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17年ぶりの関東制覇へ、大学王者・早稲田大が伝統の早慶戦制す:関東1部

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[4.13 関東大学リーグ1部第2節 早稲田大2-1慶應義塾大 味フィ西]

 JR東日本カップ第87回関東大学サッカーリーグ戦1部第2節、早稲田大と慶應義塾大の伝統校対決「早慶戦」は早大がFW榎本大希(4年=横浜FMユース)の決勝ゴールによって2-1で競り勝った。

 昨年度の全日本大学選手権覇者、早大がライバル対決で今季初白星を飾った。日本一メンバーでこの日キャプテンマークを巻いた左SB三竿雄斗(4年=東京Vユース)が「関東リーグ制覇について17年間ワセダはやっていないので、そこを第一の目標にしてやっています」いう早大は前半5分、右サイドのSB八角大智(2年=流通経済大柏高)が背後へ出したボールで競り勝ったFW片山瑛一(4年=川越高)がそのまま持ち込んで右足シュートを叩きこむ。

 早くも追う立場となった慶大の全日本大学選抜MF松下純土主将(4年=國學院久我山高)は「この1週間、早慶戦ということでボクがずっと選手に伝えてきたのは22試合中の1試合ということ。早慶戦ということで凄く気合の入る試合ではありますけれど、気負って自分の実力が出せないということはもったいない。ただ、失点の場面とか立ち上がり、浮き足立ってしまったというのが正直あります」。それでも悪い流れをすぐに断ち切った。全日本大学選抜のエースFW武藤嘉紀(3年=F東京U-18)が出場停止の慶大は、183cmFW平戸奨眞(3年=暁星高)とFW加藤慧太朗(4年=慶應義塾高)の長身2トップと相手の170cm代前半のCBコンビとのミスマッチを突いたロングボールから活路を見出そうとすると18分、平戸が空中戦を競り勝ち、右MF岩田修平(4年=名古屋U18)が右足で同点ゴールを叩きだした。

 松下が「いつもの慶應だったら立ち上がりの失点からボンボンとブチ込まれて、そこからようやくエンジンかかって、結果遅いというのがある」と説明する慶大だが、この日はすぐに立て直し、松下とMF増田湧介(3年=清水東高)のダブルボランチがボールを拾って相手に圧力をかけていく。

 ともに特別いい内容ではなかった。それでも伝統校対決は独特の緊張感の高い試合展開に。やや重苦しい空気を歓喜に変えたのは大学王者の早大だった。後半14分、この日CBの位置から相手の隙を縫って攻撃参加していたDF奥山政幸(2年=名古屋U18)が、右サイドでMF近藤貴司(3年=三菱養和SCユース)とワンツー。これでゴールライン際まで切れ込んだ近藤貴の折り返しを大宮入りしたFW富山貴光に代わる新エースFW榎本が決めて勝ち越した。

 奥山とCB金澤拓真(2年=横浜FMユース)が必死に相手の攻撃に対向する早大に対し、慶大は機動性の高い12年U-18日本代表のMF近藤貫太(2年=愛媛ユース)や増田が前線に絡み、CKから左SB長尾賢太郎(3年=神戸U-18)が決定的なヘディングシュートを放つなど反撃する。だが、早慶戦勝利へ強い意欲を見せる相手の堅い守りの前になかなか決定機まで持ち込むことができず、連敗スタートになってしまった。

 早大は順天堂大との開幕戦こそ試合終了間際の失点で0-1で敗れてしまったが、勝利への執着心や攻守の切り替え、ハードワークという部分は今年も大きな武器。三竿は「相手も結構シンプルにボールを放り込んできたり、ウチも押し込まれる時間帯が多くてお互い単調な試合になってしまったと思うんですけど、正直自分たちは勝てればいい。言葉は汚いかもしれないですけど。点を取れて、勝てたのは大きいと思います」と勝ち切った試合に納得していた。

 決勝点の榎本は「正直、お互い良くはなかったと思うんですけど、その中で勝てたのは一瞬一瞬のところでひたむきに頑張ったところではないかと思います」と分析。今年は大学王者として周囲からのプレッシャーを感じながらの1年となるが、選手たちはプライドを持ちながらも挑戦者の気持ちで戦うことを宣言する。榎本は「(大学)2年、3年の時も前回10位のチームだとか、インカレに出ていないチームだとか、そういうメンタリティでずっとサッカーをやってきた。周りからは優勝チームとか言われていますけれど、自分たちの中では、2、3年の時と変わりはない。自信を持つのはいいけれど、本来自分たちが持っている力はそんなレベルではない。自分たちがチャレンジャーという気持ちでやろうという話はしてあります」と言い切った。
 
 勝った早大にも攻撃面での崩しの部分やアイディアなどまだまだ課題はある。それでも経験値の浅い守備陣の成長、安定感の向上など選手たちは手応えも感じている。今年は先輩たちが成し遂げた新たな伝統を継続していくこと。そしてさらに上を目指していく。「全然無理なことだとは思っていないし、自分たちの代では成し遂げたい」(三竿)という関東と全日本のタイトル獲得へ、まずは早慶戦勝利で一つ歩を進めた。

(取材・文 吉田太郎)
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