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プリンスの経験生かし、見せた力の差。東北学院が4発快勝で東北生文大との師弟対決を制す:宮城

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22大会ぶりの優勝を果たした東北学院高イレブン

[6.5 インターハイ宮城県予選決勝 東北生文大高 0-4 東北学院高 めぐみ野A]

 令和5年度全国高校総体(インターハイ)「翔び立て若き翼 北海道総体2023」男子サッカー競技宮城県予選決勝が5日、みやぎ生協めぐみ野サッカー場Aで行われ、東北学院高が東北生文大高を4-0で下し、22大会ぶり10回目の優勝ならびに5大会ぶりのインターハイ出場(平成29年度は地元開催で2位出場)を決めた。

 東北学院は昨年の今大会も決勝まで駒を進めたが、聖和学園高に敗れて準優勝。しかし、今年はその聖和学園に準決勝で1-0で勝利し、2年連続決勝の舞台に立った。

 一方の東北生文大は初の決勝進出。元々は女子校だったが、20年前に共学化。サッカー部は今年で就任9年目を迎える川村聡監督の下地道な強化を図り、昨年の今大会もベスト4進出を果たした。

 今年は宮城県リーグU-18 1部に初昇格し、3位と好調。そして今大会準決勝では、準々決勝で優勝候補・仙台育英高に勝利し勢いに乗る多賀城高に2-0で勝利して、ついに決勝の舞台に登りつめた。また、川村監督は東北学院出身で、橋本俊一監督が高校時代の恩師。師弟対決という面でも注目を集めた。

 試合の入りは東北生文大が果敢に東北学院陣内へと攻め入ったが、先制したのは東北学院だった。前半5分、キャプテンのFW齋藤虎宇(3年)が左サイドを勢い良くドリブルで駆け上がる。「悔いの無いように自分を出そうと、強引なドリブルをしました」と勢いに乗って相手陣内深くに進入してクロスを上げる。すると、ゴール前に入っていたFW佐々木流空(2年)が落ち着いて左足を振り抜いてゴールネットを揺らした。「虎宇さんが左サイドをドリブルで持って行ってくれたおかげなので感謝しています」と先輩からの最高のお膳立てに感謝の言葉を述べた。

 さらに前半22分。左SH鈴木太都(3年)がドリブル突破からクロス。ゴール前に飛び込んでいた右SH伊藤律稀(3年)が左足でゴールに押し込み、貴重な追加点を獲得した。2点のビハインドとなった東北生活文化大は前半シュート1本に抑えられる苦しい展開。2-0で東北学院リードのまま前半を終えた。

 後半は「ボールを大事にしようという話があり、良いプレーも出た」と東北生文大キャプテンMF松本千弘(3年)が語る通り、東北生文大が反撃に転じ、丁寧にパスをつないだビルドアップからゴールへ襲いかかる。

 後半12分に松本が放ったミドルシュートはゴール枠内だったが、東北学院GK橋本脩礼(2年)がパンチングでかき出すビッグセーブを見せ、惜しくも得点できなかった。そんな中、背後のスペースを狡猾に狙っていた東北学院は後半21分、齋藤が左サイドを抜け出してクロス。クロスを受けたのは1点目を決めていた佐々木。ペナルティエリアの外だったが、「シュートで終わろうと思った」と左足を振り抜くと、綺麗な弧を描いてゴールネットに突き刺さるスーパーゴールとなり、試合の行方を決定づける3点目となった。後半33分には途中出場のMF嶺岸颯人(2年)もゴールを決め、4-0で東北学院が完勝した。

 東北学院は今年、プリンスリーグ東北に初昇格し、東北各地の強豪相手に苦しみながらも懸命に勝点を積み重ねていた。「プリンスリーグの強度が高いので、それに対応できるようにやってきました。ベガルタ、モンテ、山田とやらせてもらって、チーム力が上がって成長しました」と橋本監督は選手の成長を喜んだ。

 とりわけ昨年のルーキーリーグ全国大会にも出場した2年生選手の成長がめざましかった。「GKとDFラインは全員2年生で、一部の3年生からはなぜなのかと言われたこともありました。2年生が力があることを証明できて嬉しいです」と辛抱強く使い続けた2年生選手の活躍を喜んだ。その2年生の一人であるGK橋本脩礼と橋本俊一監督は実の親子。「息子(脩礼)と一緒に選手権に出ることを目指していますが、インターハイで一つ目標を達成できました」と親子鷹で全国の舞台に臨めることを喜んでいた。

 一方、初の決勝進出で、インターハイ初出場を目指した東北生文大・川村監督は「スピード感に慣れる必要がありました。立ち上がり失点しないことを目指していましたが、あと一歩出るのが遅くてやられてしまいました」と早い時間帯の失点を悔やんだ。また、「全部が初めての経験で、大観衆に呑まれたと言いますか、自分たちのコミュニケーションが声援で聞こえないことがありました」。コロナ禍後初の声出し応援が行われ、両校から多くの応援が詰めかけ、常に大声援が送られる決勝独特の空気を初めて体感し、その雰囲気になじむまでに時間がかかった。

 それでも初めて決勝の舞台に立てたのはチームとして大きな経験だ。「選手権に向けて選手は感じるものがあったと思います。昨年も準決勝で負けましたが、準決勝と決勝では当事者としての悔しさが2ランク、3ランク上だと思います。深い悔しさはプラスになります」と川村監督は選手たちが決勝で負ける悔しさを初めて体感できたことをポジティブに捉えていた。

 キャプテンの松本も「自分たちにはこの後、東北高校サッカー選手権大会(6月16日からJヴィレッジで開催)があります。この大会に向けて準備し、全部の力をぶつけます。先輩方は行けなかった大会ですし、後輩たちに伝えていきたいです」と初の東北高校サッカー選手権出場権を獲得したことで、さらなるレベルアップを図り選手権につなげていきたいという。

 東北学院・橋本監督と東北生文大・川村監督の公式戦での師弟対決は過去にもあったが、全て東北学院が勝利していて、今回も東北学院勝利に終わった。橋本監督は「星稜高の河崎護元監督も教え子が石川県内で育っていたそうですが、負けていませんでした。川村先生には日に日に成長を感じていますが、成長しても常に負けないように心がけています」と今後も絶対負けたくない気持ちを見せた。一方の川村監督は「個人的に母校とこんな大舞台でやれるのは幸せですが、いつか一矢報いたいので、ただ頑張るしかありません」と次こそ母校を倒そうと意気込みを語った。

 長らく仙台育英、聖和学園の2強状態が続いた宮城県の高校サッカーは、復活した古豪東北学院と、急速に力をつける新興勢力東北生文大の躍進で、今後ますます面白くなりそうだ。
 
(取材・文 小林健志)
●【特設】高校総体2023

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