敗戦直後の振る舞いに滲んだのは「相手へのリスペクト」と「自分たちへの誇り」。滝川二DF大槻飛孝が伝統の「滝二のキャプテン」を任される理由
[7.31 インハイ準決勝 滝川二高 0-0(PK3-4) 近大附高 Jヴィレッジスタジアム]
悔しすぎるPK戦での敗退を突き付けられ、3位の表彰式が終わった直後。敗れたチームのキャプテンは、決勝へ向けたエールを送るため、勝ったチームのキャプテンの元に歩み寄り、抱擁を交わす。その姿からは、全力で戦った相手に対するリスペクトと、ここまで戦い抜いてきた自分たちへの誇りが、はっきりと立ち上っていた。
「今回のベスト4という結果で、少しは『強い滝二』を取り戻せたのかなとは思うんですけど、やっぱりもう一歩先に行きたかったですね。自分たちに自信は付きましたけど、これを過信するのではなく、選手権でファイナルに行くために、もっともっと自分たちに厳しい目を向けていきたいと思います」。
16年ぶりの全国4強へとたどり着いた、滝川二高(兵庫)を束ねる絶対的キャプテン。DF大槻飛孝(3年=FC PASENO ITAMI出身)が有する卓越したリーダーシップを抜きにして、チームの躍進を語ることはできないだろう。
2回戦でプレミア勢の一角、前橋育英高を撃破した試合後。チームを率いる小森康宏監督はこんな言葉を口にする。「ウチのキャプテンは凄いですよ。これだけチームが成長しているのも、本当にキャプテンと副キャプテン、あのへんがしっかりしているからなんです」。
確かに実際に話してみると、言葉選びの一つひとつにも、豊かな人間性が滲む。「僕らは『強い滝二を取り戻す』というスローガンを掲げていて、インターハイは去年と今年で全国ベスト16になったというところで、また滝二の名をちょっとずつ取り戻せていることも嬉しいですけど、ここで終わりではないので、もっと昔のように全国のベスト8やベスト4の常連にならないといけないなと思います」。そう言い切った言葉も頼もしい。短い時間の会話からも、指揮官の信頼の理由がわかった気がした。
桐光学園高を撃破し、全国4強を手繰り寄せた準々決勝の試合後も、やはり大槻の言葉には力があった。「正直、この“Aブロック”の顔ぶれを見た瞬間に、『ここを勝ち上がれたらな』というワクワク感があったんですけど、本当にここを勝ち上がれたということは、自信になりました」。
「でも、それがここで過信になることは絶対ないと思うので、この自信をベスト4でもバチバチとぶつけ合って、戦っていけたらいいなと思います」。4校のプレミア勢が顔を揃え、それ以外にも3校のインターハイ優勝経験校が居並ぶ“死のブロック”を抜けてきたのも、彼らがピッチで発揮していた“ワクワク感”がベースにあったのかと思うと、妙に合点が行った。


迎えた準決勝。関西勢対決となった近大附高戦は、大応援団をバックに付けた相手の勢いに押される形で、滝川二はなかなか攻撃の時間を作り出せない。「こういった夏のキツい試合では、自分たちがボールを握る時間帯を増やしていかないといけないなと感じましたね」と大槻。それでもセンターバックの相方のDF野本咲成(3年)とともに、シビアな局面では身体を張り続け、最後の一線は越えさせない。
試合は0-0で終了し、決勝へと進出する権利はPK戦で争われることになる。後攻の近大附は1人目が外したのに対し、先攻の滝川二は2人目まで成功。3人目で登場した大槻も、「僕は強く蹴ることを意識しているので、『気持ちで押し込め』という感じでした」とGKにさわられながらも、執念をこめたボールをゴールネットへ到達させる。




だが、滝川二は4人目と5人目が枠を外し、決められれば負けが決まる近大附の5人目は、GK大久保蒼真(3年)が意地のセーブでストップしたものの、6人目も失敗してしまったチームに、もう勝利の女神は微笑んでくれなかった。
「ああやって大久保が止めてくれたにも関わらず、自分たちが連続で外したというのは、本当に日ごろの行いが出てしまったのかなと。まさに『勝負の神は細部に宿る』というか、そういった部分が本当にここで出たのかなという感じですね」。少しだけ目を赤くした大槻は、そうやって敗因を絞り出す。
前述したように、試合後に近大附のキャプテンの元へ向かい、健闘を称えた姿は非常に印象的だった。伝統ある『滝二のキャプテン』という役割を自分が担うことについて、大槻はこう捉えているという。


「僕も最初の方はダメダメだったんですけど、自分はプレーで示せるタイプの選手ではないので、声でチームを動かすというか、声でチームに原動力を与えるというか、声で引っ張る選手として、チームを活気づかせたり、行動で示したりといったところで役に立っているのかなと思います」。
だからこそ、この日の自身のリーダーとしての在り方には、納得がいっていないようだ。「今日のようなゲームでは、自分がもっと声を出して、チームを鼓舞するべきだったかなという想いはありますね。もっともっと周りを信じながらも、もうちょっと自分自身も信じてやっていくしかないのかなって」。
「もっと上に行くためには、自分の成長がチームの成長に繋がるということは本当にずっと言われ続けているので、これからは声だけではなくて、もっと自分のプレーでチームを勝たせられるようなキャプテンになりたいなという、個人的な課題がインターハイでは残りましたね」。
ここから先のシーズンは、もちろん選手権での日本一を目指す戦いが改めて幕を開けることになるが、おそらくは今まで以上に対戦相手も高いモチベーションを抱いて、全国4強のチームに向かってくることは間違いない。残された高校生活に向けて、大槻が決意を響かせる。
「今は負けたばかりで悔しい想いはあるんですけど、もう選手権に切り替えるというか、頭をスイッチしないといけないなという強い気持ちがあります。高校生活は長いようで本当に短いので、1日1日を大事にしながら、自分たちのリベンジする場として、選手権でも全国の舞台へ帰れるように日々努力して、また『強い滝二』を全国に見せたいなという強い気持ちを持っていきたいです」。
みんなで掲げた『強い滝二を取り戻す』というスローガンを考えれば、その実現へと繋がっている扉の前には、この夏で確実に立ったと言えるだろう。その全国ベスト4を力強く支えた、滝川二の頼れるリーダー。大槻飛孝が貫いた『滝二のキャプテン』としての堂々たる立ち振る舞いに、大きな拍手を送りたい。


(取材・文 土屋雅史)
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悔しすぎるPK戦での敗退を突き付けられ、3位の表彰式が終わった直後。敗れたチームのキャプテンは、決勝へ向けたエールを送るため、勝ったチームのキャプテンの元に歩み寄り、抱擁を交わす。その姿からは、全力で戦った相手に対するリスペクトと、ここまで戦い抜いてきた自分たちへの誇りが、はっきりと立ち上っていた。
「今回のベスト4という結果で、少しは『強い滝二』を取り戻せたのかなとは思うんですけど、やっぱりもう一歩先に行きたかったですね。自分たちに自信は付きましたけど、これを過信するのではなく、選手権でファイナルに行くために、もっともっと自分たちに厳しい目を向けていきたいと思います」。
16年ぶりの全国4強へとたどり着いた、滝川二高(兵庫)を束ねる絶対的キャプテン。DF大槻飛孝(3年=FC PASENO ITAMI出身)が有する卓越したリーダーシップを抜きにして、チームの躍進を語ることはできないだろう。
2回戦でプレミア勢の一角、前橋育英高を撃破した試合後。チームを率いる小森康宏監督はこんな言葉を口にする。「ウチのキャプテンは凄いですよ。これだけチームが成長しているのも、本当にキャプテンと副キャプテン、あのへんがしっかりしているからなんです」。
確かに実際に話してみると、言葉選びの一つひとつにも、豊かな人間性が滲む。「僕らは『強い滝二を取り戻す』というスローガンを掲げていて、インターハイは去年と今年で全国ベスト16になったというところで、また滝二の名をちょっとずつ取り戻せていることも嬉しいですけど、ここで終わりではないので、もっと昔のように全国のベスト8やベスト4の常連にならないといけないなと思います」。そう言い切った言葉も頼もしい。短い時間の会話からも、指揮官の信頼の理由がわかった気がした。
桐光学園高を撃破し、全国4強を手繰り寄せた準々決勝の試合後も、やはり大槻の言葉には力があった。「正直、この“Aブロック”の顔ぶれを見た瞬間に、『ここを勝ち上がれたらな』というワクワク感があったんですけど、本当にここを勝ち上がれたということは、自信になりました」。
「でも、それがここで過信になることは絶対ないと思うので、この自信をベスト4でもバチバチとぶつけ合って、戦っていけたらいいなと思います」。4校のプレミア勢が顔を揃え、それ以外にも3校のインターハイ優勝経験校が居並ぶ“死のブロック”を抜けてきたのも、彼らがピッチで発揮していた“ワクワク感”がベースにあったのかと思うと、妙に合点が行った。


迎えた準決勝。関西勢対決となった近大附高戦は、大応援団をバックに付けた相手の勢いに押される形で、滝川二はなかなか攻撃の時間を作り出せない。「こういった夏のキツい試合では、自分たちがボールを握る時間帯を増やしていかないといけないなと感じましたね」と大槻。それでもセンターバックの相方のDF野本咲成(3年)とともに、シビアな局面では身体を張り続け、最後の一線は越えさせない。
試合は0-0で終了し、決勝へと進出する権利はPK戦で争われることになる。後攻の近大附は1人目が外したのに対し、先攻の滝川二は2人目まで成功。3人目で登場した大槻も、「僕は強く蹴ることを意識しているので、『気持ちで押し込め』という感じでした」とGKにさわられながらも、執念をこめたボールをゴールネットへ到達させる。


GK大久保蒼真にキャプテンマークを託す


だが、滝川二は4人目と5人目が枠を外し、決められれば負けが決まる近大附の5人目は、GK大久保蒼真(3年)が意地のセーブでストップしたものの、6人目も失敗してしまったチームに、もう勝利の女神は微笑んでくれなかった。
「ああやって大久保が止めてくれたにも関わらず、自分たちが連続で外したというのは、本当に日ごろの行いが出てしまったのかなと。まさに『勝負の神は細部に宿る』というか、そういった部分が本当にここで出たのかなという感じですね」。少しだけ目を赤くした大槻は、そうやって敗因を絞り出す。
前述したように、試合後に近大附のキャプテンの元へ向かい、健闘を称えた姿は非常に印象的だった。伝統ある『滝二のキャプテン』という役割を自分が担うことについて、大槻はこう捉えているという。


「僕も最初の方はダメダメだったんですけど、自分はプレーで示せるタイプの選手ではないので、声でチームを動かすというか、声でチームに原動力を与えるというか、声で引っ張る選手として、チームを活気づかせたり、行動で示したりといったところで役に立っているのかなと思います」。
だからこそ、この日の自身のリーダーとしての在り方には、納得がいっていないようだ。「今日のようなゲームでは、自分がもっと声を出して、チームを鼓舞するべきだったかなという想いはありますね。もっともっと周りを信じながらも、もうちょっと自分自身も信じてやっていくしかないのかなって」。
「もっと上に行くためには、自分の成長がチームの成長に繋がるということは本当にずっと言われ続けているので、これからは声だけではなくて、もっと自分のプレーでチームを勝たせられるようなキャプテンになりたいなという、個人的な課題がインターハイでは残りましたね」。
ここから先のシーズンは、もちろん選手権での日本一を目指す戦いが改めて幕を開けることになるが、おそらくは今まで以上に対戦相手も高いモチベーションを抱いて、全国4強のチームに向かってくることは間違いない。残された高校生活に向けて、大槻が決意を響かせる。
「今は負けたばかりで悔しい想いはあるんですけど、もう選手権に切り替えるというか、頭をスイッチしないといけないなという強い気持ちがあります。高校生活は長いようで本当に短いので、1日1日を大事にしながら、自分たちのリベンジする場として、選手権でも全国の舞台へ帰れるように日々努力して、また『強い滝二』を全国に見せたいなという強い気持ちを持っていきたいです」。
みんなで掲げた『強い滝二を取り戻す』というスローガンを考えれば、その実現へと繋がっている扉の前には、この夏で確実に立ったと言えるだろう。その全国ベスト4を力強く支えた、滝川二の頼れるリーダー。大槻飛孝が貫いた『滝二のキャプテン』としての堂々たる立ち振る舞いに、大きな拍手を送りたい。


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(取材・文 土屋雅史)
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