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仙台育英、利府をPK戦の末に下して3大会ぶりV!! プリンス東北開幕5連敗から守備を改善して全国切符獲得

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サッカー部の先輩、宮城県出身お笑い芸人パンサー尾形貴弘さんの「サンキュー」ポーズで優勝を喜ぶ仙台育英高の選手たち

[6.3 インターハイ宮城県予選決勝 仙台育英高 0-0(PK3-0) 利府高 めぐみ野B]

 令和6年度全国高校総体(インターハイ)宮城県予選決勝が3日、みやぎ生協めぐみ野サッカー場Bで行われ、仙台育英高利府高をPK戦の末に下し、3大会ぶり21回目のインターハイ出場を決めた。

 今大会は波乱が相次いだ。プリンスリーグ東北で現在2位につけてプレミアリーグプレーオフ出場圏内に入り、優勝候補と目されていた聖和学園高が、宮城県リーグ1部首位で昨年度今大会優勝の東北学院高に準々決勝で敗れた。その東北学院に準決勝で勝利したのは宮城県リーグ1部で現在5位で公立の利府。粘り強い守備を武器に久々の決勝進出で、20大会ぶり3回目のインターハイ出場を目指した。一方の仙台育英は、準々決勝では宮城県リーグ2部の仙台城南高相手に延長戦で2-1、準決勝も宮城県リーグ1部4位の宮城工業高に1-0といずれも辛勝。苦しみながらもファイナルの舞台に辿り着いた。

 試合は立ち上がりから仙台育英が相手DFの背後へロングボールを送り、FW伊藤琉斗(2年)やトップ下に入ったFW中西大晴(3年)、右サイドハーフのMF石川真斗(2年)やMF長滝立優(2年)が積極的にゴールへ襲いかかった。前半8分には中西の直接FKがクロスバーを叩くなど惜しい場面もあったが、利府はキャプテンのDF齋藤瑞(3年)を中心として体を張った守りを見せ、GK近藤拓実(3年)もファインセーブを見せた。利府はカウンターからDF市川潤(2年)が2本のシュートを放ったが、DFにブロックされる。

 前半を0-0で終え、後半頭から利府はFW鈴木太智(3年)を投入。鈴木はロングスローを得意とし、後半はロングスローから何度か好機をつくった。一方の仙台育英も石川のロングスローからゴールを狙うがなかなか得点は生まれない。準々決勝から3日連続での試合ということもあり、疲れも見え、後半も得点を奪えずに延長戦に突入する。延長前半は仙台育英が何度か好機をつくるも得点できず、逆に延長後半は利府がロングスローやCKからゴールに迫るが決め切れない。0-0のまま、試合はPK戦に突入した。

 PK戦は1人目が両チームともゴール左に外す。仙台育英の2人目が決めると、利府のキッカーの前に立ちはだかったのが仙台育英GK小川陽海(2年)だった。「スカウティングの情報通りでした」と左に跳んでPKストップを見せた。仙台育英が3人目も決めたのに対し、利府はポストに当てて失敗。仙台育英は4人目のDF佐藤杜羽(3年)が落ち着いて決めて3-0でPK戦終了。仙台育英が苦しみながらも3大会ぶりのインターハイ出場を決めた。

 仙台育英の今年の代は、ここまで順風満帆ではなかった。昨年11月の宮城県新人大会は聖和学園に敗れて準優勝、今年1月の東北新人大会も初戦敗退。4月から始まったプリンスリーグ東北は開幕5連敗を喫し、下位に低迷している。城福敬監督は「どんな試合をしても失点していたのですが、最後の2つ(プリンスリーグ東北第6節、第7節)に勝てて、最後(第7節)は失点0で行けました。0で行けば1点取れれば勝ちます」と、5連敗後の2連勝で守備の立て直しに目処が立ったことが、今大会大崩れしなかった要因だったという。

 昨年は左SBだったが、今年はCBを務めるキャプテンのDF渡邊留唯(3年)は「守備に課題があって失点が多かったので、チームミーティングでも話しましたし、バックライン4枚で毎日朝6時半から朝練をやりました。高さが無いので、競り勝てるようにフィジカルトレーニングもしました。その成果がプリンスリーグ東北の2試合と今大会につながりました」と守備陣での鍛錬の成果が結果に表れたことを喜んだ。

 ただ、守備を立て直して全国への切符を勝ち取ったが、城福監督は得点の少なさをインターハイに向けての課題に挙げる。「このサッカーが育英のサッカーと思われたくはありません。今はロングスローで何か起こさないとチャンスになりません。何かしっかりした攻撃の形が必要です」と攻撃を改善していきたいと話し、中西も「チャンスをつくりましたが、決定力がありませんでした。全国でも通用する得点力をつけたいですね」とさらに攻撃力を高めていきたいと口にした。キャプテン渡邊が「育英は堅守速攻で、全員で守って全員で攻撃するサッカーです。宮城県代表として悔いの無い戦いを見せて、全国ベスト8以上を目指します」と上位進出を目標に掲げたように、次は攻撃を立て直して全国の舞台に挑みたいところだ。

 一方、あと一歩で20大会ぶりのインターハイ出場を逃した利府の澤村東監督は「苦しい時間帯を我慢していけたのですが、最後は経験でした。PK戦はキックのちょっとした差が出ました。PK戦は今大会3回目だったのですが、決勝は独特のプレッシャーがありましたね」とわずかな差を感じたという。それでも「一戦一戦苦しい中、ワンチャンスを取って勝ち上がって我慢していけば、最後まで行けるということを経験することができました」と得難い経験ができたことを収穫と捉えていた。「僕は就任して13年目なのですが、東北大会は初めてです。質の高いゲームをして、リーグ戦や選手権にもつないでいきたいです」と語る澤村監督。全国大会の常連である私立校相手にあと一歩で勝つところまで追い詰めた経験を今後に生かしたい。

(取材・文 小林健志)

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小林健志
Text by 小林健志

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