と佐藤監督も認めた執念の一撃に、「ここで自分がやらないと延長に行くこともわかっていましたし、泥臭く1点獲れたのは良かったと思います。とても気持ちが良かったですね。これが自分の仕事なので」と高谷も笑顔。9番のストライカーが大仕事。土壇場で堀越が一歩前に出る。

 国士舘も諦めない。40分。落ち着いてサイドへと展開する流れの中から、投入されたばかりのMF宮澤龍生(3年)が懸命に残したパスを、ストライカーのワフダーンが頭で必死に押し込むも、ここも吉富が決死のセーブでボールを辛うじて掻き出してみせる。

「最後のところで良いセーブができたかなと思います」と胸を張った守護神のビッグプレーが飛び出すと、これがこのゲームのラストチャンス。「本田(裕一郎)先生の勝負勘とか、選手に落とし込んでいる強いものは絶対にあって、今日を見ていてもそうでしたし、そこを破れたというのは1つの自信にしていいと思います」と佐藤監督も口にした堀越が国士舘にウノゼロで競り勝って、次のラウンドへと勝ち上がる結果となった。

 この両チームは関東大会予選2回戦でも対峙しており、その時は3-3と激しく打ち合いながら、最後はPK戦の末に堀越が準々決勝進出を手にしていた。

「前回は3-3だったんですけど、今回は1-0で勝てたことが大きいですね。無失点に抑えられましたし、1点を獲って、全員で守り切れたので、次に繋げられる部分も多いと思います」と吉富が話せば、「1回勝った国士舘さんとまたやらせてもらう中で、『ここを勝てばまた波に乗れるし、ここがヤマだよね』というのは試合前にも話していて、自分たちもそこを感じながら練習試合や練習を積み重ねてきましたし、みんなが高い意識を持ってくれていたので、最後まで粘り強くゼロに抑えられたと思います」とは中村。厳しい試合をモノにして難敵を乗り越えたことが、今後に向けてのポジティブな収穫であることは言うまでもない。

 実はこの大会を前にして、堀越は順天堂大と練習試合を行ったが、そこで関東大学リーグでも活躍している2人の“OB”からメッセージをもらったという。

「太聖とか琉維にも話を聞いたんです。太聖は『まず大会があって、準備できることに感謝しよう』と言っていましたし、琉維も『高校サッカーは1回だけだから、悔いを残さないように準備しよう。オレたちがやってきていることが堀越なんだから』と話してくれて、それで今のチームのベクトルもちゃんとハマってきたんですよね。彼らはこのチームを一緒に創ってきたので、言葉の重みが違うんです。僕が創ってきてアイツらを卒業させたというよりも、彼らが創っていって卒業していったので、『オマエたちにも絶対に責任があるよね』と(笑)。だから、運命共同体なんです」(佐藤監督)。

 2019年度のキャプテンを務めていた坂本琉維(順天堂大4年)と、2020年度の主力として選手権全国8強を経験し、大会優秀選手にも選出された井上太聖(順天堂大3年)という、近年の堀越が築いている歴史と伝統の一翼を担っていた先輩のメッセージには、“後輩たち”も感銘を受けたようだ。

「『みんなが頑張ってきたことは間違いではないし、ちゃんとやることをやれば結果と結びつくから、自信をもってやればいい』という言葉を下さって、『自分たちがやっていることは間違っていないんだな』と改めて確認できて、そこは心に響きました」(中村)「日野くんもプロになりましたし、堀越にとってもいろいろな影響をもたらしてくれる先輩たちがいる中で、自分たちも先輩たちに良い報告ができるように、しっかり結果で恩返ししたいなと思います」(高谷)。

 さらに高谷も言及したように、井上と同期に当たる日野翔太(拓殖大3年)は先日サガン鳥栖への入団内定が発表された上に、ルヴァンカップでJリーグデビューも飾っており、後輩たちにその背中を見せることで、最高の刺激をもたらしてくれている。

 好守連発で勝利に貢献した吉富は、きっぱりとこう言い切った。「今回の国士舘も手強い相手でしたし、次はT1(東京都1部リーグ)の大成が相手で、その次の(國學院)久我山はプリンスですし、本当に毎試合毎試合決勝戦みたいな試合に勝たないといけないですけど、そこを抜ければ全国でも良いところまで行けるとみんな思っているので、そういうチームとの対戦を楽しみにやっていきたいです」。

 その伝統は、先輩たちの努力で積み上げられた、まさに“チーム堀越”の結晶。多くの人の想いはしっかりと背負ってきた。あとは、19年ぶりとなる夏の全国大会へとひたすらに突き進むだけだ。



(取材・文 土屋雅史)
●【特設】高校総体2023

TOP