beacon

今年も進化を続けて逞しいチームに。大津が5-0で熊本制覇

このエントリーをはてなブックマークに追加

前半14分、大津高FW山下景司(左)が先制ゴール

[6.7 インターハイ熊本県予選決勝 大津高 5-0 ルーテル学院高 えがおS]

 今年も進化を続ける大津が熊本制覇――。令和5年度全国高校総体(インターハイ)「翔び立て若き翼 北海道総体 2023」男子サッカー競技熊本県予選決勝が7日に行われ、2大会連続全国8強の大津高が、5大会連続23回目の全国大会出場を決めた。決勝でルーテル学院高と対戦した大津は、5-0で快勝。悲願の全国制覇を目指し、インターハイに臨む。

 一昨年度の選手権で準優勝、昨年度の同大会も3位。プレミアリーグWESTで唯一の公立校は、強豪との対戦で揉まれながら、チームの土台をより高め、才能を磨き上げている。今年は、MF碇明日麻主将(3年)と左SB田辺幸久(3年)をいずれも日本高校選抜候補合宿で欠いていたとは言え、県新人戦準決勝で敗戦。下級生も多く、不安視されてスタートした世代だ。だが、日常、またリーグ戦を経て着実に成長。この日は全国切符をかけた試合を5-0で終えた。

 立ち上がりにまず押し込んだのは、10年以来13年ぶりのインターハイ出場を狙うルーテル学院の方。「真っ向勝負で行こうと」(小野秀二郎監督)と王者に挑戦したルーテル学院は開始50秒、高い位置でのボール奪取から素早く攻めてフィニッシュへ持ち込むと、7分にも左WB白濱拓空(3年)の突破からゴール前のシーンを作り出す。

 だが、大津は切り替えの速さとセカンドボールの回収で相手を凌駕する。また、「相手は上下のエネルギーが強いので、横に横に外したいなと」(山城朋大監督)という狙いで、これまでの3バックから決勝は4バックへ変更。幅を活用した攻撃で相手の前へのパワーを分散させた。

 そして、右サイドのSB大神優斗(2年)、SH古川大地(3年)とFW山下景司(2年)の連係が良く、相手3バックを攻略していく。すると14分、この日、左サイドで貢献度の高い動きを見せていたMF稲田翼(3年)からのパスを受けた碇が、強引に左足シュート。こぼれ球に素早く反応した山下が左足でゴールへ蹴り込んだ。

 山城監督が「山下、調子悪かったけれど、さすがエースストライカーでしたね」と讃えた2年生ストライカーの一撃でリード。さらに20分には、右サイドでボールを受けた古川が、中へ持ち出しながらゴール方向へクロスボールを入れる。意図的に枠を狙ったボールは、GK頭上を越えて左隅へゴールイン。意外な形のゴールで点差は2点となった。

 ルーテル学院・小野秀二郎監督が「あの時間帯が15分、20分までやれないとダメ。(勢いの時間が)終わっちゃうのが早かった」と残念がった序盤の攻勢。立ち上がりから前に出てやり合っていたが、ボールを奪い切れずに押し込まれてしまった。DF池田桜介主将(3年)とDF山下裕稜(3年)、DF青島知輝(3年)の3バック中心に我慢強く対応していたが、CKを増やされ、残念な形での失点も。「ウチはシュート打つところの枠を大きくするというのは言ってあった」(大津・山城監督)という大津とのシュートエリアの広さ、シュートの強弱の差も2点差の要因となってしまった。

 ルーテル学院は、前線で存在感を放つ163cmFW長崎義喜(3年)が積極的にドリブル、シュート。前半アディショナルタイムに放ったミドルシュートは枠を捉え、相手を脅かした。だが、大津は名将・平岡和徳総監督の発案でCBからGKへコンバートされたGK坊野雄大(2年)が好反応。転向したのは昨夏で、まだGK歴1年弱の坊野は、その後も安定したキャッチングを見せるなどルーテル学院の前に立ちはだかった。

 大津は田辺を起点とした崩しやクロスから決定機を作り出したが、相手GK久保田大翔(2年)の好守に阻まれるなど3点目を奪うことができない。対するルーテル学院は「0-1、0-2だったら最低限行けるんじゃないかと(交代カードの)2人を切った」(小野監督)。後半開始から交代出場のFW松本彩夢(3年)とMF坂本臣(3年)が攻撃のテンポを上げ、中央から割って入るようなシーンも作り出す。

 だが、大津は今大会で先発チャンスを得たCB吉本篤史(3年)が安定し、CB五嶋夏生(2年)が前への強さを見せる。また、MF兼松将(2年)とMF嶋本悠大(2年)、交代出場MF日置陽人(3年)とボランチで出場した選手たちも守備に加えて捌きやスキル、活力といったそれぞれの強みを発揮。一方のルーテル学院は19分に青島を前線へ上げ、MF高田昊青(3年)がセカンドボールを拾って前進するなど相手に圧力をかける。

 だが、大津は決定打を打たせない。逆に27分、右CKのクリアを拾った古川がゴール方向へ左足クロス。これが相手DFのオウンゴールを誘って突き放すと、30分には古川がドリブルで獲得したPKを碇が右足で決めて4-0とする。そして、アディショナルタイムにもMF中村健之介(2年)とのパス交換でFW徳永雄斗(3年)が抜け出し、左足で5点目。交代出場コンビによるゴールでダメ押した。山城監督は「(春先に比べて)逞しくなってきましたね」。大津が、5-0で全国切符を獲得した。

 前日の準決勝は動きが重く、不満の内容。選手たちは、4-0で快勝した選手権予選決勝の映像を見て、決勝に臨んだ。碇は「選手権決勝の映像を見て、相手のロングボールをしっかり弾いて、ロングボールを蹴っても意味がないと相手に思わせて、セカンドボールを拾って相手に時間を与えない。そういう試合展開をしたいと臨んで、まさに選手権のプレーいうか、後ろはしっかり弾けて、中盤の選手はしっかりセカンドボールを拾ってというところで良いゲームができたと思います」と喜ぶ。連覇を5でストップしてしまった新人戦の悔しさもぶつけ、無失点で優勝。ここから大津らしい追い越す動きなどを増やし、インターハイへ向かう。

 山城監督は全国トップレベルの強豪校に比べると、まだまだ成長が必要という評価。「(サイズの大きさも今年の特長だが、)もっと機動力のあるサッカーをしていきたい」。そして、碇は成長しながら九州連覇、全国制覇を目指していくことを掲げた。「チームとして一人ひとりが全国レベルの選手になりながら、目標を高い位置に置いて、それを達成して、少しずつ少しずつ成長しながら全国制覇という目標が達成できたら良いんじゃないかなと思っています」。チームには下級生も多く、伸びしろも十分。インターハイまでの1か月半、また大会期間中も、進化を続ける。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2023

TOP