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11人目までもつれ込んだPK戦を勝利。経験、成長重ねる国見が10年以来のインハイへあと1勝

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国見高がPK戦を制し、長崎決勝へ

[6.8 インターハイ長崎県予選準決勝 海星高 1-1(PK8-9)国見高 県立百花台公園サッカー場]

 令和5年度全国高校総体(インターハイ)「翔び立て若き翼 北海道総体 2023」男子サッカー競技長崎県予選準決勝が8日、雲仙市の県立百花台公園サッ カー場で開催され、昨年度選手権出場校の国見高が決勝進出を決めた。国見は海星高と対戦。1-1からのPK戦を9-8で制した。

 雨の中続いたPK戦は、11人目で決着した。先攻・国見の1人目と2人目を海星GK汐崎弘心(3年)が連続でストップ。汐崎は延長後半9分に相手エースのFW中山葵(3年)のPKを止めてから3連続でPKを止め、会場をどよめかせた。

 だが、海星は1人目と3人目のシュートがポストをヒット。この後、10人目まで両校の全選手が成功した。迎えた11人目、国見の2年生GK松本優星が決着をつける。キッカーとして冷静にゴールを決めると、直後に相手のキックを右へ跳んでストップ。選手たちはスタンドの応援団の下へ駆け寄り、喜びを爆発させた。

 国見の木藤健太監督は12年ぶりに出場した選手権の効果について、「チームの底上げ。基準はできている。全国出ると変わってくる」と語る。新人戦ではまさかの初戦敗退に終わったが、全国を体感したことで目に見える変化。今年はより勝負の肝を逃さない、「勝負どころが分かる。勝ち切るというか、これが当たり前なんだというチームにしていかないと」。この日はゲームコントロールの甘さが出てしまったが、それでも今後へ向けて貴重な経験、白星となった。

 海星は攻守に力のある選手が揃う好チームだった。序盤からFW塩塚駿介主将(3年)とFW増山志道(2年)の強力2トップや、いずれも個の力のあるMF西山陸(3年)、MF本村碧海(2年)の両SHにボールを集めて攻撃。11分には左SB高西蒼太(3年)の左アーリークロスを塩塚が頭で合わせて先制点を奪う。

 だが、国見はすぐ同点に追いつく。14分、MF門崎健一(2年)が左サイド後方から蹴り込んだFKをCB中浦優太(3年)が頭でゴールを破った。このあと、前線、サイドを起点とする海星に対し、国見は斜めのラストパスやアーリークロスでチャンスを作る。後半10分には視野の広さと技術力で幾度もボールを前進させていた門崎の右足ミドルがクロスバーを叩いた。

 今年の国見は中山、FW西山蒔人(2年)の2トップのモビリティの高さが特長。だが、海星に押し返されて攻撃の起点が低くなっていたこともあってか、単調なロングボールが増えてしまう。これを海星CB小倉遥翔(3年)らに跳ね返され、セカンドボールは抜群の動きを見せていたMF藤本龍星(3年)に再三回収されていた。国見は中山の抜け出しなどから幾度かチャンスを作っていたものの、仕留めることができない。

 一方の海星は敵陣深い位置までボールを運び、シュート、クロスでセットプレーを獲得する。32分には、左右両足でプレースキックを蹴り込んでいた小倉の右CKのこぼれをMF川上大翔(3年)が左足でゴールへ流し込む。だが、オフサイドでノーゴールの判定。1-1で突入した延長戦の前半4分には、交代出場でキレのある動きを見せたFW町田龍音(3年)のラストパスから本村が右足を振り抜く。だが、これも国見左SB古川聖來(2年)にブロックされてしまう。

 海星はCBへポジションを移した藤本がここでも守備センスの高さを示し、小倉も対人守備の強さを発揮。そして、延長後半9分にはGK汐崎がPKをストップした。だが、国見も選手権経験者のCB平田大耀主将(3年)と中浦中心に粘り強い守り。2点目を許さず、両校計22人が蹴ったPK戦の末、13年ぶりのインターハイ出場へ王手をかけた。

 国見の木藤監督は悪い内容でも決め切る力やセットプレーを与えないようなしたたかな守備を求める。「若さがあるなというところがある。ゲームを見る、読むところを選手たちが気付けるようになれば。(ただし、)去年のチームよりも伸びしろがあるなと思っている」。2連覇中だった長崎総合科学大附高との3回戦では気持ちを全面に出して1-0で勝利。逆に受けてしまうところのあった準決勝の勝利もチームの自信、強化に繋げる。

 国見は決勝で長崎日大高と対戦する。木藤監督は「(新人戦での敗戦から)選手たちもキャプテンを中心に何とかチームを変えていこうと努力していた。彼らの成長がどれくらい見られるか。日大さんは強いので、新人戦も取っていますし、ウチらはチャレンジャーなので思い切ってぶつかっていきたい」と語った。

 平田は選手権に続く、全国大会出場を誓う。「選手権ベスト16は僕たちにとっても良い刺激ですし、高総体は去年出ていないので、ここで絶対に自分たちが出るんだという強い気持ちをみんな持っています。(決勝も勝って、)絶対に優勝します」。選手権優勝6回、インターハイ優勝5回、かつての常勝軍団は、取り組んできた攻撃のクオリティや内容にもこだわりながら必ず勝つこと。勝って目指す姿へまた一歩近づく。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2023

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