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前回全国2位の神村学園が狙い通りの戦いでライバルに快勝し、鹿児島8連覇達成。「まだまだ発展途上」のチームはこれから

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[5.24 インターハイ鹿児島県予選決勝 神村学園高 3-1 鹿児島城西高 OSAKO YUYA stadium]

 神村学園がライバル対決を制し、8連覇達成。令和7年度全国高校総体(インターハイ)男子サッカー競技鹿児島県予選決勝が24日に南さつま市のOSAKO YUYA stadiumで開催され、7連覇中の神村学園高鹿児島城西高が対戦。神村学園が3-1で勝ち、8大会連続11回目の全国大会出場を決めた。

 両校の決勝での対戦は5大会連続。前回大会決勝は35分ハーフの後半29分に鹿児島城西が先制したが、神村学園がそこからの2得点で7連覇を達成している。だが、同年度の選手権予選決勝では鹿児島城西が1-0で神村学園の8連覇を阻止。ライバル対決は、選手権予選のリベンジに燃える神村学園が快勝を収めた。

 神村学園は今年2月の九州高校新人大会優勝校で、プレミアリーグWESTに所属(暫定8位)。この日の先発はGK寺田健太郎(3年)、DF鎌田心(3年)、中野陽斗主将(3年/U-17日本高校選抜)、今村太樹(3年)の3バック、右WB竹野楓太(2年)、左WB中村大志(3年)、ダブルボランチが堀ノ口瑛太(3年)と福島和毅(3年/U-18日本代表)、トップ下に花城瑛汰(2年/24年U-16日本代表候補)、そして徳村楓大(3年)、日高元(3年/U-17日本高校選抜候補)が2トップを組んだ。

8連覇、そして昨秋の雪辱に燃えていた神村学園

 一方、鹿児島城西はプリンスリーグ九州1部で7勝1敗の成績で首位。先発GKが鵜木柊音(3年)でDFは右から寺田翔真(3年)、重盛響輝主将(3年)、浮邉泰士(3年)、中村颯太(3年)の4バック。中盤は常眞亜斗(3年)と吉田健人(3年)のダブルボランチで2列目に別府拓眞(3年)、松崎佑真(3年)、野村颯馬(3年/24年U-16日本代表候補)が並び、最前列に注目FW大石脩斗(3年/U-17日本高校選抜)が構えた。

鹿児島城西は選手権予選に続くライバル撃破にチャレンジ

 この日は大雨予報で、大会は当初10時開始予定の3位決定戦を13時開始の決勝後に開催することを前日の時点で決定。さらに大雨警報や雷注意報の出ていた24日午前には、決勝の開始時間を14時へ変更し、3位決定戦を近隣の桷志田サッカー場A(南さつま市)で14時から行うことが発表された。南さつま市は1時間に75ミリの雨を記録するほどの荒天だったが、その後、天候は回復し、水抜きの作業によってピッチコンディションも回復。だが、強風が続き、選手たちはその対応に気を配りながらの戦いとなった。

 立ち上がり、風上の鹿児島城西がプッシュ。大石が左サイドでFKを獲得し、別府が縦への仕掛けをCKに結びつける。5分には野村の左クロスに大石が反応。だが、これは神村学園DFがCKに逃げる。

鹿児島城西は立ち上がり、U-17日本高校選抜FW大石脩斗を起点に押し込む

 神村学園はその勢いを凌ぐと9分、日高の左ロングスローの流れから竹野が切り返しでDFを剥がしてラストパス。これは鹿児島城西MF常にダイビングヘッドでクリアされたが、10分にスコアを動かす。中野が前線へロングフィードを入れると、左中間の徳村が絶妙なファーストタッチから一気に仕掛ける。DF2人をかわしてシュートに持ち込もうとしたところでGKに止められたが、こぼれ球を花城が右足で押し込んで先制点を挙げた。

神村学園はU-17日本高校選抜DF中野陽斗のロングフィードを起点に先制点

前半10分、2年生MF花城瑛汰がこぼれ球をゴールに押し込んだ

歓喜の神村学園

 だが、鹿児島城西はすぐに追いつく。15分、寺田の右ロングスローを神村学園が処理できず、こぼれ球を中村が左足ダイレクトで蹴り込んだ。1-1。それでも、この日の鹿児島城西は強風に苦しめられた。フィードが伸びすぎてしまい、大石が競るシーンはわずか。中野を中心に鎌田、今村の3バックに対応されてしまう。

前半15分に左SB中村颯太が同点ゴール

すぐにスコアを振り出しに戻した

 また、有村圭一郎監督が「スペースを意図的に我々は作りながら今日は攻撃していたので、そういうところが上手くいったのかなと思います。引き出したところで(スペースを)取ってとかしながら。プレッシャーを掛けに来ても奪われない自信はあるので」と振り返ったように、神村学園は福島と堀ノ口を中心に、鎌田や今村もドリブルやショートパスで意図的に相手を引き付け、そこから徳村、日高の高速2トップを活かした形の攻撃で主導権。24分には花城の直接FKが枠を捉える。

 28分には福島のスルーパスから徳村がクロスバー直撃のシュートを放ち、跳ね返りに反応した竹野の強烈な右足シュートがネットを揺らす。これは徳村がオフサイドでノーゴールだったが、風下の神村学園がよりゴール前のシーンを作る展開となった。

 鹿児島城西は30分に松崎とFW境勇翔(2年)を交代。だが、徳村、日高を筆頭とした相手のプレッシングを避けるようなプレーが全体的に増えてしまい、流れを変えることができない。神村学園は前半終了間際にも中村の縦パスからPAで切り返した徳村が左足シュート。後半には有村監督の指示でより幅を意識して攻めるようになり、いずれもスプリント力のある竹野と中村の両WBや徳村、日高のオープンサイドへの動きからチャンスが生まれる。

神村学園はU-18日本代表MF福島和毅を中心にボールを保持しながらスペースを生み出し、快足2トップを活用

 鹿児島城西も後半6分、左の野村がドリブルで仕掛け、こぼれ球を回収した吉田がラストパス。だが、神村学園はゴール前での準備が良く、決定打を打たせない。逆にハイサイドを取るシーンが増え、これをサポートした福島のカットインシュートなどで相手にプレッシャーを掛けた。そして15分、左スローインを受けた徳村がキープから前を向くと、相手DF2人を振り切る形でラストパス。鹿児島城西DFがクリアするも、これを狙っていたという花城がコントロールからの右足シュートを右隅に突き刺し、勝ち越した。

MF徳村楓大は先制点に続き、2点目のシーンでも高速ドリブルで相手を攻略

後半15分、神村学園はMF花城瑛汰が右足でこの日2点目のゴール

「自分は黒子に」という2年生が大一番で主役に

 直後に神村学園は中村と左WB荒木仁翔(3年)を交代。鹿児島城西も境とMF末吉海翔(2年)を入れ替える。神村学園は有村監督が「後半、スペースができてくるだろうなと思った」というように、運動量豊富な荒木が18分、23分と左のオープンスペースを突いて徳村へラストパスを通し、25分には日高のラストパスからシュートも放った。

 鹿児島城西もGK鵜木のファインセーブやDFのシュートブロックで凌ぎ、24分には中村の攻め上がりを起点とした攻撃から吉田のパスが大石へ通る。大石はターンするも、相手MF福島と荒木に前を塞がれてシュートを放つことができない。

 鹿児島城西はCB浮邉がドリブルで運び、寺田、中村からのクロスが上がるなど、徐々に狙いとする攻撃を表現。だが、クロスを相手GK寺田やDF陣に対応されてしまったほか、繋ぎに行ったところを福島にインターセプトされるなど攻め切ることができない。

 神村学園は今大会、硬さもあったか、なかなか力を出すことができなかったという。だが、中野が「緊張や重圧があったんですけど、その中でチーム全体として雰囲気だったり、楽しむぞっていう風に声を掛けて、昨日の夜からみんなで『絶対に勝つぞ』『チームのために勝つぞ』って話していたので、その気持ちの部分でまず相手を回ることができたかなと思います」というように、各選手の足が良く動き、自陣ゴール前での集中力も高かった。

 そして、中野の「去年の選手権(の敗戦)もあったり、去年インターハイでああいう形で逆転はしましたけど、内容的にも城西が勝っていたので、そういう部分では城西の実力が1枚上手っていう風にみんなに伝えて、チャレンジャーのつもりで挑みました」の言葉通り、チーム全体で鹿児島城西に挑戦。一丸となって戦ったこの日は、コーチ陣も今大会ベストと評価する内容のゲームだった。

神村学園はDF今村太樹ら3バックが集中した守り。相手エースにボールを触らせない

 30分、神村学園は花城をMF佐々木悠太(3年/U-17日本高校選抜)へ、鹿児島城西も別府をFW立山煌(3年)へ交代。鹿児島城西は守備範囲の広いMF常と推進力のある重盛のポジションを入れ替え、浮邉を前線に上げて反撃する。

 ピンチが続いたものの、34分には相手FW日高の決定的なシュートを常がスーパークリア。1点を維持すると、35+5分には大石が競り勝って右サイドからPAへ侵入する。だが、ラストパスは神村学園DF鎌田がクリア。その神村学園は直後、徳村に代わって交代出場していたFW樹本琉空(3年)の左へのパスから、日高が縦へ運んでクロスを上げる。これに飛び込んだ佐々木がGKと交錯しながら右足で押し込み、3-1で勝利した。

後半35+6分、神村学園はU-17日本高校選抜MF佐々木悠太がダメ押しのゴール

喜びと同時に試合終了。昨秋の雪辱を果たし、8連覇を達成した

 鹿児島城西は、大石をはじめ先発11人中8人が選手権全国での先発経験者。今年のプリンスリーグ九州1部では大分U-18や長崎総合科学大附高から5ゴールを奪って勝利するなど強さを見せていた。それに対し、神村学園の有村監督は「(現時点では)ちょっと力的には相手の方が上かなっていうところもあるので、その中で自分たちのやれること、上手くボールを動かしながら背後っていうようなところは、ちょっと狙いとしてやっていたんで、それを表現できたかなと思います」。力のある相手FWを3バックで封じ、ボールを保持してからのオープン攻撃によって3得点。交代策も含めて快勝で昨秋のリベンジを果たした。

 高校選抜や年代別日本代表クラスの選手が今年も多く、有村監督も個々の力を認めるが、今季のプレミアリーグWESTは2勝1分5敗。「ゲーム中に走るとか、戦うとかサッカーのベースのところが上手くやれている時ってやっぱり勝てているんですけど、"これぐらい”の感じで入っている時は、やっぱり捻り潰されている」(有村監督)。それでも2か月間、課題を突きつけてきたことで土台が上がってきていることは確か。ここから神村学園らしさの部分などを積み上げていく。

「(ベースの底上げを重視してきたため、)具体的にサッカーの練習みたいな、ボールをこう動かしてみたいな練習があまりできていません。だから、組み立ても下手くそだし、うちらしいパスワークとかもないですし、そういった意味では、まだまだ発展途上なので。可能性はたくさん秘めていると思います」と有村監督。プレミアリーグを挟み、2か月後には昨年準優勝だったインターハイに出場する。

 中野は「緊張というか楽しみが1番ありますし、去年届かなかった場所でもう1度チャレンジができる。今のチームをさらにこの短い期間で強くして、夏のリベンジという形で頂きを目指してチーム一丸となって頑張りたいと思います」と誓った。可能性を秘めたチームは個々とグループでの攻守をさらに進化させて、昨年超えに挑む。

(取材・文 吉田太郎)


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吉田太郎
Text by 吉田太郎

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