意見を言い合う関係性と勝ち切ることを意識。岡山学芸館が初の中国高校選手権制覇を果たし、目標のインハイ4強超えへ弾み

[6.16 中国高校選手権決勝 立正大淞南高 1-1(PK3-4)岡山学芸館高 JFEス]
第72回中国高等学校サッカー選手権大会決勝が16日に岡山市のJFE晴れの国スタジアムで行われ、岡山学芸館高(岡山)が初優勝を飾った。岡山学芸館は立正大淞南高(島根)と対戦。1-1で突入したPK戦を4-3で制した。
ともにインターハイ出場を決めているチーム同士の決勝戦。両校は5日後にプリンスリーグ中国で再び対戦するが、その前に延長戦を含む90分間とPK戦まで熱い攻防戦を繰り広げた。
岡山学芸館は主将のMF青川凌大(3年)が欠場。先発はGKが山田聡甫(2年)でDFは右SB平尾駿成(3年)、ゲーム主将のCB江口陽向(3年)、CB田中大翔(3年)、左SB大島篤樹(3年)の4バック、中盤は注目MF吉岡大和(2年)と栢森太希(3年)のダブルボランチで右SH万代大和(3年/U-17日本高校選抜候補)、左SH沖然太(3年)、そして山田悠斗(3年)と日野伊織(3年)が2トップを組んだ。


一方、立正大淞南の先発はGK山田新(3年)で、DFは右SB北河龍磨(3年)、CB重原唯人(3年)、CB禹導勳(3年)、左SB寺門明瑠(3年)の4バック、ダブルボランチが注目MF豊田寛太主将(3年)とMF川村縁(3年)で右SH服部光将(3年)、左SH西森永眞(3年)、そして久保侑聖(3年)と金子将大(3年)が2トップを組んだ。


立ち上がりから互いにゴール前のシーンを作り合う。4分、岡山学芸館は日野がPAへ抜け出し、その折り返しを山田悠が右足でフィニッシュ。対する立正大淞南も西森が縦への仕掛けから上げたクロスに服部が飛び込み、9分には豊田からのパスを受けた金子が切り返して左足を振り抜く。
立正大淞南はいずれも前線で力強い動きを見せる金子、久保を起点として縦に速い攻撃。中でも豊田は推進力のあるドリブルやコンビネーションでDF間へ割って入り、鋭いパスを繰り出し続けた。対する岡山学芸館も山田悠を軸に日野の裏抜けや、いずれも突破力のある万代、沖がドリブルでの仕掛けにチャレンジ。大島のロングスローも交えてゴールを目指した。
前半14分、岡山学芸館が先にスコアを動かす。山田悠のスルーパスに沖が反応。右足シュートをゴール左に流し込んだ。対する立正大淞南はその2分後に久保とU-16日本代表MF野田歩(1年)を交代。すると22分、左へ開いた豊田を起点に野田、金子と細かく繋ぎ、最後は豊田がPAへ飛び出しから左足シュートをゴールへ流し込んだ。








追いついた立正大淞南は豊田を起点に抜群の突破力を持つ西森や狭い局面で技術力を発揮する野田を活用した攻撃。守りの要である禹をはじめ、北河、重原、寺門の4バックはいずれもスピードがあり、その前で川村が回収力を発揮する。南健司総監督が「(個々の意識が高く)覚悟を持って、自覚を持ってやっている」というチームは出足の速さも発揮して優位に。前半終盤は岡山学芸館の沖がドリブルシュートを狙い、立正大淞南の右SB北河がミドルシュートにチャレンジしたが、1-1のまま前半を終えた。




岡山学芸館は後半開始から日野を“切り札”のFW岸昂希(3年)へ交代。前半にセカンドボールの攻防で苦戦した反省から、高原良明監督は「後半、そこをしっかり意識してやろう」と意識付け。SHが中へ絞るようになるなど修正し、セカンドボール回収を増やした。
特に2年生ボランチの吉岡が奪い返しや回収で存在感のある動き。また、CB江口が対人、空中戦で一際強さを発揮する。加えて、右SB平尾が対人守備で強さで相手の仕掛けを止め、怪我明けの田中や栢森も際のところで譲らない。
岡山学芸館の高原良明監督は「去年、平尾とか江口とか、吉岡が後ろで経験しているんで、そういう選手がいるっていうのはやっぱり大きいですね」と評していたが、守りの安定は強みの一つに。その守備力を支えに勝ち越し点を狙う。そして、後半に存在感を増した万代がドリブル突破に繰り返しチャレンジ。その万代や岸がPAを攻略しようとするが、立正大淞南DF陣も粘り強く、決定打を打たせない。






立正大淞南も11分、相手GKの判断ミスから金子が決定機。14分には左の豊田が鋭いパスを差し込み、この日前線で効いていた金子が粘ると、最後は服部が決定機を迎える。だが、いずれもシュート精度を欠き、勝ち越すことができない。この直後、立正大淞南は服部と金子をFW若槻大雲(3年/U-17日本高校選抜候補)とFW村崎斗士輝(2年)へ代え、攻撃の迫力をさらに増した。
岡山学芸館は15分に栢森と山田悠をMF竹田陸人(2年)とFW山田琉斗(2年)へ入れ替え、19分には沖とFW本村悠斗(2年)を交代した。試合終盤、立正大淞南にビッグチャンス。24分、村崎の折返しから若槻の放った右足シュートは、ゴールカバーした岡山学芸館CB江口がスーパークリアで阻む。さらに26分、若槻が裏抜けから左足を振り抜くが、今度は岡山学芸館GK山田聡がストップ。岡山学芸館は万代をMF田和昴(3年)へ代えた後の38分にセットプレーからチャンスを迎えたが、決め切ることができない。


1-1のまま延長戦へ突入。オープンな展開となる中、立正大淞南は右の若槻、左の西森がゴール前のシーンを創出する。だが、岡山学芸館は江口のシュートブロックなど得点を許さない。立正大淞南は延長前半5分、西森のドリブルから若槻が右足シュート。7分にも左の野田が村崎とのパス交換から中へ運んで右足を振り抜くが左外へ外れた。岡山学芸館も吉岡のゲームメークなどからサイド攻撃。田和や大島、岸がクロスへ持ち込むも、立正大淞南DF陣に跳ね返されてしまう。




この後、岡山学芸館は田和とFW辻琥白(1年)を交代し、立正大淞南も西森と川村をMF植田浩生(3年)とMF西川生夏(2年)へスイッチ。互いに力を振り絞って延長後半を戦った。4分、岡山学芸館は竹田の左CKからニアの吉岡が決定的なヘッド。対する立正大淞南も豊田が係わる形からゴール前のシーンを迎える。だが、岡山学芸館は田中やGK山田聡が立ちはだかり、1-1のまま終了。決着はPK戦に委ねられた。
1人目、先行・立正大淞南のシュートを岡山学芸館GK山田聡が左へ跳んでストップ。直後に立正大淞南GK山田が左への跳躍で触ったボールがポストを叩いて外れる。だが、岡山学芸館はゴール前で存在感のある動きを見せていたGK山田聡が、右への跳躍で相手の2人目もストップ。この後、岡山学芸館は山田琉、田中、吉岡が決めると、最後は平尾が右足で決めて決着をつけた。






岡山学芸館の高原監督は「中国新人は2回ぐらい優勝したことがあるんですけど。これ(中国選手権)は1回もないので、1つのタイトル取れたっていうのは大きいですし、この3日間で本当に強度の高いゲームを、特に昨日(高川学園高戦)と今日のゲームなんかに関してはできたっていうのは大きいと思います」と語った。
今年は県新人戦準々決勝で玉野光南高にPK戦で敗戦。江口は「(当時は)バラバラで1回色々話し合って、チームで。なかなか上手くいかなかくて、プリンス(リーグ中国)も初戦でこけて、状況はめっちゃ悪かったんですけど、1人1人の責任感を大事にして、もっと言い合う関係性を練習から意識して、あとは勝ち切るっていうところを意識してきました」と説明する。プリンスリーグ中国は初戦で作陽学園高(岡山)に敗れた後、5勝1分で現在2位。中国高校選手権も初優勝と結果に結びつけている。
インターハイの目標は初のベスト4以上。高原監督はボールを支配する時間の増加と外からの崩しの精度の向上を求める。江口は「先生方にも何か全国で結果を残せるチームって言われているんで、絶対ベスト4以上いけるように、もっとチームとして細かいところを改善して勝ち切れるチームになっていきたいです」と宣言。2022年度の選手権覇者が今夏、インターハイでチームの歴史を塗り替える。


(取材・文 吉田太郎)
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第72回中国高等学校サッカー選手権大会決勝が16日に岡山市のJFE晴れの国スタジアムで行われ、岡山学芸館高(岡山)が初優勝を飾った。岡山学芸館は立正大淞南高(島根)と対戦。1-1で突入したPK戦を4-3で制した。
ともにインターハイ出場を決めているチーム同士の決勝戦。両校は5日後にプリンスリーグ中国で再び対戦するが、その前に延長戦を含む90分間とPK戦まで熱い攻防戦を繰り広げた。
岡山学芸館は主将のMF青川凌大(3年)が欠場。先発はGKが山田聡甫(2年)でDFは右SB平尾駿成(3年)、ゲーム主将のCB江口陽向(3年)、CB田中大翔(3年)、左SB大島篤樹(3年)の4バック、中盤は注目MF吉岡大和(2年)と栢森太希(3年)のダブルボランチで右SH万代大和(3年/U-17日本高校選抜候補)、左SH沖然太(3年)、そして山田悠斗(3年)と日野伊織(3年)が2トップを組んだ。


岡山学芸館は明誠高、高川学園高を破って決勝進出
一方、立正大淞南の先発はGK山田新(3年)で、DFは右SB北河龍磨(3年)、CB重原唯人(3年)、CB禹導勳(3年)、左SB寺門明瑠(3年)の4バック、ダブルボランチが注目MF豊田寛太主将(3年)とMF川村縁(3年)で右SH服部光将(3年)、左SH西森永眞(3年)、そして久保侑聖(3年)と金子将大(3年)が2トップを組んだ。


立正大淞南は瀬戸内高、米子北高を破って決勝進出
立ち上がりから互いにゴール前のシーンを作り合う。4分、岡山学芸館は日野がPAへ抜け出し、その折り返しを山田悠が右足でフィニッシュ。対する立正大淞南も西森が縦への仕掛けから上げたクロスに服部が飛び込み、9分には豊田からのパスを受けた金子が切り返して左足を振り抜く。
立正大淞南はいずれも前線で力強い動きを見せる金子、久保を起点として縦に速い攻撃。中でも豊田は推進力のあるドリブルやコンビネーションでDF間へ割って入り、鋭いパスを繰り出し続けた。対する岡山学芸館も山田悠を軸に日野の裏抜けや、いずれも突破力のある万代、沖がドリブルでの仕掛けにチャレンジ。大島のロングスローも交えてゴールを目指した。
前半14分、岡山学芸館が先にスコアを動かす。山田悠のスルーパスに沖が反応。右足シュートをゴール左に流し込んだ。対する立正大淞南はその2分後に久保とU-16日本代表MF野田歩(1年)を交代。すると22分、左へ開いた豊田を起点に野田、金子と細かく繋ぎ、最後は豊田がPAへ飛び出しから左足シュートをゴールへ流し込んだ。


前半14分、岡山学芸館MF沖然太が右足で先制ゴール


1チャンスを確実にモノにした


前半22分、立正大淞南は鮮やかな崩しからMF豊田寛太主将が左足で同点ゴール


豊田は試合を通して存在感のある動き
追いついた立正大淞南は豊田を起点に抜群の突破力を持つ西森や狭い局面で技術力を発揮する野田を活用した攻撃。守りの要である禹をはじめ、北河、重原、寺門の4バックはいずれもスピードがあり、その前で川村が回収力を発揮する。南健司総監督が「(個々の意識が高く)覚悟を持って、自覚を持ってやっている」というチームは出足の速さも発揮して優位に。前半終盤は岡山学芸館の沖がドリブルシュートを狙い、立正大淞南の右SB北河がミドルシュートにチャレンジしたが、1-1のまま前半を終えた。


岡山学芸館のU-17日本高校選抜候補MF万代大和がスペースを狙う


立正大淞南はCB禹導勳らスピードのある4バックが相手の攻撃を封鎖
岡山学芸館は後半開始から日野を“切り札”のFW岸昂希(3年)へ交代。前半にセカンドボールの攻防で苦戦した反省から、高原良明監督は「後半、そこをしっかり意識してやろう」と意識付け。SHが中へ絞るようになるなど修正し、セカンドボール回収を増やした。
特に2年生ボランチの吉岡が奪い返しや回収で存在感のある動き。また、CB江口が対人、空中戦で一際強さを発揮する。加えて、右SB平尾が対人守備で強さで相手の仕掛けを止め、怪我明けの田中や栢森も際のところで譲らない。
岡山学芸館の高原良明監督は「去年、平尾とか江口とか、吉岡が後ろで経験しているんで、そういう選手がいるっていうのはやっぱり大きいですね」と評していたが、守りの安定は強みの一つに。その守備力を支えに勝ち越し点を狙う。そして、後半に存在感を増した万代がドリブル突破に繰り返しチャレンジ。その万代や岸がPAを攻略しようとするが、立正大淞南DF陣も粘り強く、決定打を打たせない。




岡山学芸館の最終ラインで好守を連発したゲーム主将CB江口陽向


立正大淞南FW金子将大は力強い動きでゴールに迫った
立正大淞南も11分、相手GKの判断ミスから金子が決定機。14分には左の豊田が鋭いパスを差し込み、この日前線で効いていた金子が粘ると、最後は服部が決定機を迎える。だが、いずれもシュート精度を欠き、勝ち越すことができない。この直後、立正大淞南は服部と金子をFW若槻大雲(3年/U-17日本高校選抜候補)とFW村崎斗士輝(2年)へ代え、攻撃の迫力をさらに増した。
岡山学芸館は15分に栢森と山田悠をMF竹田陸人(2年)とFW山田琉斗(2年)へ入れ替え、19分には沖とFW本村悠斗(2年)を交代した。試合終盤、立正大淞南にビッグチャンス。24分、村崎の折返しから若槻の放った右足シュートは、ゴールカバーした岡山学芸館CB江口がスーパークリアで阻む。さらに26分、若槻が裏抜けから左足を振り抜くが、今度は岡山学芸館GK山田聡がストップ。岡山学芸館は万代をMF田和昴(3年)へ代えた後の38分にセットプレーからチャンスを迎えたが、決め切ることができない。


立正大淞南のU-17日本高校選抜FW若槻大雲の決定的なシュートを岡山学芸館DFがゴールライン上でクリア
1-1のまま延長戦へ突入。オープンな展開となる中、立正大淞南は右の若槻、左の西森がゴール前のシーンを創出する。だが、岡山学芸館は江口のシュートブロックなど得点を許さない。立正大淞南は延長前半5分、西森のドリブルから若槻が右足シュート。7分にも左の野田が村崎とのパス交換から中へ運んで右足を振り抜くが左外へ外れた。岡山学芸館も吉岡のゲームメークなどからサイド攻撃。田和や大島、岸がクロスへ持ち込むも、立正大淞南DF陣に跳ね返されてしまう。


岡山学芸館注目の2年生MF吉岡大和は守備能力の高さを発揮した


立正大淞南の1年生MF野田歩はU-16日本代表の実力を随所で発揮
この後、岡山学芸館は田和とFW辻琥白(1年)を交代し、立正大淞南も西森と川村をMF植田浩生(3年)とMF西川生夏(2年)へスイッチ。互いに力を振り絞って延長後半を戦った。4分、岡山学芸館は竹田の左CKからニアの吉岡が決定的なヘッド。対する立正大淞南も豊田が係わる形からゴール前のシーンを迎える。だが、岡山学芸館は田中やGK山田聡が立ちはだかり、1-1のまま終了。決着はPK戦に委ねられた。
1人目、先行・立正大淞南のシュートを岡山学芸館GK山田聡が左へ跳んでストップ。直後に立正大淞南GK山田が左への跳躍で触ったボールがポストを叩いて外れる。だが、岡山学芸館はゴール前で存在感のある動きを見せていたGK山田聡が、右への跳躍で相手の2人目もストップ。この後、岡山学芸館は山田琉、田中、吉岡が決めると、最後は平尾が右足で決めて決着をつけた。


PK戦1人目、立正大淞南GK山田新のセーブしたボールはポストを叩いて外側へ


岡山学芸館のGK山田聡甫はPK戦で1人目と2人目を連続セーブ


PK戦の末、岡山学芸館が勝利
岡山学芸館の高原監督は「中国新人は2回ぐらい優勝したことがあるんですけど。これ(中国選手権)は1回もないので、1つのタイトル取れたっていうのは大きいですし、この3日間で本当に強度の高いゲームを、特に昨日(高川学園高戦)と今日のゲームなんかに関してはできたっていうのは大きいと思います」と語った。
今年は県新人戦準々決勝で玉野光南高にPK戦で敗戦。江口は「(当時は)バラバラで1回色々話し合って、チームで。なかなか上手くいかなかくて、プリンス(リーグ中国)も初戦でこけて、状況はめっちゃ悪かったんですけど、1人1人の責任感を大事にして、もっと言い合う関係性を練習から意識して、あとは勝ち切るっていうところを意識してきました」と説明する。プリンスリーグ中国は初戦で作陽学園高(岡山)に敗れた後、5勝1分で現在2位。中国高校選手権も初優勝と結果に結びつけている。
インターハイの目標は初のベスト4以上。高原監督はボールを支配する時間の増加と外からの崩しの精度の向上を求める。江口は「先生方にも何か全国で結果を残せるチームって言われているんで、絶対ベスト4以上いけるように、もっとチームとして細かいところを改善して勝ち切れるチームになっていきたいです」と宣言。2022年度の選手権覇者が今夏、インターハイでチームの歴史を塗り替える。


岡山学芸館は初優勝をインターハイへの弾みに
(取材・文 吉田太郎)
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