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[ユニバ]金メダル目指す神川監督、「自立」が優勝の鍵と語る

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 ユニバーシアード日本代表は来月2日に第29回ユニバーシアード競技大会・光州大会の初戦を迎え、イラン代表と戦う。本大会を間近に控えるなか、神川明彦監督(明治大総監督)は「選手たちだけで、ピッチ内外の全ての問題を解決できるようになって欲しい。そうなったときに優勝も現実味を帯びてくるはず」と語った。

 20名の登録メンバーからDF山越康平(明治大4年=矢板中央高)が故障の影響で離脱。代わってバックアップメンバーのDF田上大地(流通経済大4年=流通経済大柏高)が招集された。主力として起用を続けてきた山越を欠くことになったものの、指揮官は「2人や3人が抜ける可能性も考えていたので、一人で済んでいるのはまだ良かった方」と前向きに捉える。

 今大会の登録メンバーについては、「まずは所属でレギュラーで活躍していること。安定した力を発揮していること。それぞれの持ち場で全国を見渡したときに頭ひとつ出ている選手ということ」を条件に選出したという。

 また指揮官は各々のパーソナリティーにも言及。「型にはまっている選手ばかりを揃えたいとは思わなかった。MF小林成豪(関西学院大4年=神戸U-18)やFW呉屋大翔(関西学院大大4年=流通経済大柏高)、MF長谷川竜也(順天堂大4年=静岡学園高)やGK福島春樹(専修大4年=静岡学園高)。それぞれ特徴があると思うし、DF室屋成(明治大3年=青森山田高)も性格的な強さはある」

「そういう選手がいるなかで、DF奥山政幸(早稲田大4年=名古屋U18)やDF高橋諒(明治大4年=国見高)、DF萩間大樹(専修大4年=川崎F U-18)のように、場をバランスよく保てる人間も随所に選んでいます。プレーは人間性が裏打ちされるものだから、そういう(真面目な)人間性を持った選手を集めたというよりも、プレーをみていたら、そういう人間性をもった人間が集まってきたというのが正しいかもしれません」

 そんななか、指揮官が一番頭を悩ませたのは、主将・福島に次ぐGKの選出だという。「福島はチーム立ち上げ当初から突出した存在だった。だからこそ次のGKがなかなか難しい中で、GK前川黛也(関西大3年=広島皆実高)という選手は実力はしっかりありますけど、仮にベンチを温める時間が長くなったとしても、彼がどういう振る舞いができるかは見ていました。今の時点で彼を第2GKとは言いません。しかし、過去の経験のなかで第2GKは一番難しいと感じていたので、2人が3試合ずつ出られれば理想ですけど、仮にそうならなかった場合、第2GKになってしまう人間がどういう人間かは一番気にしました」

 FW登録の3選手、FW呉屋大翔(関西学院大4年=流通経済大柏高)、FW澤上竜二(大阪体育大4年=飛龍高)、FW岡佳樹(桃山学院大3年=東山高)は全員が関西学生リーグに所属している。呉屋と澤上について、「所属元や選抜で単純に点を取ってきた」と話すも、岡については「議論した中で彼に決まった」とも明かした。

 2列目には得点力の高いMFが控えていることもあり、FW登録のラスト1枠について、なくてもいいのではという意見もあったという。しかし、「手詰まり感がいっぱいになったとき、もう一人打開できる奴がいたほうがいいんじゃないか。何か特徴を持っている選手が必要だろうとなった。そのなかでも高さに注目しました。岡は高さもあって足も速い。ボールも収まる」。その結果、岡が選出された。

 ユニバーシアード競技大会は過密日程で行われる。グループリーグの3試合は6日間での3連戦。決勝まで勝ち上がった場合には12日間で6試合を戦い抜くことになる。指揮官はターンオーバーで戦うことを明言。「常に交代させながらというイメージ。どのポジションも3パターンくらいを選んでいる。AとBが出たら、B、Cが出て、最後はA、Cが出てと回せるようにはしている。理想はグループリーグでは全員が試合に出て突破するのが理想。どう回していくかのイメージはある」

 そんななかで課題に挙げたのはセットプレーだ。具体的には「キッカーとアイディアの問題」という。実際に御殿場での直前合宿では、練習の多くの時間をセットプレー練習に割いていた。「所属元で直接FKを決めている選手がほとんどいない。MF端山豪(慶應義塾大4年=東京Vユース)が一番キックは上手いと思っているんですけど、端山も慶應義塾大で直接決めているのを見たことがあるかといわれると、ほぼないですね。全国を隈なく見ていますけど、実はFKのスペシャリストは今の4年生の学年はいない」

「流通経済大のMF森保圭悟(流通経済大4年=広島ユース)なども上手いけれど、所属元でレギュラーではなかった。それと、MF差波優人(明治大4年=青森山田高)ですね。その期待をもって、彼も選抜へ呼んでいたが、他のプレーのところで他の選手との違いを出せなかったので、あえなくバックアップになってしまった。彼のセットプレーには僕はものすごく期待していました。そこは端山と入れ替わったというのが事実」

「端山は慶應の前期リーグで、ものすごいアシストをしていたんです。それを見ていたので。なかでも駒澤大戦でみせたアシストはすごいキックだった。彼を選んだ理由はそこですね。最後の部分で違いを出してほしいなと。彼の場合は、出来ていない部分や代表チームに選ばれる上での至っていない部分や、なければいけない部分が達していないところもある。そういう部分に目をつぶってでも、そこを取ったという感じです」

 神川監督はユニバーシアード日本代表について、「2年に1度で訪れる代表というのは、U-17やU-20と同じスパンであるわけで。運や不運もあって、1・3年生で迎えるユニバと2・4年生で迎えるユニバは多少ちょっと幸、不幸はある。1・3年で迎える人にとっては、正直3年生の一度のチャンスだけだと思うんです。2・4年生の子は2大会に出られるチャンスもあるわけだから、そこを常に目標に据えて欲しい。所属元でレギュラーが取れたら、次に目標とするのは地域の選抜であって、地域で活躍したらユニバーシアード代表に選ばれたいと自然の流れで考えられるような連盟、選手であってほしいなと思います」とも話した。

 いよいよ開幕するユニバーシアード競技大会。目指すは金メダルただ一つ。最多となる過去5度の優勝を誇る日本だが、そこに油断はない。下馬評を覆して世界一に立った2003年のテグ大会では、コーチを務めていた神川監督は自身の経験も踏まえて強く語った。

「2003年のテグ大会を戦った20人の選手たちは、それぞれが置かれた立場のなかでチームのために最善を尽くして、6試合を戦い抜いた。そして、最終的に予想もしていなかった優勝を手にしている。僕はそれを見ているので、最終的にはスタッフの手を離れて、選手たちだけでピッチ内外の全ての問題を解決できるようになって欲しい。そうなったときに優勝も現実味を帯びてくると考えています」

(取材・文 片岡涼)

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